「夢見る頃……8」 星都
早百合のモノ
「真弓……早百合ちゃんから電話あったわよ」
「エッ……早百合から……?」
家に帰るなり、母がそう言った。
(今日はダメだって言ったのに……)
そうは思っても無二の親友。結局は電話をかけ、行くことになってしまう。
「ごめんね……無理に呼んじゃって」
他愛もない話が続いた。真弓はそれが単なる序曲であることを知っている。
「私ね……夕べ、一人でシタんだけど……」
(ほら、きた)
本題に入ってきた。と、真弓は深く息を吐いた。
「感じないの……やっぱり、真弓がシテくれないと……ね……シテ!」
早百合がしがみついてくる。
「今週、ずっとしてたじゃない」
「シテくれないの?」
「そう言う訳じゃないけど……」
「……私、知ってるのよ……」
「エ? ナニを?」
「真弓、男と……シタでしょ! 公園の吊り橋で……私、見たんだから……」
「……」
真弓は返す言葉がなかった。
(何処で見てたの……)
気が遠くなるほど血の気が引いていく。
「男なんて……男なんて女とヤルことしか考えてないのよ……付き合っちゃダメ!」
「付き合うだなんて……そんな、キャッ!」
急に押し倒され、真弓は悲鳴をあげた。
「男なんて! 男なんて忘れさせてやるっ」
「イヤッ! ナ、ナニするの……早百合!」
真弓が下になり早百合が覆い被さる。いつもと逆だ。
「そ、そんなコトしたら……」
(感じちゃうよ)
下着が剥がされ、早百合の舌が這い回る。
(はあ〜……だめ……力が抜けちゃう)
抵抗出来ぬ快感。いつしか真弓は込み上げる快感に全身を火照らせていた。
(ん? 終わり……?)
何やらゴソゴソ音がする。真弓は昂ぶった息を整えながら静かに目を開いていった。
「エッ! ナ、ナニそれ!」
裸になった早百合の股間に、黒く起立したモノが!
「男なんかより、コレの方がいいんだから」
レズ用のペニスバンドをしっかりと絞めると、早百合は再び重なってきた。股間に冷たいモノが押しつけられる。
「やぁだ……あたし、処女なのよ」
「大丈夫! 細身だから、指と変わんない」
「指より太いよ……それに、長……アッ!」
早百合が腰を一振りするとニュルッとスリットを押し広げ、冷根が潜り込んだ。
「ウソ、ウソよ……そんな……」
(誰とは言わないけど、処女は本物にあげたい!)
「ほら、指と同じでしょ……細くて物足りないかな」
「……」
真弓は両手で顔を覆ったまま唇を噛み締めていた。確かに指と変わらないのかも知れない。それが早百合の指だったなら、悦んで受け入れただろう。しかし、ペニスの形をしているというだけで、否、無機質な〃作り物〃というだけで、何故か拒否したくなる。
(入っちゃう……奥まで……あっ……)
下腹部に力を込め、ソレを締め付けてみても、侵入を阻止することは出来ない。早百合の一部と化したソレは、早百合の腰の力を借り、易々と進んでくる。
「ほーら、みーんな入っちゃった。これで、私と真弓は一つになったのよ。誰にも渡さない。真弓は、私のモノ」
(勝手なこと言わないで。あたしはレズなんかじゃないもん。男好きだもん)
「はん、はうん、あっ……」
「ンーウッ、アッン、アアァッッ」
生まれながら備わっているモノのように、早百合はソレを使いこなして見せた。前後左右と腰をくねらせ、激しくピストンを打ちつける。二人の口から漏れるアエギ声に、二人は止めどなく昂ぶっていった。
(もう、もうダメェ……感じ過ぎちゃうよぉ。もうどうなってもかまわない……もっと、もっと感じさせてぇ!)
