「夢見る頃……7」  星都



  ミドリの為

 金曜日、松田からの伝言が届いた。
「選考に迷ってます。もう少し、待ってて下さい」
「ライバルも、頑張ってるんだな……」
〃おめでとう〃と言う言葉を期待していたのだが、真弓はちょっと不安な顔で電話ボックスを出た。
「真弓ちゃん」
「えっ?」
 直ぐ後ろからミドリの彼氏、拓也が来た。十二月だというのに、額に汗を滲ませバイクを押している。
「ガス欠でさぁ、スタンドまで押してく途中なんだ」
「大変ですね」
「ちょっと、付き合ってくれないかな……」「はあ?」
 二人は公園のベンチに、一人分ほどの隙間を空けて座った。
「ミドリ、俺のことどう思ってるんかな……」
 暫くの沈黙の後、拓也が言った。
「どうって……」
「本当に好きなんかな」
「それは、好きですよ」
「本当に?」
「えー」
 真弓の知ってる限りでは好きな筈だ。
「そうか……実は……」
 言い辛いようだ。溜息をつくと両手で顔を強く擦り、やっと口を開いた。
「俺達、まだヤッてないんだ」
「えっ?」
 ナニを? と聞かずとも分かっている。
「一度失敗してから、ダメなんだよ……まともに勃起しなくって……ミドリを抱いても、いつもB止まり。このままじゃ、嫌われちまいそうで」
「そんなに、気にしなくたって」
「もし、Hの上手い男と会ったりしたら……俺なんて振られちゃうよ」
「ミドリは、Hで相手を決めるようなコじゃないですよ」
「Hがだめだと、何から何まで自信なくなっちまうんだ。それに……」
 男にとって、SEXが上手い下手がこんなにも大切なことだとは、真弓は想像もしていなかった。
「もう、俺のこと飽きてきてるのかも」
「そんなことないですよ」
「だって、この前、ひょっとして口でシテくれれば勃つかもって、ミドリに言ったのに、あいつ、シテくれなかったんだ」
「そ、そうですか……」
「本当に好きなら、シテくれるだろ……真弓ちゃんだって、好きな相手なら、フェラしてやるだろ?」
「きっと、好きだから出来ないんですよ」
 好きなら出来る筈って言うと拓也が落ち込みそうだ。それに、好きでもない相手とフェラしてる真弓は、自分を納得させる為にも、そう言うしかなかった。
「好きだから?」
「本当に好きだから、自分がイヤラシイ女に思われたくないから、出来ないんだと思います」
「そう言う話も、聞いたことあるな……」
「でしょ? きっとそうですよ」
「じゃ、嫌いな相手となら出来るのか?」
「嫌いな相手となんて、とんでもない! 近付きたくもないですよ」
「真弓ちゃんは、俺のことどう思う?」
「え?」
「嫌い?」
「そ、そんなこと……}
「じゃあ、俺のなら、出来る?」
「えっ?」
 なんとなく雲行きが怪しくなってきた。
「ナ、ナニをですか?」
「フェラチオ」
「そんなことしたら、ミドリに悪いですよ」
「確かめたいんだ! 勃つかどうか……ミドリの為にも!」
「だ、だって……」
「それとも、ウソなの? 好きだから出来ないって言うのは」
 拓也の顔は怒ってるような、泣きたいような複雑な表情を浮かべている。ウソじゃないことを証明するには、
(ヤルしかない……)
「ミドリには、内緒ですよ……絶対!」
「当たり前だよ。言える訳ないさ」
 拓也はベルトに手を掛け、立ち上がった。
「ここじゃ、まずいですよ」
 こんな時役に立つのが公衆便所。しかし、電球が割られ真っ暗な公衆便所の中に、入る気にはなれない。慣れ親しんだ公衆便所の裏も、既に先客がいた。大きな切り株に、カップルが寄り添って座っている。
