『幽かにくゆる煙の影』

   「第三話 ゆらぐ煙(後編)」  海並童寿



「下、脱がすよ」
 滋人は蛍のスカートのホックを外し、ジッパーを下げて、先ほど自分がしたように、蛍のパンティまでを一気にぐい、と彼女の足から抜き取った。蛍の体が羞恥にぴく、と震える。
(うーん、パンティ姿も見てみたかったけど……ま、さっきパンモロは見せてもらったし)
「足、開いて。さっきの僕みたいに」
「は、は……い……」
 やはり顔を真っ赤にして、固く目を閉じながら、蛍はゆっくりと閉じ合わさった足を開いた。その間に滋人が素早く体をねじこむ。滋人自身もぐい、と蛍の足を押し開き、その付け根にある蛍の秘裂をあらわにした。
「じゃ、ここも開くよ……」
 ささやくような──というより、かすれ声で滋人はそう言うと、
 くにっ……
 うっすらとした若草の下の裂け目に指をかけ、一気に開いた。
「ひゃっ……」
 普段外気を感じることのない粘膜を晒されて、蛍が反射的に声を上げる。
「へぇ……女の子ってこんなんなんだね」
 焼け付くような視線を、蛍は感じた。
「あ、あの、余りじっと見ないで下さい……その、お見せするようなものではありませんから……」
 たまりかねてそう言うと、
「あ、そう? じゃ、早速」
 滋人がそう言うのとほぼ同時に、蛍はクレバスの底にざらついた感触を覚えた。
「あぅっ!」
 いきなりの攻撃に悲鳴に近い声を上げる。
「へへ、どんどん行くよ……それっ!!」
 蛍が声を上げたのに気をよくして、滋人は更に秘所全体を舌でなめ回した。少しずつ充血しつつあるラビア、ひくつく膣孔、そして合わせ目にある少女の弱点。
「あ、あぁっ、ひふっ、ひゃあ、あっ、うくっ、ん、あひっ!」
 これまでになく蛍があられもない声を上げる。事実、蛍の意識には絶え間ないスパークが閃いていた。
「これこれ、ここだな……つんつん、と」
 滋人が舌先で蛍のクリトリスをつつく。そのたび、蛍の体がびく、びくと釣り上げられた魚のように跳ねる。
「今度は……入るかな〜」
 舌をとがらせ、そっと秘洞の入り口へと差し込む。
「ふゃ、あんっ!」
 蛍は、今度はぞくり、と体全体をふるわせた。
(あ、あ、な、中に……これも、舌?)
「ああ、ああぅ、う、うう、ああん……」
 指ともペニスとも違う異物の感覚がもたらす快感に、蛍は全身をのたうたせた。
 一方滋人は──
(……これ、俺のつばじゃないな……ってことは蛍ちゃん、濡れてくれてる? うひゃー!)
 舌先に感じる、微かな味。それが蛍の膣奥からとめどなくあふれてくることに、滋人は興奮と同時に感動していた。
 先ほど蛍の胸で爆発した滋人のペニスはそれから程なく硬度を取り戻していたが、蛍が濡れているという事実を知ったとき、滋人は痛いほどにペニスが張りつめているのを感じた。
(も、もーだめだ! 限界!)