「真弓! どう? いいでしょ?! 最高でしょ?! 男なんかより、ずっとずぅ〜っといいでしょ!」
「……」
真弓には早百合が何を言っているのか理解できなかった。ただ快感の荒波に飲み込まれ、「アッウン、アッン」と頷いていた。
最終面接
家のバスタブは小さい。それに比べ、
「気持ちいーっい!」
脚を伸ばしても尚余裕のある大きさ。そして、あちこちから勢い良く吹き出す水流に真弓は満足していた。
松田に返事を返さなかった真弓。それに対し、約束の時間きっかりに来た松田。そんな松田に、真弓は嬉しいような困ったような複雑な笑顔でちょこんと頭を下げた。
歩くことすらままならぬほど緊張していた真弓だが、ホテルの部屋へ入ってしまうと覚悟を決めた。
(夢を掴む!)
緊張がウソのように消えた。余裕が生まれ、青ざめた頬に血の気が戻ってきた。
「お風呂入っていいですか?」
まずは風呂に入り、用意してきた香りの良い石鹸で洗う。特に念入りに、アソコに匂いを擦り付けてやった。
このままずっとここに居たい。何処かにまだ残っている不安が、真弓をそんな気分にさせる。しかし、
「出なきゃ……」
そうもいかない。
風呂から出ると、丁度松田が入ろうとしている所だった。
「もう出ちゃうのか?」
「ウン。ごゆっくり」
つまらなそうな松田に笑みを見せ、素早くバスタオルを纏った。その後、二人がナニをするか、当然分かっている筈の真弓。初めての経験が目前に迫っているというのに、落ち着いている。
ソファーの片隅に置かれた小さなバッグ。中から取りだしたのは、いかにも女のコが好きそうな、透明感のあるピンク色のモノ。
「高かったんだろうな……」
早百合が『真弓の為に』と通販で買ったバイブの一つだ。昨日、早百合に挿入されたペニスバンドのモノより一回り太い。
「あ……」
先の膨らんだ部分の裏側に、夕べの名残がついている。ティッシュに唾を付け、こびりついた愛液の滓を拭き取った。
バスルームに耳を傾ける。シャワーの音が聞こえる。真弓はバスタオルを剥ぐと、丁寧に畳みソファーの背もたれに掛けた。
「気持ちイーッ」
裸で布団に潜り込んだことなどなかった真弓、開放感も手伝い、決して上質とは言えぬシーツの感触も、素肌に心地よい。
(初体験か……)
ドラマでは、初体験に母親を思い浮かべるシーンが多い。それを真似し、真弓も母を思い浮かべてみた。
(お母さん……あたし、『悪いコ』かな……)
勉強に関しては珍しく放任主義の母親が、唯一うるさく言うのが「人に迷惑をかけるな」ということだ。
(誰にも迷惑かけてないもん……悪くなんてないよね……エッチしたって、いいよね……)
愛のないSEXはいけないことらしい。売春なんて以ての外。〃良識ある〃と言われる大人たちはそう言うが、それを論理的に説明できる人はいるだろうか? 真弓も、何故それが悪いのか分からない。嫌いな相手とは肌を触れ合わせるのも厭だが、それ以外の相手なら、条件さえ整えば「ナニしたっていいじゃない」と思っている。
(こんなこと考えてたら、また悩んじゃう)
夕べ散々悩んだ末に出した結論。今はそれに従って行動しよう。
(ナニも悩まないオマエが羨ましい)
股間をポンポンと叩くと、大きく深呼吸を一つ。それから徐に、スリットに充てがった指をくねらせた。
(あたしの可愛いまんこちゃん。もっともっと気持ちよくしておくれ……)
初めて伝言を入れてから一ヶ月ちょっと。僅かの間に起きた数々の出来事を思い出す度に、ジワッ、ジワッと愛液が染み出してくる。
クチュクチュクチュ……
毛布の中から湿った音が聞こえる。その音を聞いただけで、量の多さがわかる。量の多さがわかれば、自分がどの程度興奮しているかもわかる。
(もう、充分ね……)
真弓はバイブをスリットに押し付け、肉襞を掻き分けた。股を大きく開き、バイブに力を込める。挿入が始まった。
「ンンッ……あっ……いっ」
微かな引きつり感と痛みを伴い、ソレは肉襞を押し拡げながら潜り込んでくる。頭が入った所でスイッチON。
ウィ〜ン、ウィ〜ン……。