「また、今度ということで……」
「いや! あそこなら、大丈夫だ」
 拓也は公衆便所を離れ、北口の方へ歩き始めた。そして、滑り台の階段を昇る。
(明るいじゃない……)
 近くの街灯の明かりで滑り台の上は明るい。が、拓也の目的はそこではなかった。滑り台の最上部の踊り場から隣のジャングルジムまで、八メートルほどの吊り橋がある。その幅一メートルの吊り橋を渡り始めた。中程まで行くと立ち止まり、手招きをする。そこはすっかり暗がりになっていた。
 真弓はカバンを踊り場に置いて渡り始めた。風は少ないが、歩く度に上下左右に揺れる。両側のロープを両手で持ったまま、真弓は拓也の前でしゃがみ込んだ。
 ベルトが外された。ファスナーを下げる音。真弓の目の前で、拓也の足首にズボンがたぐまった。そしてトランクスに手が掛かる。
「笑わないでくれよ」
「え?」
 その沈鬱な声。そして表情。
(真剣なんだ……)
 それまで、単にフェラして欲しいから、巧いこと言ってるんじゃないかっていう気持ちがあった。しかし、拓也の真剣な眼差しを見、声を聞き、そんないい加減な気持ちでないことを知った。
 目の前に現れたソレは、小さく縮んでいた。そのうえ、亀頭が皮にめり込んでいる。
 ゴクッ。
 真弓はツバを飲み込むとロープを握っていた右手を放し、拓也のモノを摘んだ。ゆっくり皮を根元へずらす。亀頭が露出した。顔を上げると、拓也がジッと見下ろしている。  ゴクッ。
 もう一度ツバを飲み込む。見ず知らずの男のモノを口にする方がよほど気が楽だ。どうしても、ミドリに後ろめたさを感じてしまう。
(ミドリ、あなたの為に、スルのよ)
 そう言い聞かせ、縮んだモノを口に含んだ。
「ありがとう……なんだか、勃ちそうな気がするよ」
(いけない。ベロ使っちゃった)
 最初、口に含むだけで止めるつもりでいた。多分、数週間前なら考えることなくそこで止めていただろう。何せ、そこまでしか知らなかったのだから。
 しかし、ここに来て何度かフェラチオを経験し、毎日のように早百合のアソコに舌を這わせてる真弓、自然と舌が動いてしまう。それを止めるには、口から出すしかない。
「ンッ! ンンッ!」
 顔を背け、真弓はわざとらしい咳払いをした。そして、チラッと拓也を見ると、目と目が合ってしまった。
(なんて真剣なの……)
 拓也の瞳にはいやらしさの欠片もなかった。難しい数学の問題でも解いている時のような表情で、ジッと見下ろしている。
(勃たせてあげなきゃ……二人の為に)
 ミドリへの後ろめたさは消えた。真弓は放すと直ぐ、皮に埋もれてしまいそうな亀頭をツルッと吸い込んだ。
「アッ、ンッ……ンー」
 亀頭を唇で扱き、舌を絡めてやると拓也はたまらず尻餅をついた。そのまま仰向けに寝、真弓に顔の上に跨るよう促す。
(大きくなってきた)
 なかなか反応を示さなかったモノが、急激に膨らんできた。小さかったモノが口の中で大きくなっていく。ソレは、何ともウキウキした気分を真弓に与えてくれる。そんな気分の中、躊躇うことなく拓也に跨った。
 パンティがずらされ、
「こんなに濡れてる……」
 不思議そうな拓也の声が聞こえた。
「ミドリなんて、殆ど濡れないのに……」
(ミドリのことなんていいから、早くイジって! 早く舐めて!)
 それまで「ミドリの為に」と自分に言い聞かせていた真弓だが、ココまで来てもミドリのことを考えていると思うと、何故かミドリが妬ましく思えてくる。
「アッ! 真弓ちゃん、上手い! 上手すぎる!」
(ミドリなんかより、あたしの方がいいでしょ?! ずっといいでしょ!)
