『カッコーの巣』
第一部「カッコーの雛(その三)」 Aristillus
9.
江里奈は、外を見ていた。
洋館風の作りになっている安永の家は、使われていない部屋が結構ある。その、今は使われていない2階リビングの窓辺に腰掛けながら、ぼんやりと外を眺めていた。
何かをしているわけではなかった。力の抜けた体を窓辺にもたれさせて、深い思索にふけっているかのように、じっと外に目をやっている。
安永がそっとため息をつくと、窓辺の小さな体に生気が甦った。
「あ、パパ。パパあ! おかえりなさい」
振り向いた彼女の反応は激しかった。ぴょんと立ち上がると全身で喜びを表しながら彼に飛びついて、犬が飼い主にじゃれるように飛び跳ねながら、彼の体をつかまえて離さない。
安永は彼女の様子を眺めていたが、片手で抱きしめて動きを止めると、そっと近くの椅子に座らせながら、話しかけた。
「ただいま。何をしてたのかな?」
「なあんにも」
病院から帰った安永が、こんな彼女を見つけたのはこれが初めてではない。順調なように見えて、子供との生活は、彼にとっては気苦労が絶えなかった。
「学校はどうだい? 楽しいか?」
江里奈は無邪気な顔で、ニコニコと彼を眺めている。
「パパ、疲れた? えりなにできる事ある?」
思ったより、重症なようだ。彼はまず、彼女の頭をゆっくりとなでて彼女の注意を促してから、声をかけた。
「パパが帰ってきたのが、うれしいかい?」
「うん!」
「それは良かった……。でもね、あんまり江里奈がそんなことで喜ぶと、私は困る」
「え、うーん……、どうして?」
「君が、他の子みたいに、外で遊ばないからだ」
「……」
「君が、小学校へ行くようになって結構経つけど、真っ直ぐ家に帰ってくるし、その後も外へ出かけない。まだ慣れないのかもしれないと思ってたが、どうやら違うようだ。……たぶん君は、私といることだけに夢中になって、他が見えなくなっているんじゃないかと思う」
「それでいーの。パパといるのが今ね、スッゴく楽しい! それの、何がいけないの?」
人差し指を立てて、彼はゆっくりと言った。
「私は、大人だ。君は、同い歳の子供たちと一緒に、今の歳にふさわしい遊びをして、楽しさを見つけるべきだ」
「パパと遊んじゃいけない?」
「私じゃ、今の子供がするような遊びを、教えることはできないんだ。だから、外へ出て、友達と遊びなさい。私がいない間だけでもいい。君は私のものだが、私は家でじっとしてる子供は嫌いだ」
本当なら、ただ駆け回るだけでも楽しく感じられる年頃のはずだ。江里奈が安永に夢中になる理由はともかく、今のままでは二人の世界に埋没して、殻に閉じこもってしまう恐れがある。
「……いいの?」
「ほら、それがいけない。君は君だ。小学生にふさわしい遊びをするのを、どうして嫌がるものか。元気に走り回って、パーッと発散すれば、今みたいに……」
セックスの話題を振りそうになって、彼は鼻をかいた。
「えりなとおまんこするのは、楽しくない?」
「うーん……、こう考えてくれ。それはそれ、これはこれだ。私は君を縛らないから、君は両方、好きなだけ楽しめばいいじゃないか。そうすれば、君はもっと幸せになれるし、そんな江里奈を見れば、私だって幸せだ」
どこか納得できない表情で考える江里奈に、彼はささやいた。
「君は、私のために、子供らしく遊ばなきゃならない。できるな?」
「うん……、ガンバる」
「いい子だ」
すっかり大人が子供にするようになでていると、彼女は子供っぽい表情でぽつんと言った。
「パパが大好きだから……」
無邪気な様子だったが、彼女はそんな中で彼の腰に抱きつくと、ズボンの股間に顔をうずめて、大きく深呼吸した。うっとりと見上げる少女の目に、安永は苦笑へと変わった笑顔を向けた。
