「『2人のキズナ』(前編)」  秋葉 時雨



  〜登場人物〜
正輝・・・夢衣の兄。中学2年生。
夢衣・・・正輝の妹。小学5年生。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


「あくぅ……っ、──んあ!」
 静寂に包まれた真っ暗な部屋の中。
 ほとんど物は無く、本棚やクローゼットや勉強机など、生活に必要な最低限の家具だけが置いてある。その小じんまりとした部屋は閉め切っていたせいもあり熱気に包まれていた。
 そのムッとした暑さの中、部屋の1/3を占めるシングルベットの上で動く2つの人影があった。
 一つは男の子でYシャツにズボンと言ったラフな格好で寝ている。
 見ると黒の長髪が似合う中々の美男子で、ボタンを外したYシャツの隙間から若々しい肉体が見え隠れしている。切れ長で優しそうな眼が自分の上に乗っているもう1つの陰を見上げていた。
 問題はもう1人である。
 もう1人は女の子でこちらは全裸だった。しかも少年のズボンから飛び出している分身を自らの体で受け入れ、一身不乱に腰を動かし、絶頂に導こうとしている。
 時々、不意うちで起きる突き上げが良いのかつぶらで大きな瞳を細めて矯声を上げる。
 そのツインテールにまとめた髪型や華奢だが日焼けした健康的な肢体はどう考えても小学生だった。
 身体を求め合うにはあまりに幼いこの2人、実は血の繋がった兄妹である。
 寝ている男の子の方が兄の正輝。騎上位で責めている方が妹の夢衣。静かだった正輝の部屋は今や2人の体臭と粘液の擦れ合う音であふれ返っていた。
「ん、あっ、あっ! ……お、お兄ちゃん、気持ち良い?」
「……ああ、気持ち良いよ。ムイ」
 精一杯、兄を満足させようと尽くす妹に対して正輝は感謝の意味を込めて優しく頬を撫でてやる。
 すると夢衣は嬉しそうに微笑み、その手を受け取り口まで持って行くと正輝の手に付いていた汗をなめ始める。
 自分がした行為に、ゾクゾクとした快美感を感じているのか、正輝を受け入れている秘処の締め付けが一瞬だけ強くなった。
「もう良いよ……ムイ。後は俺がするから」
「嫌っ、ダメだよ! 今日はムイが気持ち良くしてあげるって言ったんだか……あ! きゃっ!!」
 まるでフェラをする様に自分の指にしゃぶり付く妹の痴態に、ばれない程度に小さく唾を飲み込んだ正輝はそのまま上半身を起こして夢衣を正常位の体勢に変えてやる。
 そして今までのお礼とばかりに激しく腰を動かし始めた。
「ん、や……く、うっ! お、お兄ちゃん激し……ああ!」
「ムイの、おかげだよ。だから今度は俺の番。ほら、余計な事考えないでイッちゃえって!」
 さっきまでの冷静な態度とは一変し、我慢できなくなった正輝は獣の様な激しさで夢衣の身体を貪って行く。
 その反面、妹への気遣いも忘れなく少しでも夢衣が痛がったり、嫌がったりしたらすぐに抑えようと頭の片隅に決めていた。
 しかしそんな正輝の思いとは裏腹に夢衣は愛しい兄の腕をしっかりと握り締めながら恍惚の表情をしている。その涙を溜めた瞳はすでに焦点を失い、快楽に溶け切っていた。
「あうっ!……はっ、くうぅっ!! く、は、お、おにぃ……ひゃん! ん……んんあっ!」
「ムイ、あんまり声が大きいと下の母さん達に気づかれちゃうよ?」
「だ、だってぇ気持ち良いんだもんーーっ! く、そ、そんな事良いからぁ、もっとズコズコしてぇーーっ!!」
 妹の貪欲なリクエストに正輝は、まだ小さいクリトリスをつまんでやる。
 余裕を見せてはいるが、正輝の方もそろそろ限界が近い。刺激が強すぎない様に慎重に包皮ごと揉みほぐすと、夢衣の腰が飛び跳ねた。
「あっ!! ダ、ダメ!! もうらめぇっ!!」
「う……俺もそろそろ」
「あああっ、だ、出してーーー!! ム、ムイの中に熱いのたくさん出してほしいのぉ!!」
 その言葉に一瞬、我を忘れて正輝が子宮口まで一気に突き込んでやると喉をのけ反らせ先に達した夢衣が痙攣する。脈動する柔肉に追い詰められ、このまま出しても良いのではないかと言う危険な考えが頭をよぎったが、最後の理性を振り絞ってなんとか肉棒を引き抜く。
 暴発した肉棒から白濁した精液が夢衣の身体に放出され、腹や胸などに降り注がれる。危うく危機を免れた正輝はそのままがっくりと倒れ、額の汗を拭った。
「ハァ……ハァ……ハァ……あう、ベタベタするよぉ」
 ようやく痙攣が止まり脱力した夢衣は荒い呼吸を繰り返しながら、自分の身体に掛かった精液を拭いのんきな事を言っている。
 そして中に出してくれなかった正輝への不満と、自分で兄を満足させられなかった悔しさが、入り混じった思いを抱きながら瞳を閉じて意識を失って行った。