 中年男をも悶絶させるフェラテクを、真弓は思いっきり使い始めた。
「オ、オレ、オレもう……ダメッ!」
 真弓が本気になると直ぐ、拓也はギュッと真弓を抱き締め、立派に勃起した先端から大量の精液を放出した。
(そこまでしちゃ、いけない……ミドリから奪う気はないもの)
 口内に拓也の勢いを感じると、真弓は急に冷静さを取り戻した。そして、飲み込むのを止め、吊り橋の下へ吐き出した。


「ね、今日の私、ちょっと違うでしょ!」
「え? ナニが?」
 ミドリに呼び出され駅前広場に来た真弓に、ミドリはそんなことを言ってきた。
「分かんないのォ……ま、分からないなら分からないでいいか……」
「ナンなのよぉ、教えてよぉ……ねぇ」
「ンー、実は……」
 ミドリの全身から話したくて仕様がないといったオーラが出ている。拓也が来るまでの時間潰し、それだけに呼ばれた訳でも無さそうだ。どんな話が聞けるのか、真弓の胸はワクワク疼いていた。
「夕べ家を抜け出してェ……拓也に会ったの」
「え……」
 真弓の好奇心が急に萎んだ。夕べと言えば拓也のモノを口に含んだ後か……。
(まさか、バレてないよね)
 ワクワクどころか冷や汗が背筋を伝った。
「でね……これ、早百合には内緒だよ。あのコ最近男嫌いになってるから……」
 そこまで言うと、ミドリは更に声を低め、
「私、オンナになったの……」
「え? 始まったの?」
「バカ……あんたじゃないもん。とっくにあるわよ」
 ミドリは真顔で呆れた。
「だって……」
 どういう意味かは分かっている。ただ、奥手と思われている真弓は、自然と奥手を装ってしまうのだ。
「しちゃったの……エッチ!」
「エーッ! 勃たなかったんじゃ……」
「前はね……でも、夕べは立派に勃ったの。なんか、自信がついたって感じで……こんな大きかったのよ」
 右手の拳を見せた。
(そんな大きくないって)
 そうは思っても、真弓は「そんなにィ」と素直に驚いてやった。
「でも、どうして急に自信がついたの?」
「なんでも、一生懸命私のこと考えながら『勃起しろ! 勃起しろ!』って祈ってたら勃起して……自信がついたんだって」
 ミドリの満足げな顔が、半分は自分が手助けしたからだと思うと、嬉しいような可哀相なような複雑な心境だ。
「そんなにミドリのこと思ってくれるなんて、本当にミドリのこと好きなのね」
「私以外の女には、見向きもしないのよ」
「そんなに思ってくれるなら〃F〃くらいしてあげなきゃネッ」
「エ? そんな言葉、真弓から聞くとは思わなかった」
「だって、恋人同士はみんなシテるんでしょ?」
「そんなのウソよ! 私はしないわよ……あんなもん。汚いもの」
「あたしが……」
 真弓はつい声を荒げてしまった。
「ナニ?」
「あ、愛していれば、汚くなんてないんじゃないの?」
「どんなに愛してても、汚いモノは汚いわよ。男って良く女のアソコ舐められるわよね……身体は気持ち良いけど、精神的にはすごく不潔でイヤなの……我慢して舐めさせてあげてるけど……」
「我慢して……?」
(その割りには随分嬉しそうに舐められてたじゃない)
 修の部屋での出来事。拓也に舐められながら気持ち良さそうにVサインを送ったミドリの顔は、とてもイヤなのを我慢してたとは思えない。それに、
(あたしがフェラして勃たせてあげたから、自信がついたんだよ!)
 そう叫びたい気分だ。しかし、二人の幸せを壊す気はない。
「今日も……求められたらどうしようかな……痛いからな断っちゃおうかな……でも、一つになれるのってすごく嬉しいし、夕べほど痛くないだろうし……」
「どうぞお幸せに……」
 真弓は呆れ顔で離れてしまった。


  奈津美の秘話

「遅れてごめん……」
 もう少し待ってくれという伝言から丸一週間、『選ばれる』と絶対的な自信が揺らぎだした頃、やっと伝言が届いた。
「来たぁ! 松田さんからだ」
「……簡単に言います。君と高二のコ、二人の戦いになりました。先生も俺も、選びあぐねています。そこで、本来の目的であるSEXの味で決めようということになりました。味見は先生の一任を得て俺がします。俺としては、君の方が良いんだけど……実際ヤッて見ないと分かりません。同等なら君を選びたいと思っています。日曜日、同じ時間、同じ場所で会えますか? 五〇万は目の前です。頑張って!」
『お相手様に、直接返事を返す時は4。次の伝言を聞く時は#……』
 真弓は電話を切った。脚がガクガク震えている。
(エッチ……するのか……)
 最初に松田へ伝言を入れた時から、ソレは覚悟の上だった。最終的にソレをすることを承知で面接を受け、フェラも覚えた。しかし、このまま行けば、二日後には間違いなく経験することになる。気軽に伝言を返すことなど出来る筈もない。
(日曜日に行って、もし、来なかったなら諦めよう)
 珍しく早くからベッドに潜り込んだ。
(どうしょう……)
 指の動きがぎこちない。忙しなく動いたかと思うと、直ぐに止まってしまう。
(痛いんだろうな……)
 初体験への不安が拭いきれない。
「イタッ!」
 指を二本押し込んだ。最近では、油の力を借りることなく挿入できる。ソレが楽しくて、スル度に一本は入れている。二本入れたことも数回ある。その時は、それほど痛みを感じなかったが、気の乗らないオナニー、濡れ方が少ない。
(もっとずっと痛いんだろうな……でも)
 ミドリだって出来た。痛いことを訴えながらも、嬉しそうだった。
(あたしだって……エッチぐらい……)
 ミドリに我慢出来て自分に出来ない訳がない。いつだったか早百合が言っていた。
「女はアレの痛みに耐えられるように出来てるんだから、大丈夫だ」
(女だもん。大丈夫! できる!)