公園から川の土手沿いに広がる林に沿ってクルマを走らせると、その向かいの団地の一角に小学生の一団がいた。普段の安永なら目線を止める事もない情景だが、今は必死になって目をやると、そこに見間違えようのない栗色の髪を見出して、ほっと息をついた。
「江里奈!」
少女はひょいっとこちらを見て、なにやら子供同士で話し合うと、「バイバーイ!」と声を掛け合って分かれた。他の子供たちはたたずんでこちらを眺めている。まだ解散するつもりはないようだ。
小走りに走ってきた江里奈はぴょんと彼に抱きつくと、彼が開けてやったドアの中に入っていった。
「そろそろ帰ろうかと思ってたの」
「……お友達かい?」
「うん。ユキエちゃんにサイバラさんに、ミヤモトさん。同じクラスの、おともだち」
「そうか」
確かめるまでもない事を聞きながら、先程までのあせりが解けていくのを感じ、彼は情けなくなった。子供を心配するのは当たり前だが、「遊べ」と言った彼の方が、こんなに心配になるとは思わなかった。
「わたし、ガンバってともだち作ったよ。勇気出して、声をかけたんだ」
「そうか、それでいいんだ。勇気を出さなくちゃ、何も始まらない」
彼は、自分の言葉に苦笑した。すぐにあれこれ注文をつけたくなり、ぐっとこらえて全て飲み込んだ。
「サイバラさんは、ユキエちゃんにすぐにバカにするような事言うんだ。でも、ユキエちゃんはサイバラさんの方が好きなの。わたしもバカにするような事言っちゃいそうで、こまっちゃう」
「……うむ、ガンバれ。すぐに夕食だ。せいさんが待ってるから」
あえて内容に踏み込まず、彼はありきたりな事を言った。これからの経験は、彼女にとって貴重なもののはずだ。何があるにせよ、自分で考える事が彼女のためなのは言うまでもない。
しばらく無言の時間が流れた後、彼女は上機嫌で彼に話しかけた。
「えりな、好きなものがふえてくのがうれしいな。パパだって、ともだちだって、せいさんだって、うちだって、みんな好き」
「そうか……。あのうちは、古い家だからね。怖いなんて事はなかったのかい?」
「ううん。好きな場所、いっぱいあるよ。お話の中みたいな庭もあるし、空がきれいだし」
「空?」
少々不思議な所があったのできくと、2階のあの窓から眺める空の事だと分かった。すっかり忘れていたが、彼が先日たずねた事を彼女なりに説明しだしたのに気付いて、彼は言った。
「君は、私の言う事を、ずいぶん真面目に受け取っているんだね……」
その事にこそばゆさを感じながら、大人の責任を感じて、少なからず後ろめたくなった。彼の言葉に左右されると言うのなら、現状に与えた影響は、彼の責任でもある事になる。
言葉とは、困ったものだ。それでしか伝えられないくせに、言いたい事の半分も、伝える事ができない。回りを気にするあまり否定的な事を言い続けたのは、彼の方だった。その彼が、引きこもる彼女に「子供は外で遊べ」とは、なんたる身勝手さだろう。彼女のためを思うなら、彼もむなしい言葉でなく、少しは行動で示すべきだ。
彼は、そのまま大手の薬局に寄ると、これからの彼女に必要なものを買い与えた。ニプレスの絆創膏と、子供用のサポーターと生理用品。彼女に言われて渋々買った、浣腸と膣内洗浄器。
これから彼女は、普通の子供の中で、それらを使って不都合のない暮らしをしなければならない。少々の恥など、彼も耐え忍ばなければやっていけないのは、分かりきっていた。
そんな彼も、江里奈の9歳の誕生日プレゼントに要求された品々を聞いた時には、さすがに汗をかいた。大人のおもちゃ屋に初めて足を運び、その世界の奥深さを垣間見て、彼はある部分での自分の未熟さを妙な形で感じる事になった。もちろんプレゼントは彼女を大変に喜ばせ、根は真面目な彼に、また一つ世界を広げさせる事になった。
10.