 滋人は舌を引き抜き、体を起こして蛍の腰から上を一望した。とろりとした瞳。はぁはぁと荒い息をつく口。顔から胸に掛けて残る射精の跡。息に合わせて上下する胸と腹。そして、滋人の唾液と蛍自身の愛液でしっとりと濡れた、蛍の少女の部分。
「蛍ちゃん、もう入れるよ、いいよね?」
 滋人の要求、というより通告に、蛍は一瞬の間を置いて、こくり、と頷いた。
 すると、滋人はいきなり蛍の体を裏表ひっくりかえし、うつぶせにした。
「えっ? し、滋人さん?」
(ちょーっと、あの精液べっとりを見ながらってのは勘弁してほしい……)
 滋人はそう思いながら、蛍の腰を引き寄せ、濡れそぼつ秘所を己のペニスに近づけた。
 途端、
「いっ、嫌あああぁぁぁぁぁぁっっっっ!!」
 突然蛍が暴れ出し、滋人は腕の中から蛍の体を取り落とした。蛍は素早く体を元通り仰向けにし、両腕で自分の体を抱きしめた。
「ど、どしたの、蛍ちゃん、急に……」
 自分の行動を止められた怒りよりも、蛍の態度の急変に滋人はうろたえた。
「ご、ごめんなさい。私、後ろからだけは、どうしてもだめなんです。ごめんなさい……」
 済まなそうに蛍が目を伏せる。
「そうなの? うーん……」
 滋人としてもそれほど後背位にこだわりがあったわけではなかったが、己の精液を正面から見ることになる正常位は避けたかった。
「じゃ、さ。こうやって……」
 滋人は蛍を左横向きにして、蛍の右足をぐい、と持ち上げた。
「きゃっ、し、滋人さん、何を……」
 そのまま、滋人は腰を進め、再び蛍の秘所にペニスを当てる。
「これでいいんだっけかなー。ま、いいや。行くよ、蛍ちゃん」
 あっけらかんとそう言うと、滋人はペニスを手で支えて、蛍の膣孔に軽く先端を埋めた。そして、そろり、と腰を押し込む。
「え、あ、あれ? わわっ、は、入っちゃうよっ!?」
 滋人としてはゆっくりと挿入して蛍の表情を楽しむ心づもりだったのだが、そんな余裕もなくペニスは一気に蛍の胎内へと飲み込まれた。
「あ、あはああああああああぁぁぁぁぁぁっっ!!」
 蛍は体を弓なりに反らせてひくひく、と震えた。
「う、うへぇ……ほ、蛍ちゃん、大丈夫? 痛くない?」
 滋人の言葉に蛍はかぶりを振った。
「だい……じょうぶ、です……」
「う、うん……」
(ってゆーか、僕の方が大丈夫じゃないかも……お、女の子のアソコって、こんなにすごかったのか? あったかくて柔らかくて、とろけそう……)
 語彙の少ないグルメ番組のレポーターのような形容で滋人は感動にひたった。
(ああ、生きててよか……て、死んでたっけか)
 今更のように自分の境遇を思い出し、一瞬熱の冷めた滋人は蛍の表情を見つめた。微かに眉をしかめて目を閉じ、小さく口を開いてはぁはぁ、と荒い息をついている。微かにひく、ひくと震えているそのリズムと同じ拍子で、蛍の膣は滋人のペニスをやんわりと締め上げていた。
「う、動くよっ、蛍ちゃんっ」
 蛍の返答を待たずに滋人はそろそろ、と腰を引いた。亀頭が見えそうなところまで引っ張り、もう一度ぐぐっ、と押し込む。
「あ、あぁっ、ああんっっっ」
 蛍が喉をのけぞらせ、高く甘い声を上げる。
「うぅっ!!」
 同時に滋人もうめき声を上げた。
(あああ、も、もう、気持ちいいとかそれどころじゃ……)
 もはや、ゆっくりとしたストロークでじっくりと蛍の膣内を楽しむ、などという余裕はなかった。がむしゃらと言っていいようなスピードで、短い突き引きを繰り返す。
「あああ、あんっ、ん、んふっ、ふああ、ああん……」
 蛍の口から止めどなく可愛らしい嬌声がこぼれる。しかし滋人はそれだけでは満足できず、
「ほ、蛍ちゃん、気持ちいい? 気持ちいいって言ってよ!」
 ぶんぶん、と激しく首を振りながら、蛍が答える。
「はぁっ、あ、はいっ、くっ、気持ち、いい、ですっ、んっ!」
(うおーっ、僕、女の子をよがらせてる! こんな可愛い女の子が、僕のち○ぽを入れられて感じてる!)
 感激がさらに滋人の動きを加速する。
「あ、あ、ぼ、僕、もう……」
 腰の裏あたりにぞくりとするような感覚が溜まって行く。そのとき、ふと、滋人はどこからか、『引かれる』ような感覚を覚えた。
(……なんだ?……まぁ、このまま、蛍ちゃんの膣内[なか]で射精[だ]せたら、どこへ連れて行かれたっていいや……)
 こみ上げる射精感を留めようともせず、ひたすら、蛍の一番奥深いところに射精することだけを目指して滋人はペニスをずむ、ずむと突き立てて行く。
「うぁぁ、蛍ちゃん、蛍ちゃん、出すよっ、膣内に出すよぉぉっ!!」
「……!」
 一瞬、蛍の表情が強ばった。きゅっ、と何もない空間を蛍の両手が握りしめる。
「ううっ」
 びくんっ!!