 もし松田が来たなら、精一杯頑張って〃月五〇万〃獲得しよう。その為には……。
(笑われないようにしなきゃ)
 初めて松田と会ってフェラチオした時、笑われた。あの時のショックは、二度と味わいたくない。
(一度……経験しといた方が……)
 でも、誰と……。二本指を押し込んだまま、動かすことも忘れ、いつしか眠ってしまった。


 ピンプォ〜……ン。
 ピンプォ〜……ン。
「居ないのかな?」
 両親はちょっと離れた場所でブティックを開いている。この時間帯は当然店に行ってる筈。そしてミドリはデート。
 カチャッ……ギィー……。
 真弓が諦めて帰りかけた時、ドアが開きミドリの弟、健太が顔を覗かせた。
「こんにちは。ミドリ居る?」
「お姉ちゃんは、居ない」
「そうか……」
 この時間、居るとすれば健太しか考えられない。真弓の計画が進められる。
「じゃ、待たせてネ!」
「アッ!」
 真弓は勝手に入り込み、サッと二階へ駆け上った。そのままミドリの部屋を通り過ぎ、健太の部屋へ……。
「ダメッ! そこは……」
「エッ!」
 ドアを開けた真弓は思わず立ち尽くした。そこには、ホットカーペットに横たわり雑誌を見ている女のコ。下半身は何も着けていない。
「ヤダッ……」
 ドアを開けたのが健太でないことを知り、女のコは慌てて脱ぎ捨てたスカートで股間を隠した。
「お姉ちゃんには黙っててよ。絶対言わないでよ! お願いだから……」
 健太が半ベソで縋り付いてくる。
「確か、奈津美ちゃんだったわよね……」
「……」
 女のコは不思議そうな顔で頷いた。
「大丈夫。誰にも言わないから……その代わり……」
「その代わり?」
 真弓は唇をチロッと舐め、
「続きを、見せて!」
「続き?」
「見せてくれないと……バラしちゃうよ」
「……」
 真弓に脅され、
「お姉さんが見せてって言ってるんだから、早く!」
 奈津美に急かされ、健太は渋々奈津美の股間に蹲った。
「舐めてる」
 真弓の視線を感じる部分を、奈津美は隠すどころか更に股を拡げて見せた。薄く開けた両眼は、『羨ましいでしょう』と言いたげな光を放っている。
「気持ちいいの?」
「……ウン……気持ちイイ……」
 勝ち誇った表情の奈津美が言う。
「何処で覚えたの……そんな、遊び」
「ンー、あのね……夏休みにね……」
 その問いを待ってたかのように、奈津美は生き生きとした笑みを見せて話し出した。


 夏休みも終わりに近付いた頃、二つ上の従姉、博子と映画を見に行った。行く時は映画館まで博子の父が車で乗せてってくれたが、帰りはバスで帰る約束になっていた。
「あのバス停で『石宝寺・真岡行き』っていうバスに乗れば、家の前までいくから」
 道路を挟んで向こう側のバス停を指さし、「分かるだろ」と、教えてくれた。
 映画が終わり、外へ出るとポツポツ雨が降り出していた。車の通行量が多く、広い道路を横切ることは無理がある。二人は人の流れに流されるまま商店街に紛れ込んでしまった。土地勘のない二人が適当に路地を曲がり、広い道路に出た時は本格的な雨となっていた。
「さっきの道路と違うよ……」
「もっとむこうかな……」
 知らない土地で道に迷った時ほど心細いことはない。誰か助けて! その時。
「濡れちゃうよ……乗りな」
 四駆に乗った若い男が声を掛けてきた。
「どうする?」
 優しい声に優しい顔。そして、激しくなる雨。
「何処へ行くの?」
 後部座席に乗り込んだ二人に男が問う。
「家へ帰るんです」
「家は何処?」
「真岡です」
「本当……これから真岡の友達のとこへ行くとこだったんだよ」
「エ、本当ですか……ラッキー!」