ザアァァーーーーーーーーーーーッ!!
「お兄ちゃん、最近ムイに冷たいよね?」
「……えっ?」
 シャワーの激しい水音に身を包みながら正輝が振り返るとバスタブの縁に、両腕と頭を置いた夢衣が顔を隠す様に両腕で顔を覆った。
 ここは正輝達の家の浴室。あの後、汗塗れになったのと夢衣の身体にこびり付いた精液を落とすため、2人はこっそりお風呂に入っているのである。
 正輝達の家は一軒家なので、2階の真下の部屋で寝ている母達と、1階の端にあるこのお風呂場とはかなり離れているためこんな時は便利である。
 まぁ、母に中学2年生と小学校6年の兄妹が一緒にお風呂に入ってる所など見られれば大騒ぎになるのだろうが……
「冷たいってなにが?」
「だって、さっきだって中に出してってお願いしたのに最後抜いちゃったし……」
 12才の少女に「避妊」と言う言葉はインプットされていない。
 どー説明したら良い物か、苦笑した正輝だったがすぐに考えるのを止めた。たぶん、夢衣にはまだ難しいだろうと判断したからだ。
「あれは、そーしないと大変な事になるからさぁ」
「大変な事って……?」
「……ムイはまだ知らなくて良い事だよ」
 正輝が優しく微笑み頭を撫でてやると、ごまかされた事が不満なのか、夢衣はプクゥと頬を膨らませてムクれてしまった。
 それならばと今度は、額に軽くキスしてやると顔を真っ赤にしながら嬉しそうに湯船に顔を沈めてしまう。
 コロコロ変わる表情豊かな妹の愛らしい姿に、思わず気分が盛り上がってしまい、もう一回したいなと言う思いに駆られたが、夢衣の身体の事を考えそれはシャワーと共に洗い流す事にした。
「ねぇ、それなら一つだけお願い聞いてもらっても良いかな?」
「うん? 何」
「……今日一緒に寝ても良い?」
 背中を正輝に洗ってもらいながら泡塗れの夢衣が振り向く夢衣の背中は小さいからすぐに終わってしまい、言い訳を考える時間もない。
 そんな必死な顔でお願いされたら断れる訳がなかった。
「別に良いけどさ……また汗塗れになっても知らないぞ?」
「うん、大丈夫だから!」
 気恥ずかしさから正輝が頬を掻いて答えると、感じとったのか夢衣も恥ずかしがりながらそれでも喜び正輝に抱きついて来る。
 どーやら2人にとって今夜は寝づらい夜になりそうである