先端がくねりながら振動開始。
「ファッ、ハゥン……あぁ……」
夕べはスイッチを入れた途端に切ってしまった。暗く静かな部屋一杯に響くその音が、隣部屋の兄貴にまで伝わりそうに思えたからだ。
「気持ちいぃー」
夕べのほんの一瞬の振動で、それが病みつきになる自分を感じていた。指でも舌でも、おそらくペニスでも与えることは出来ない小刻みな振動。真弓はスイッチを強にした。
ヴィ〜ン、ヴィ〜ン……。
「アッ、アアッァァァァ……ッ」
バイブを締め付ければ締め付けるほど、陰唇が震え、膣壁が、子宮が卵巣が、あらゆる内蔵が震えてくる。内蔵ばかりではない。真弓の小さな乳首も、バイブの振動に刺激されピンっと勃っている。
「ハッ!」
不意に毛布を剥がされた。
「ビデオの音かと思ったら……」
松田はマジマジと真弓の股間で唸りを上げるバイブを見つめた。その目は、先程までの柔和な眼差しと打って変わり、ギラギラと欲望が漲っている目だ。腰に巻かれたバスタオルがテントを張っている。
「松田さんの……食べたい!」
松田の目を見て、真弓の予想が正しかったことを確信した。男は女のオナニーに興味がある。松田も、この前会った時にオナニーを強要したことで分かる。あの日以上に松田を興奮させ、満足させるには、早百合に借りたバイブは格好な小道具になるはず。
松田のギラギラした目に気を良くした真弓は、自分から求めることで、より松田の興奮を昂めようとしている。
「俺のが食べたい?」
「食べたい……」
「ナニが食べたいんだ?」
「コレ……コレが食べたい」
勃起したモノをバスタオルの上から握った。
「コレじゃ分からないな……ナニ?」
「松田さんの……大きな……キン……タ・マ」
恥ずかしい言葉を声に出して言うなんて。真弓は耐え切れぬ恥ずかしさで、顔を真っ赤に染めた。
「良く聞こえなかったな……ナンだって?」
「……」
「エ?」
「……キンタ……マ……キンタマ……松田さんのキンタマ!」
松田に劣らず、真弓もまた激しく興奮している。顔の傍にきた松田のモノを見るなりシャブリついた。
(太い! この前より、太い!)
松田は真弓に咥えられたまま重なり、バイブを抜き差ししてきた。勿論、クリトリスを刺激することも忘れない。
無毛のスリットに突き刺さったバイブ。それは異様に性欲を昂ぶらせるものがある。その上、今まで経験した女の中でもフェラテクは抜群に巧い。というか、肛門を舐める女も少ない中で、肛門の中まで舌を射し込んでくる女は真弓一人だ。
「アッ、出ちまう」
袋の裏から肛門の中まで舌が這い回り、いつになく早くイッてしまいそうだ。腰を引こうとしたが、真弓が咥えて放さない。
「真弓ちゃん……出ちゃうよ……」
「ング、ングッ」
真弓は片手で根本をしごき、逃げられないようにもう片手で腰にしがみついていた。
「アッ、ダ、ダメだ!」
「ンググッ」
口内に勢い良く発射されたのが分かった。かなりの量だ。
「ングッン」
真弓は落ち着いて、咥えたまま飲み干した。
「お、おい! ちょっと休憩……」
イッてすぐ敏感な部分を攻められるのは何とも辛い。しかし、真弓は放さない。
「クソォ! 負けてたまるか!」
下半身は逃げ腰だが、上半身は強気になった。バイブを抜き取ると、お返しとばかりに真弓の肛門に押し当てた。
(エッ? ウッソウ! ヤダァ……)
「力を抜いてぇ……でないと、痛いよ」
「ンググッ」
メリメリッとめり込まれる。細身のバイブとはいえ、逆入れのせいか痛みは大きい。しかし、それに余りあるほどの快感が前後の穴から湧き起こる。
(生き返った……)
可憐な肛門をバイブで犯し、パックリ開いたスリットを舌で犯す。堪らない興奮に、萎えていたモノは急激に張りつめた。
「真弓ちゃん、今度は下の口に御馳走してやりたいな」
真弓はゆっくりとペニスを放した。
「痛く……しないでね……」
「フッ……」
不適な笑みを見せ、松田はソレに手を添えた。先端でスリットをなぞり、お目当ての場所にグリグリ押しつける。
「イクぞ!」
「……ウッ!」
思わず呻いた。呻かずにいられない激痛!