 乗り物に乗ると眠くなるという人は結構多い。奈津美もその一人だ。会話が数分途切れた途端、眠ってしまった。
「やだぁ」
「えっちぃ」
 目覚めかけてはまた眠ってしまう奈津美の脳裡に、その二つの言葉が幾度も染みていった。
「やだぁ……恥ずかしいよぉ」
 どのくらい眠っていたのだろう。奈津美が目覚めると博子が、
「奈津美ちゃん見せてあげなよ」
 と言ってきた。
「え?」
 なんのことか分からずキョトンとしていると、
「光治さんが見たいんだって……アレ」
「光治さん?」
 それが男の名前だった。そして見たいというのは……。
「君たちみたいな可愛いコの見たことないんだよ。見せてくれよ」
「奈津美ちゃん、見せちゃいなよ」
「エ……ンーいいけど……」
 良く分からぬままOKしてしまった。
「よっしゃーっ」
 光治は路側帯に車を止め、リアシートを覗き込んだ。
「早く見せて!」
「見せるって、何を?」
「アレよ、アレ! ほら、パンツ下げて」
 博子が強引にスカートを捲り上げた。
「エーッ……アソコ見せるの?」
「いいって言ったじゃない」
「だってェ……」
 別に見せること自体はどうってことない。昨日も数人の男友達に見せたばかりだ。でも、大人には見せたことがない。それに、従姉の前でなんて……。
「ホラッ、あたしが脱がしてあげようか?」
「いいよ!」
 パンツに手がかかると、奈津美は慌てて手を払い除けた。
「……自分で脱ぐから」
 下げられるくらいなら、自分で下げた方がましだ。奈津美は左手でスカートを捲り上げ、臍の上まで隠れるデカパンをグイッと引き下げた。
「上からじゃ見えねェよ」
 光治がブツッと呟くと、
「奈津美ちゃん、立って見せてあげなよ」
 博子がそう言った。すると、
「そうだ。シートの上に向こう向きに立って、尻を突き出してくれよ」
「パンツ脱いじゃった方がいいんじゃない」
 二人で勝手な注文を付けてくる。
「脱いじゃうのォ……」
 言葉尻はイヤイヤに聞こえるが、尻を浮かしペロッとパンツを脱ぐ素早さは、楽しんでいるとしか見えない。靴を脱ぎヘッドレストに抱きつきながらシートに立った。ふらつかないよう広く脚を開いている。
「小学生のなんて何十年ぶりかな……ヘェ、大人のよりスッキリしてるな……」
 スカートを腰に捲り上げ、無遠慮に両手で開いて覗き込んでいる。
「次は博子ちゃんの番だぞ」
(エッ? もういいの?)
 いつも見せてる悪ガキ共は「イヤッ」と奈津美が拒否するまで飽きずに見たり弄ったりしているのに……。
(博子ちゃんの方が見たいんだ)
 焼き餅に似た感情が湧いていた。
「そら、早くっ」
 右手の中指の背で奈津美のスリットを撫でながらも、興味は完全に博子のモノに向いている。
「あたしも見せるのォ?」
「奈津美ちゃん一人だけ見せたんじゃ、可哀相だろ。早くパンツ脱いで!」
「見せるのはいいけどォ……」
 博子は唇の端をニッと引きつらせ、光治に意味深な視線を送った。
「……いくら……くれる?」
「エーッ!」
(バカみたい)
 金を払ってまで見る奴なんていない。と奈津美は思った。これでまた、光治は奈津美のモノに興味を集中するだろう。
(好きなだけ見せてあげる。わたしのマンチョの方が可愛いんだから)
 なんとなく、博子に勝った気分だ。だが、
「千円」
「ヤダッ……もっと」
「ンー……小遣いは月いくら?」
「三千円」
「じゃあ、三千円」
「……ま、いいか」
(ウッソー!)
 二人の会話を、奈津美は信じられない思いで聞いていた。
(見せるだけでそんなに貰えるなんて……) 今まで只で見せてた自分はバカ……?