安永は、くつろいでいる普段着の江里奈に、ふと前から感じていた疑問を感じて、たずねた。
「江里奈はかわいいのに、なんだってそうズボンとか、男の子っぽい格好ばかり、するんだい?」
実際、暗さや怯えが取れてのびのびとした生活を送る現在の彼女には、ハーフの血と幼い外見のせいで、外国製の人形のような無垢なかわいらしさがある。これであの性癖さえなければ、どこに出しても恥ずかしくない自慢の娘と言って良かった。
「えりなは、かわいい? アハッ! 他の服の方が、パパはいいの?」
「スカート姿も見たいな。スカート、嫌いかい?」
「別に。……あのね……前のパパが言ったの、『お前は俺の物だから、外では目立つ格好はするな』って」
「なるほど……いや、悪かったね」
「なんで? じゃ、今度、スカート買う。パパの前ではスカートはくよ。それでいい?」
「いや、いや、私の前だけじゃなくて、別に、外で着ててもいいんだよ」
「なんで? どーして? えりなは今、このパパのものじゃなーい」
ぽんぽんと彼の膝を叩くと、膝の上で寝ていたハナが不満そうに首を持ち上げた。
「私は、別にこだわらないよ」
「そんなのイヤだもん。ね、えりなのお話、していい?」
「なんだい、あらたまって」
「今はほんとだけど、えりな最初は、パパは別に……好きじゃなかったんだ」
突然の告白に、彼ははっと背筋を伸ばした。体を戻すと、彼は言った。
「知ってたよ。気にしなくていい」
「知ってた?」
「うん。君は、守ってくれる誰かを欲しかったんだね。私を選んだのがどうしてかは知らないけど、君が無理してるって、分かってた」
「パパは、とってもやさしい……。だから、えりなは不安になるの」
「今でも、そうなの?」
「うん……胸が痛くなるくらい、パパが好き。あのね……」もぞもぞと体をゆすって、目が宙をさまよった。「最初に見た時、立って歩いて来たパパは、ピシッとして、とてもカッコよかった。それで、こんな人がパパになってくれたらなあって思って……」
「カッコいい?」
「うん!」
聞いてみれば単純な話だ。あの日彼がスーツを着ていたのは、昔の上司に挨拶に行った帰りだったからだ。思わず彼が笑うと、彼女も微笑んだ。
「……ハナはいいなあ。ずっとパパといられるんだもん」
「だって、江里奈を抱っこしてると、すぐにしたがるじゃないか」
「ふーんだ」
ぱたぱた駆けて行く江里奈を笑って見送ると、彼は軽いため息をついた。
二人が意識して関係を持って以来、江里奈は一段と、彼に依頼心を傾けるようになった。二人の間で大事な二つの取り決めをしたのはいいが、彼の想像の範囲を越えて、彼女は心配のタネになりつつある。今では堂々とセックスを求め、彼に次々と新たなプレイを要求するまでになった。問題は、その質と量だ。
その二つの取り決めとは、「その1.誰にも話さない、誰にも知られないように注意すること」、「その2.お互いのうち、どちらかが断ったら、あきらめること」という簡単なものだったが、その2は事実上、江里奈に安永が断るためのもので、逆は今までなかった。中年の彼にも性欲はあり、楽しませようと一生懸命な彼女のためもあって頑張ってきたが、小学生の少女の持つ活発なバイタリティは、さすがに辟易させていた。落ち着けば回数も減るだろうと思った当初の予定は、裏切られ続けている。
内容も、問題だった。彼女の中には大量にそのためのノウハウがあり、それを活用したくて、しょうがないらしかった。被虐性まであると知っていても、エスカレートする行為には、彼についていけないものも多かった。彼には本質的に彼女を責める事で満足する嗜虐性がなかったので、最近どんどん趣味が悪くなっていくのが、彼には心配のタネだった。
彼女を心配して買ってきたコンドームは、一回の使用の後、断固拒否の姿勢を崩していない。お互い相手しか関係がない以上、必要以上に感染症などに心配する必要はなかったが、いずれ妊娠という、最大の問題を迎える事になる。その時どうしたら良いのか、彼にとって、あらかじめ考えておかねばならない事は尽きなかった。
今日もまた、日が暮れてせいさんが帰ると、彼女が何を言い出すか分からなかった。どきりとしてしまった自分を恥じて、タバコを取ろうと手を伸ばすと、猫のハナが彼のズボンで爪を研ぎ出した。悲鳴を上げて立ち上がると、膝からすとんと床に降り立ったハナは、不満そうに彼を見上げた。