「んー? ンッ……クソー……」
松田は戸惑った顔を見せた。普通なら当然根本まで収まっているはず。それだけの力と時間は使っている。なのに、まだ亀頭の先端がねじ込めただけ。
「きつい! これのせいか?」
一旦腰を離すと、肛門で唸るバイブを抜き取った。そして再度。
「……なんてきついんだ……こんな小さな穴、初めてだ」
一気に貫くのは無理だ。それほどに強く、真弓のソコは蕾んでいる。しかし、
「コノッ! コノッ! コノッ!」
松田の度重なる攻撃に、幼い蕾も徐々に緩みだした。ムックリ膨らんだ亀頭は、意外なほど柔軟性に富んでいる。蕾の僅かな隙間を見落とさず、頭をひしゃげながら潜り込んでみせた。
「よしっ!」
ちょっと一息。松田は赤く充血した恥丘を満足げに眺めた。無毛の丘の斜面に、生意気そうに頭を擡げるクリトリスが見える。ミカンの房のようなちっちゃな唇も。そして、柔らかく厚めな唇が、どす黒いペニスに蹂躙されているさまも見てとれる。バイブを咥えていた時より、遙かにいやらしいマン相をしている。
「バイブより奥まで感じさせてやる」
ぬぷぬぷぬぷ〜っ。
狭い肉襞を押し広げ、バイブより太く、バイブより長いモノが動き出した。
「すごい締め付けだ……まさか!」
真弓はシーツを握りしめ、唇を噛みしめ、きつく閉じた瞼に大粒の涙を貯めている。
「お前……」
やっと根本まで埋め込んだペニス。ゆっくりと抜きながら見ていると、明らかに血塗られているのが分かる。
「初めて……なのか?」
「……」
何を今更。そんな表情を松田に投げかけた真弓。開いた瞼から、ボロボロと止めどなく涙がこぼれる。
「ごめんな……痛かったろ?」
バイブを使ってオナニーをする女が処女の筈がない。松田はそう思っていた。処女ブルことでポイントを稼ごうとしている。そうとしか考えられなかった。
「優しく……優しく、シテ……ください」
「ああ、優しくするよ」
腰は使わず、強く抱きしめキスをした。松田にとっても処女は数年ぶり。
(こいつの、初めての男になったのか)
思いっきり感じさせてやりたい。そんな感情が全身に漲ってくる。
「動かして、いいかい?」
「……」
コックリ頷く。
「アッ、んんっ!」
顔を歪め激痛に耐える真弓。
「大丈夫?」
「……」
また頷いた。
挿入してから何分経っただろう。他の女となら既に数回達しているはずだ。しかし、二人とも時間の長さなど感じていない。
「どう? 少し良くなった?」
「うん」
初めて声を出して頷いた。引きつっていた顔面も、ゆったりした表情が多く見られるようになった。腰を振るのに他の女の倍は力を使う。しかし、他の女の倍以上の快感が得られる。
「気持ちいいか?」
「あっ、あっ、あっ……」
松田の問いに言葉ではなく、アエギ声で応えた。「気持ちいい」と言うより、快感を享受していることが直に伝わってくる。
「だ、だめだ! イクッ……イクぞーっ!」
「あたしも……あたしも、イクーッ!」
「ウッ! ウォオーッ!」
松田の腰が一頻り激しさを増した。
(あっ、イッたんだ)
真弓の子宮壁に熱い勢いを感じる。それは、口の中で何度か感じた射精と同じだ。最後の一滴まで吐き出そうとするペニスの収縮。生涯の夢を子種に託す哀れな男の断末魔。真弓はそんなペニスの痙攣を股間に感じながら、
「ああぁぁぁーっ……イクゥゥッ!」
指ともバイブとも違う、本物の満足に全身を痺れさせ、イッた。
「あぁ、もう帰らなきゃ……」