 博子はズボンとパンツを脱ぎ捨て、奈津美と同じようにヘッドレストに抱きついた。奈津美よりも大きく股を開いている。
「もっとケツを突き出して……そうそう」
 光治は助手席に移動し、今にも鼻先がくっつくくらい顔を近づけている。奈津美のモノへの関心はすっかり消えてしまった感じだ。
(そんな変わんないじゃない)
 たったの二つしか離れていない。丘にほんのり若草が萌えている程度。殆ど変わらない。それなのに……。
(なんであんなに夢中になって見るの)
 光治がいつ来てもいいように、同じ態勢を保ったまま、奈津美は冷ややかに二人を見つめていた。
「アッ……アッ……アン」
 博子が小さく呻いた。その甘くとろけそうな声を聞いた時、それが気持ちよさの表れであることを本能的に感じた。
(ナニがそんなに気持ちイイの……っ!)
 博子の尻を! 否、スリットを、長く伸ばした光治の舌が舐めている。
「奈津美ちゃんも後でシテ貰ったら……気持ち良いよ」
 信じられない光景に青ざめた奈津美を見て、博子がおかしそうに言った。
「大人はみんなシテるんだから……アン!」
 大人はみんなシテる。それをシテる博子は大人。そして、それを見て驚いている自分は、
(どうせ子供だもん)
 たった二つの年の差。それが、とてつもない差であることを思い知らされた。
「奈津美ちゃん、行くぞ!」
「えっ?」
 光治が博子から離れた。
「あ、はい」
 呆然と座り込んでしまっていた奈津美が急いで立ち上がり、尻を突き出した。
「アッ……」
(くすぐったい……くすぐったいけど……気持ちイイ……)
「どう? 気持ちイイ?」
 物足りなそうに尻をモゾモゾ動かしながら、博子が奈津美の顔を覗き込んできた。
「……」
 奈津美は口を半開きにしたまま苦しげな息を吐くだけで声が出ない。ただ、何度も頷いていた。
(気持ちいいよぉ……アッ、止めないで!)
 光治はまた博子に戻ってしまった。
(また来て……早くっ!)
 奈津美は直ぐに戻って来ることを期待していたが、
「俺、俺もう……」
 光治はズボンとパンツを膝まで下げ、「やってくれ!」と突き出した。
 素早く手を伸ばした博子が、ギンギンに勃起したペニスを扱くと直ぐ、
「ヤッ! 飛んだァ……キャハハハ……」
 無邪気な笑い声が車内に響き渡った。ナニが飛んだのか? 奈津美は知らない。その時奈津美は、股間に押しあてた指を忙しなく動かし快感に酔っていた。
「ふうぅぅ……」
 目を閉じたまま深い溜息をついた奈津美の鼻に、何やらヘンな匂い。
(なんの匂い? 台所で嗅いだような……)
 鼻をクンクンさせるが、目は開けない。開けるのが怖い。ついシテしまった秘密の遊び。もし目を開けて、博子達がニヤニヤしながら自分を見つめていたりしたら……。そう思うと、このまま眠ってしまいたかった。しかし。
「ふあぁぅん……ふぁぁ……」
 博子の鼻に抜けた声。
(ナニしてんだろ)
「な、入るじゃねェか……濡れないコも油をつけりゃ簡単に入るんだよ」
(あぶら……? そうか)
 サラダ油の匂いだ。そんなモノをナニに使ってるんだろう。
「アッ!」
 好奇心に耐えきれずうっすらと目を開けた。次の瞬間、奈津美の目は吃驚するほど大きく見開いた。
 いつの間にか助手席に移った博子は、シートを倒し大きく股を拡げている。そして、弱々しい恥毛の下に光治の太い指が潜り込んでいた。


「もう、ビックリ!」
「その後、どうなったの?」
 やや掠れた声で真弓が聞いた。
「なんだか、見ちゃいけない気がして……ギュッと目を瞑ってたからわかんない」
「そんなコトがあったから、そんな遊び覚えたのか……ん?」
 部屋の中が少し油臭い。
「健太くん、ソコ、油臭いんじゃない?」
「ションベン臭いよりいいよ」
 健太はそれだけ言うと深呼吸を一つして、また、奈津美のソコに口をつけていった。
「さっきまで、指、入れさせてあげてたから」
 奈津美がクスッと笑った。