 蛍の膣内で、滋人のペニスが爆ぜた。びゅる、びゅると白濁液を激しく吹き出す。
「んん、ん、ん……」
 滋人のペニスの痙攣に合わせて、蛍が小さな鼻声を立てた。
 と……滋人の姿が、徐々に薄らいでいった。
「……あ?」
 蛍はふと呟いた。胎内に突き込まれたモノの感覚が、小さくなるのではなく、希薄になってゆく。
 ほどなく滋人の姿は完全に消え失せた。同時に、蛍の膣孔から、愛液と混ざった白濁液がとろりとこぼれ落ちる。
「……滋人……さん?」
 上体を起こして、蛍はきょろきょろと周りを見渡した。だるい体に活を入れて、滋人の気配を探ってみる。
「いない……もう、旅立ってしまったのかしら……?」
 ひとりごちて、蛍は立ち上がろうとした。
「あ、あれ、きゃっ!?」
 ひざがかくん、と折れ、蛍はいわゆる女の子座りのポーズにぺたりとへたり込んだ。
(浮いているのに足に力が入らなくてこんなになってしまうなんて……変なの)
 思わず、苦笑する。
 なおも膣孔からとろとろとこぼれる精液の感覚に、蛍はひく、と体を震わせた。
(……あ……んうっ……)
 体の奥に埋み火のような熱を感じる。それがなんなのか、どうすれば治まるのか、蛍は知らないわけではなかった。
(だめ、そんな……はしたないこと、人の部屋で……)
 そう自分を叱るが、先ほどまで人の部屋でさんざん「はしたないこと」を繰り広げたことを思うと顔中が熱くなる。
 蛍は部屋の時計を見た。──恭介と約束した時間まで、あと20分強。
「すこし、だけ……」
 蛍は乳房とまだ艶めかしく開いたままの秘所へ、そっと手を伸ばした。


「駄目だこりゃ。ったく、今日の仕事は断るべきだったな……あれからこっち、ケチの付きまくり大会だぜ」
 恭介は軽くなった財布をぽい、と放り上げて愚痴った。軽くなった分は銀色の玉に化けて恭介の手元から去っていった。
 ちらりと腕時計に目をやる。そろそろ、約束の2時間だ。
「あの童貞小僧ならあっという間にイっちまって、蛍に恨み言言われてる頃だろうよ」
 ふん、と鼻を鳴らして嗤いながら、家路をてくてくと歩く。
 自分の部屋のドアの前に立ったとき、恭介は家の中から甲高い声を聞いた。
(おいおい。タダだと思って2ラウンド目突入してんじゃねえだろな?)
 しばし迷って、恭介は静かに鍵を開け、わずかにドアを開いて室内をのぞき込んだ。
「!?」
 そこに見えたものを意識が解釈する前に、ほとんど反射でくるりと180度体を回す。
(あれ、蛍だよな? 一体何やってんだって、ナニだろうが……)
 問題は、そこに問題の中原滋人氏がいなかったことである。
(てことはもう終わったんじゃないのか? 何を一人で延々やってるんだ?)
 改めて時計を見る。残り時間は5分少々。
 考えた末、恭介は再びドアをそっと閉めて鍵を掛けた。
「──酒でも買ってくるか」
 一方、蛍──
「ん、ううあぁっ、あうっ、んふっ、くぅっ、あひぃっ、」
 乳首をひねり上げ、弾き、こすり、転がす。クリトリスを火傷しそうなほどの勢いでこすり立てる。そして、二本の指をぐにぐにとうごめかせながら、膣内の滋人の精液を全てこそげ出そうかというほどの勢いで秘洞へと激しく出し入れを繰り返す。
「あああっ、く、くふぁ、うっ、あっ、あっっ」
 背を丸め、びくりびくりと体を震わせながら、与えられなかった快楽の頂点へと自らを押し上げて行く。
「ああ……ん、はぁ、もう、もう、だめっ……」
 胎内へ突き入れる指の動きをいっそう激しくし、乳首とクリトリスを同時にきゅっとつまみ上げる。
「あ、あ、あ、ああっ、ひぃっ…………!!」
 びくびく、と蛍の体がひときわ大きく跳ねた。
「あ……ん……ぅ……」
 まどろむような余韻の中、彷徨っていた蛍の視線がそれを捉えた。とっくに燃え尽きた、今日の分の線香が立っていた線香台もどき。
 ふっ……と、全ての余韻が吹き飛んだような気が、蛍はした。
「……何してるんだろう……私……」
 呟いて、きゅ、と自分の体を抱きしめる。その時、がちゃりと大きな音が響いた。
(石黒さん!?)