その晩、尿意をもよおした安永が何気なくトイレへ入ろうとすると、彼の方へ突然、江里奈が駆け込んできた。
「待って、待ってえ!」
「なんだ、江里奈もトイレか? 少し待ちなさい」
「違うの!」
にやにや笑うと、彼女は意味ありげに彼につかまった。
「やっとトイレ来た。ずっと待ってたんだー」
彼は、理解できずに混乱した。
「……トイレに入りたいんだ。離しなさい」
「いっしょに入る」
「へ?」
「新しいこと、しよ!」
これもまた、彼女の変態的なプレイの一つなのだろうか。彼は尿意に負けて、ドアを開けた。彼が小用をするのを眺めるくらいなら、恥ずかしいと言っても我慢できる。
しかし「とにかく、終わるまで待ってくれ」と言う彼の脇をすり抜けて、彼女はちょこんと便器に座ってしまった。すぽんとトレーナーを脱ぐと、外へ投げてしまう。
「おしっこ、えりなにして!」
理解すると、彼はしばらく固まって動けなくなった。彼女の行為は、彼の理解の範囲を越えていた。
「おしっこを……、君に……かけろって?」
彼女は、楽しそうにうなずきながら、ズボンごとパンツを脱いで、これも外へ投げた。8歳の女の子は、素っ裸で便器にまたがると、彼を求めて両手を伸ばした。
「さっ、早くして。えりなはいいの。顔にかけて! もちろん、おまんこにもね!」
足を開いて性器をぎゅっと指で開いて彼を誘うと、彼の頭はクラクラして、何も考えられなくなった。
「ダメだよ」
「いやっ」
さすがにこれはひどいと思ったが、尿意には勝てなかった。何より、彼のズボンの中で硬くなっていくペニスが、彼を裏切っていた。
彼がためらいがちにジッパーを下ろしてペニスを取り出すと、彼女はうれしそうにあごをあげた。勃っていたペニスからは、なかなか尿が出ない。それでもペニスから黄色い流れがほとばしって、彼女の腹にかかりだすと、彼女はふんふんと鼻歌を歌いながら体を左右に振り始めた。
彼女はシャワーでも浴びるように、気持ち良さそうな顔をして彼の尿を受けた。「上、上っ!」と言う言葉に従ってペニスを上げると、ぱちゃっと小さな顔に尿がかかる。一瞬目を閉じた彼女は、次の瞬間大きく口を開けた。
「わっ!」
彼が思わず下へ下げると、彼女は頭を下げて、彼女の口で黄色い流れを受け始めた。ぱちゃぱちゃと口の中ではねて、だらだらと体を伝って便器へと流れ落ちていく。
相変わらずうれしそうな表情を浮かべ続ける彼女は、口から黄色い水を垂れ流しながらぐいっと腰を突き出した。「ここに!」と言うと、ぎゅっと指で性器をさらに広げる。仕方なしに彼がそこに当てると、彼女の開いた膣で彼の尿がはねた。
ようやく流れが止まって、ちょろりと最後のしずくが落ちると、彼女は目を開けて彼を見た。満足そうな顔で、口を閉じると、ごくんと小さな音がした。
「ば馬鹿、飲んじゃったのか?」
「うん。パパのおしっこ、いっぱい出たね。うわー、おしっこまみれ!」
ごしごし自分の性器をこする江里奈を見て、彼のペニスは再び上を向いた。びくんびくんと脈打つそれを見て、彼女は再び彼に両手を差し出した。
「えりな、便器になっちゃった……。さあ次は、白いおしっこをかけて!」
挑戦的な目で見上げる彼女に、彼は断る事はできなかった。
腰を寄せると、彼女は大きく口を開けて彼を頬張った。手を使わない姿に彼を汚さない配慮を見て、彼の胸に感情があふれた。
たまらずに手でしごくと、彼女は期待の目でうれしそうに先端を見つめながら口を開けた。すでに彼の尿で汚された顔に白い粘液が飛び散った時、彼女は顔を上げると、口で大半を受け止めてしまった。入りきらない粘液は、どろりとしたたって、アゴから便器へと落ちていく。
射精が済むと、彼女はうれしそうに口の中の精液を指に付けては、膣と肛門の中をかきまわし始めた。
目をつぶって自らの快感に溺れるその姿に、射精後の満足感と共に急速に背徳感がこみ上げてくる。彼は、かける言葉を失って、荒い息をつきながら、眼下の少女の痴態を眺め続けた。
シャワーが済むと、彼女はいそいそとトイレの掃除を始めた。飛び散った液体を拭きながら、「またしてね」と背後の彼にささやく。今まで感じた事のない興奮に包まれながら、彼は最後の理性で、釘を刺すのだけは忘れなかった。
11.