「どっちが好き? 指とべろと」
「そりゃ、舐めて貰う方が好き! 気持ちいいもの……男の子は、指入れる方が面白いみたいだけど……」
「奈津美ちゃん、金取るんだよ。見るのも弄るのも……前は只でさせてくれてたのに」
 健太が不満げに呟いた。
「男がお金出すの当たり前だもの。ね?」
「ンー、でも、お金くれるからって、誰にでもさせちゃうのは、どうかな……」
 なんとなく自分に言ってる気がする。
「誰にでもじゃないもん。友達だけだもん」
「ウソだぁ、知らない奴にも弄らせてたくせに」
「アレは、友達の友達だもん」
 どうやらかなり沢山の相手とシテるらしい。
(末恐ろしい)
 真弓は呆れ顔で溜息をついた。そして、
「健太くんは、いくら払って舐めてるの?」
 確か、以前見た時奈津美が払ってたように見えたが、見間違いだと思っていた。
「あのね……」
 健太より先に奈津美が答えた。
「これだけはね、只でいいって言ってもみんなやってくれないの。だから、逆に奈津美が払ってるの。これ、好きだから少しぐらい払ってもいいかなって思って……」
「そんなに、好きなの?」
「ウン!」
「健太くんのは、舐めてあげないの?」
「え?」
 奈津美は訝しげに首を傾げた。
「おちんちん」
「やーだ……汚いよぉあんな……」
「そうだ! 舐めろ! 舐めてやってんだから、俺のも舐めろ!」
 健太の表情は見るからに生き生きと輝いてきた。本当に舐めて欲しい訳じゃなく〃舐めろ〃と言うのが面白い。
「健太くん。ズボン脱いでごらん……パンツも」
 健太は言われるままに脱いで見せた。勃起しているのか、それともそれが通常の状態なのか? 最近、大人のモノしか見てない真弓には区別がつかない。ただ、先っぽに皮が弛んでいるのは分かる。
「かわゆーい!」
 真弓はそれをなんの躊躇いも無しに頬張った。口を大きく開けると、玉袋までスッポリ収まってしまう。
「ケンちゃん……気持ちいいの?」
 奈津美はその行為以上に、健太の表情に興味をそそった。あの時の博子と同じ表情をしている。
「キ、キモチイイ……」
「こうすると、もっと気持ちいいよ」
 真弓は弛んだ皮をズリ下げ、頭を覗かせた亀頭を直に舌で刺激した。
「アッ! だ、だめ……」
 思わず腰を引いて逃げてしまう。
「ホラ、奈津美ちゃんもやってごらん」
「えー……?」
 自分でも健太をあんな表情に出来るか、自信がない。
「やっぱり汚い? 綺麗に拭いてあげようか?」
「……」
 奈津美は首を振った。健太のモノに汚さは感じていない。ただ……。
「気持ち良く、出来なかったら……」
「心配ない。奈津美ちゃんが口に含んでくれるだけで、健太くんは満足してくれるわよ。そうでしょ? 健太くん」
「うん。俺、奈津美ちゃんにシテ欲しい」
 奈津美が口をゆっくりと開きながら健太のモノに近付き、パクッと唇で包み込んだ。
「奈津美ちゃん……俺、嬉しい!」
「先っぽ舐めてあげると、感じるよ」
 奈津美は口に含んだまま指で皮を下ろし、先っぽに舌を押し付けた。
「アッ、それ、だめ! 感じすぎちゃうよ」
 腰を引く健太の動作が面白く、奈津美は何度もソコを刺激してやった。
「健太くん、そこに寝て」
 健太が横になると、奈津美をその上に逆向きに被せた。
「こうすれば、二人一緒に気持ち良くなれるでしょ」
 二人は我先に互いのモノをしゃぶりついていった。
「じゃ、あたしは帰るからね」
 二人はしゃぶり合ったまま片手を振った。
「あんなこと教えちゃって、良かったのかな」
 ちょっと早いかもしれないが、今更遅い。
「アッ! ナニやってんだろあたし……」
 玄関を出、歩き出してやっと本来の目的を思い出した。
「……奈津美ちゃんがいなければ……」
 健太を相手にSEXを体験しておく予定だったのに。
「でも、アレじゃ……」
 親指ほどしかなかった健太の土筆を思い出すと、シテもなんの成果も得られないと肩を竦めた。


   続く