 脱ぎ散らかされた衣服を探している余裕はない。蛍は慌てて、とにかく服を『着た』。
「よー、部屋の主のお帰りだぞ〜」
 ドアを開けて入ってきた恭介の顔は真っ赤に彩られていた。酒を買うには買ったが、同時に呑んでも来たらしい。
「お、お帰りなさい……」
 ぺこり、と頭を下げる蛍。
「どーだ? うまくいったかぁ?」
 ぺしぺし、と蛍の肩を叩いて恭介が尋ねる。
(う……すごいお酒の匂い……)
「は、はい、なんとか」
「よーし! 流石七条の娘! あっぱれ!」
 げはは、と恭介は笑った。
「あ、いえ……今回のことは、あまり七条の血とは……」
 そう言って目を伏せる蛍に、
「そーだそーだ。今回は術は術でも閨の術だったな。いよっ、テクニシャン蛍ちゃん! 年さえごまかせば今日から風俗デビューOK!!」
 恭介はそう言ってもう一度蛍の肩をぺしぺし、と叩いた。
「……そう言われても、あまり嬉しく……ないです」
「あっそ」
 恭介はぷい、とそっぽを向くと、冷蔵庫から缶ビール、それも500ml缶を取り出した。
「石黒さん!? まだ飲むんですか?」
 心配した様子で蛍が近寄る。
「──お前、ウリ、やってたろ」
 突然の恭介の言葉に蛍はぽかんとした顔を見せた。
「うり……って、あの、何の話──」
 蛍の台詞を遮って、
「とぼけんじゃねえよ。援交だよエンコー。もっとはっきり言や売春だよ!」
 蛍の顔がさっと紅潮した。
「そ、そんなこと、私して──」
「ほー、それで会ったばかりのよく知りもしない男に平気で股を開くのか? まぁったく、大したお嬢さまだよなぁ!? え!」
 再び蛍の言葉を遮って恭介の言葉が奔[はし]る。蛍はさぁっと顔を青ざめさせて絶句した。
「行方不明ねぇ。どこの男の家にしけこんだんだか。ガキがいるとか言ったな? 大方避妊しそこねて出来ちまったんだろ。やれやれ、泰彦くんが知ったら大泣きするだろーなぁ。そーだ、今から電話してやるか」
「や、やめて……ください……」
 蛍の双眸から泉のように涙があふれ出していた。
「ふん、そりゃ、家にも帰れないわけだよな!」
 恭介はビールをぐぐぐ、とあおった。瞬く間に500ml缶の半分を飲み干す。
(畜生……なんでこんな小娘のことでイライラしなきゃならねえんだ? ち、そう考えると余計イライラしてきやがる……!)
「名家のお嬢さまが13才で男くわえ込んでガキまで作って、か。いやはや、世も末だぜ」
「うっ……」
 蛍は開き掛けた唇をきゅっ、と噛んだ。
「おう、俺はこれ飲んだら寝るけどよ。人が寝てると思って大声出してオナるんじゃねーぞ。じゃあな、淫乱お嬢さま!」
 言ったきり恭介は蛍と反対側を向いて寝そべった。そのまま、ビールの缶をぐび、とあおる。
「──お休みなさい」
 蛍は小さな声でそう言って、寝間着姿に着替えると、そっと恭介に背を向けた。


「──いやはや、大した淫乱ぶりだ……こりゃ、楽しめそうだぁ」
 どこかで、低い嗤い声がくつくつと響いた。


   第四話に続く