いつの間にか七時を過ぎていた。真弓はつい今し方まで自分の体内で暴れていた松田のモノを握った。それはスッカリ萎え、もう、真弓を貫くことは不可能だろう。
「まだ……足りないのか……?」
松田の顔は真顔だった。最初の数回は松田が要求した。だが、その後は真弓が〃おかわり〃を繰り返していた。
「う〜ん」
真弓はポッと頬を赤らめ、否定した。
「もう充分……ごちそうさま」
手の中の松田のモノ、無性に頬擦りしたい気分だ。愛しくてしょうがない。いつまでも握っていたい。いつまでもしゃぶっていたい。そしていつまでも、挿入していたい。
(これが、『恋』かな)
真弓は、それが松田に対してではなく、松田の〃モノ〃に対してであることを、もっと厳密に言えば、SEXの〃快感〃に対してであることを承知している。
(後藤さんの気持ちがわかる)
初体験の相手を〃道具〃と言い捨てたゴマキ。その時は信じられないと思ったが、今は分かる気がする。いろんなモノでオナッた頃のように、いろんな道具を味わってみたい。
(こんな思いができて、お小遣いまで貰えるなんて)
女ってなんて幸福な生き物なんだろう。真弓は女に生まれたことをつくづく感謝した。
「そろそろ、放して欲しいな」
「エッ? あ、ごめんなさい」
ペニスを握っていた手が、勝手に動き初めていた。身体のどこかで、心の片隅で、もう一度遊びたいと願っているのだろう。
(あたしって底抜けのスキモノなんだ)
ねだりたい気持ちを殺し、松田の腕をすり抜けた。
「アッ!」
無防備に立った途端、真弓は声を上げた。松田が送り込んだ体液が逆流、白っぽい液体が処女血を伴い、太腿を流れ落ちていく。真弓は股間を押さえ、バスルームへ走った。
「悪いけど、お金持ってるかな」
濡れた髪を乾かしていると、バッグの中を探りながらすまなそうに聞いてきた。
「二万くらいなら、あります」
タクシーの一件以来、出歩く時はへそくりをかき集め、持ち歩くことにしている。
「貸してくれないかな……財布忘れちゃって」
バスタオル越しにピタッと身体を密着させ、小さな胸を揉みながら甘えた声で言う。
「んー……」
(しょうのないコ)
大の大人の松田が、まるで年下の子供に思えてくる。
「その代わり、あたしを選んでね!」
「君のアソコは最高だ。月五〇万、おめでとう」
料金を払い、部屋から出ようとした松田は不意に振り向き「もう一度見せてくれ!」と真弓の前にしゃがみ込んだ。
「もう……子供みたい」
勝手にスカートを捲ろうとする松田の手をピシッと叩き、ムフフッと含み笑いをした。
「〃ナニ〃が、見たいの?」
「君の、オマンコ」
「あたしの……可愛い?」
「あぁ、大人のグロテスクなモノなんて、見たくもないけど、君のは、いつまで見てても飽きないよ」
「じゃあ、見せてア・ゲ・ル」
ゆっくりとスカートを持ち上げ、パンツを横にずらしてやる。
(男って、いくつになっても同じなのね)
幼い頃、真弓のソコが見たくて一生懸命機嫌をとっていた男の子たち。今、真弓のソコに目を凝らす松田は、あの頃の子供たちと同じに見える。
(あたしも……同じか……)
ソコに視線を感じ悦んでいる自分もまた、幼い頃と少しも変わってないことに気づき、真弓は思わず吹き出した。
大切なモノ
あの日以来、ルンルン気分の毎日が続いている。早百合を含め、同級生が子供に見える。自分はすっかり成長した〃女〃。
処女を無くした代わりに、真弓は〃女〃としての自信をつけた。誰にも負けない。男を知り尽くした熟女の彼氏であろうと、その気になれば簡単に奪い取れる。そこまで自分の魅力に、テクニックに自信を持っている。