 ──次の日。ある中学校の3階にある教室のお昼の風景。現在、2年生達が在学しているそのクラスの窓際で、頬杖をついて物想いに耽る正輝の姿があった。
 別に景色を眺めている訳ではない。考えていたのは夢衣の事だった。昨日の晩、結局正輝は夢衣と一緒に狭いベットの上で眠った。
 親達からして見ればいつも正輝にべったりの夢衣が朝、パジャマ姿で息子の部屋から出て来ても、問題ではないらしくなんのお咎めも無く済んだ。
 そんな天然な所もあって、今だ2人の関係はバレずに済んでいるのだが、今朝母が微笑みながら夢衣に言った言葉が正輝の胸に重く突き刺さった。
「も〜夢衣ちゃんも、あんまりお兄ちゃんに頼ってばかりだと、良いお嫁さんになれないわよ?」
(ゴメンなさい、母さん。あなたの娘をダメにしたのは僕です!!)
 心の中で深く深く母に謝罪した正輝は、また考えを元に戻した。
 議題は「夢衣に対する自分の気持ち」である。
 昔から正輝は、このいつも自分の後に付いて来る妹の事を可愛いと想っていた。そして、それが異性としての気持ちだと気づいたのは中学に入ってからである。
 そして、2人の関係が微妙に変化したのもその頃からだった。
 中学と小学校で学校も別々になり、会う時間が少なくなると夢衣は一緒にいる時、前以上にべったりとくっつく様になった。
 しかし、部活動も始まりいよいよ疎遠になってくると、寂しさに耐え切れなかったのか、夢衣は正輝に自分の想いを告白したのである。
(私、お兄ちゃんが好きだよ──)と。
 その時の事を正輝は今でもはっきりと覚えている。
 夢衣の想いはたんなる憧れだと、半場諦めていた正輝は涙をいっぱい貯めて告白したその必死さに魅了されて、思わず夢衣を抱き締め、キスをしてまい、初めての相手になってしまった。
 こうして想いが通じ合った兄妹は恋人同士になったのである。
 ──が、それがいけなかった。
 兄への気持ちの表し方を知ってしまった少女は毎晩の様に正輝の身体を求めて来た。
 正輝も正輝で、初めて知った女性の味と夢衣への愛から夢中になり、以前など親の前で恋人の様にイチャついた事もある。
 だがいつも夢衣とSEXをする時、正輝はどーしようもない背徳感に駆られた。兄として妹を守らなければいけない自分が夢衣を汚してしまっている。
 冷静になった正輝はそれ以降、態度を兄として接する様になり、夢衣から求められる以外は絶対に抱かない様に決めたのである。
 だが、夢衣はそれを自分が嫌いになったと勘違いしているらしくまた激しく求める様になり、昨日など逆夜バイに来る始末だ。
 このままでは行けないと考えていた正輝の頭の中に今、2つの選択肢があった。
1.今までの関係を続けて行く。
2.夢衣を拒み、兄妹の関係に戻す。
 今までの関係を続ければいつかは親にバレ、2人の関係が壊れてしまうかもしれない。それは嫌だった。
 しかし夢衣を拒み、傷つけただの妹として見れる勇気も無ければ自信もありはしない。2つ共、正輝にとってツラすぎる決断だった。
「おーい!! マサキーー! 何、黄昏てんだ? クラスの女の子達がキャーキャー言ってんぞ? モテる男は頬付いて景色見てるだけで絵になるんだからツライね〜!」
 と、いきなりクラスメートで親友の秀明が絡んで来た。
 短く刈った頭に浅黒く筋肉質な身体。と正輝とは対象的なスポーツマンタイプの人間だったが、それが返って馬が合うのか彼とはもう小学校からのつき合いである。
「別に……ただ考え事してただけ」
「なんだよぉ! 辛気くせぇな〜! よし、俺が特別にお前に良い物をやろう!!」
 と言うと秀明は自分の机から何か取り出し、正輝に渡した。見るとなんの名前も入ってないただのビデオテープである。正輝が不思議な顔をすると、秀明はなんとも意味深な笑いを見せた。
「俺がある裏ルートから手に入れた、激ヤバ解禁裏ビデオだ。今なら普通500円で売る所だが、親友のお前には特別に800円で売ってやろう! さあ、どうする? 買うか」
 金額が高くなってんじゃないか、と言うツッコミはあえて言わず、正輝は苦笑した。これも彼なりの気の使い方なのである。
「ありがとう。秀明と話してたら少し気分が軽くなった」
「うん? そか、まぁ〜あんまし考え込むなよ? お前が落ち込むとお前のファン子達まで泣いちゃうからな〜!」
 ビシッ! と指を指した決めポーズを決めて秀明は去って行ったが、親友の言葉に正輝の脳裏に新たな選択肢が浮かんだ。
3.彼女を作って夢衣の事を忘れる。
 恐らくこれが一番まともな答えだろう。だが……その選択肢は正輝自信の意志ですぐに排除された。
 確かに自分はモテる方なのかもしれないし、学校には魅力的な女性がたくさんいる。ひょっとしたら正輝に恋心を抱いている娘だっているかもしれない。
 しかし、夢衣の身体を知ってしまった後それは色焦た物にしか見えない。
 それにいくら大人びているとは言え、正輝はまだ14才。青春真っ盛りの年頃である。自分の気持ちに嘘をついてまで他の娘とつき合う事などできなかった。
 と、そこで予想以上に自分が夢衣にやられてしまって事に気づく。正輝はまた頭を抱えて苦笑した。


 6月X日。昨日、お兄ちゃんと一緒におフロに入ってその後、久しぶりにお兄ちゃんと一緒に寝ました。でも、お兄ちゃんは前みたいにムイの事ギュ〜ッとしてくれません。ムイはそれがとってもかなしいです。  おしまい。
 書き終えた日記を閉じると、夢衣はため息をついた。今は自室で正輝への想いを書いた秘密のノート、通称「お兄ちゃんノート」を書いていた所である。
 正輝の部屋とは違い、辺りにはそこら中に物が散乱している。それがマンガやアクセサリー、CDに人形に洋服と勉強に関する物が1つも無いのはこれは性格の差だろう。
「お兄ちゃん、遅いなぁ」
 寂しさを紛らわす様に大きな猫のヌイグルミをギュツと抱き締め、夢衣は時計に目をやった。
 今はまだ4時。夢衣にとって、正輝と会えないこの時間帯が一番孤独を感じる時である。
 しかも母達もどこかへ出かけてしまって1人だったのでそれは尚更だった。
「またお兄ちゃんの部屋に行っちゃおうかなぁ……」
 ヌイグルミに話しかける様につぶやくと、夢衣はフラフラと出て行き、隣の正輝の部屋に向かって行く。そして誰もいないのは分かっているのに一応、ノックをしてからドアノブを回した……。



(後編に続く)