「間違いなくあたしが選ばれる!」
日に何度も伝言をチャック。
「早く入れてくれればいいのに……」
(アレを入れるのは早いくせに)
チェックする度に思い出しては赤面している自分が可愛く、つい笑ってしまう。
「今日は入れてくれるはず!」
二学期最後の今日、松田がよく伝言を入れてきた金曜日。そして、今夜はクリスマスイブ。最高のシチュエーションの中、松田は夢資金の提供者を紹介してくれるはずだ。
「最高のプレゼントだわ」
朝から舞う小雪。幻想的な景色が、より真弓の夢を膨らませている。どんなに膨らんだ夢も、いずれ叶う。松田のプレゼントで。
「松田さんにも、たまにはサセてあげよう」
松田の傘に触れるだけで、あの日の興奮が蘇ってくる。足に地がつかぬふわふわ気分のまま、夢見る少女は学校へ行った。
「今日は用事があるから……バーイ」
早百合の誘いを断り、家路を急ぐ。いつもの公園のいつもの電話ボックス。
『あなた宛の伝言が……』
「きたァ!」
思わずガッツポーズの真弓。
「えー、残念ながら別の子に決まりました」
『お相手様に、直接返事を返す時は4、次の伝言を聞く時は……』
「ナニこれ……」
真弓は伝言の内容が理解できなかった。否、目の前が暗くなり、スーッと血の気が引いていくということは、充分に分かっているということ。認めたくないのだ。
「ウソよぉ」
何度聞き直しても内容が変わる筈もない。認めざるを得ない。
「ひょっとして……騙されたんじゃ……」
月五〇万が、ファンシーショップの夢が、脆くも崩れ去っていく。
「あんな奴、もう二度とサセてあげない!」
一生懸命ピストンを繰り返し、快感を植え付けてくれた愛しい松田のペニスが、不潔極まりないモノに思えてきた。
悔しさに涙が滲んでくる。
「二万円返せ! バカッ!」
それが松田への最後の伝言。
「あんな奴に選んで貰えなくったって!」
松田への怒りが、負けてたまるか! と炎となって燃え上がる。
「月五〇万ぐらい、稼いでみせる」
声を聞いた途端切ってしまったツーショット。今日は会話ができそうだ。
「モシモシ!」
「あのォ、雪がひどくなってきちゃってェ、あたしィ、傘忘れちゃってェ……」
自分でもびっくりしてしまう猫なで声に、真弓は女の強かさを感じた。
「……家まで送って欲しいんだけどォ」
「ンー、ホテル経由ならいいけど」
交渉成立。数分後には松田よりずっと若い男がやってくる。若さに任せ、思いっきり激しく突き立ててくるに違いない。
「あんな男より、ずっと感じさせてくれる!」
真弓は松田に借りたビニール傘を道路へ投げ捨てた。行き交う車が音を立てて骨を折り、ずたずたに引き裂いていく。
天を仰いだ頬に、雪が気持ちよい。松田への怒りがスーッと鎮まった。改めて考えてみれば、松田に巡り会ったことは決してマイナスではない。これから生きていく上で、プラスになることが多いはず。
キィーッ!
タイヤを軋ませ、男がやってきた。
「電話のコ?」
ちょっと太めのその男に微笑みかけ、真弓はもう一度松田の傘を見た。騙されたと知った今でも、女として誰にも負けない自信は失っていない。その自信を持たせてくれた男。それは、幼い頃からの夢以上に、真弓にとって大切なモノになるだろう。
どんな困難が襲ってきても、一人の女として、力強く歩んで行ける自分を感じている。 真弓は、松田に対し素直に、
「ありがとう」
と感謝した。
おわり