「なあ、江里奈」
「なあに? パパ」
「……最近、趣味が悪くなってきたよな、君」
「そう?」
「ただセックスするだけならともかく、この前みたいに自分からおしっことか飲みたがるのは、やっぱりやり過ぎだと思う。君だって、おいしくって飲んだ訳じゃないんだろう?」
「うん。でも、ざーめんよりは飲みやすいんだよ。……あれって、そんなにいけなかった?」
「いや、マズくはない。おしっこにはばい菌がいる訳じゃないし、飲尿療法といって、好きで飲んでる人もいる。いや、そんなことじゃなくって、どうしてどんどんひどい方へ行くのかな?」
江里奈は、飾りリボンの縫いつけられたシャツを引っ張ってしわを伸ばしながら、ぽつりと話し出した。
「えりなのキズ、見たでしょ?」
彼はゆっくりうなずきながら、彼女の体にいまだに残る、かすかな虐待の傷跡を思い浮かべた。
「何をしても叩かれるって、どんな気持ちか知ってる? 悲しくって苦しくって、思い出すと今でも……いっぱいあやまったのに……」
いつもと違う、悲しみにうるんだ瞳が彼を見た。
「分かるよ」
彼女は首を振って、言葉を続けた。
「えりな、悪い子だったんだ。ママも助けてくれなかったし。だから、パパがよろこぶことは、なんでもやった。がまんして、パパが優しくなるのを、ずっと待つしかなかったから……」
彼がなぐさめる言葉を失って彼女を見守る中、彼女は続けた。
「パパといられなくなって、パパがしたことは悪いことだって教わって、わたし、とってもイヤになった。だって、せっかくパパとえりなでうまくいってたのに、どうして、ぜんぶやめさせられなくちゃいけないの? なんでもできるようになったのに、なんで、いけないって言うの?」
「……」
「みんなイヤ。だからわたし、みんなだますの。いい子になって、知らないフリをして。でも、つまらなくって、苦しかった。えりな、幸せになっちゃ、いけないんだって思った」
彼女の表情には、子供らしからぬ苦悩があった。
「わたしが本当にほしかったのは、前のパパとママ。えりなをいじめないパパと、やさしくしてくれるママで、一緒に暮らすこと。ちがうって分かってても、えりなはおじさんに、パパになってほしかった。やさしいから、分かってくれると思って」
「……だから、私とセックスしたんだね?」
「うん。イヤだって思うわけないよ。おじさんがしてくれるの、えりなとってもうれしいし、気持ちいい。だから、どんなことしてもえりなだいじょぶだって、教えてあげるんだ。ひどくなんかないよ」
「おいで、江里奈」
彼が呼ぶと、彼女はおずおずと彼の膝に上がって、彼に抱かれた。
「これからは、私が君のパパだ。……正直言うとね、君とするような事は、私には経験がなかったんだ。君が口でしてくれたような事も、トイレでしたような事もね」
恥を忍んだ告白も、子供の江里奈には関係がない。それでいいと分かっても、彼にはまだ疑問が残った。
「でも、結局なんで、普通にするだけじゃダメなんだ?」
抱いた腕で背からなでていると、彼女は口を尖らせて言った。
「パパが言ったんじゃない、このパパは、大人の女の人が好きなんだって。えりな子供だから、パパも知らないぐらいのやり方でガンバらなくっちゃ」彼の顔を見て笑うと、彼女は彼の首筋をさすって言った。「だいじょぶ、汚れても、えりな後始末はとくいだから。……やめろって言わない?」
「……ああ」
「やっぱり!」
抱きつく彼女に優しく答えながら、彼女が味わった不幸をあらためて思いやった。
少女の小さな体からは、ひなたの陽の匂いがする。その中に、洗い切れない二人の情交の余剰物のすえた香りが、かすかに混じっている気がした。彼はそれを、江里奈のそれまでの人生と、生命そのものの匂いだと感じた。
これからは、運命は安永の敵だ。唯一の味方は、全てを知りながらまだ何も知らない、9歳の女の子だけだった。
「キャハハ! やめてよ!」
くすぐったさに悶える江里奈の背中を、安永は強引につかんで舌をはわせた。今はもう、かすかな跡となった彼女の傷跡を、丹念になめている。左右の尻にも、唾液の跡が光っていた。
いつものようにセックスを求める江里奈に、彼はまず、有無を言わせず彼女の体から傷跡を探し出しては舌でなめ始めた。すぐに意図を察して優しい表情を浮かべた彼女も、くすぐったさにはたまらず、声を上げずにいられなかった。
「アハハッ、こうさん、こうさーん! もう!」強引に彼をひきはがすと、はあはあする息の下で、彼女は言った。「ありがと。でももういいの。ぜんぜん痛くないんだから」
その言葉を聞くと、彼は江里奈の平らな胸に顔をうずめて、そこだけテカるほどふくらんだ乳首を口に含んだ。舌で転がした後、歯で噛んで弾力を確かめている。彼女がじっと味わっていると、そのうち痛いほど乳首が噛まれた。
「アッ! イッ痛いイタいイタタタタッ!! ヒイッ!」
同時に彼の片手は彼女の股間に差し込まれ、クリトリスの包皮をつまんで遠慮なくつねっていた。悶えた体に電流が流れて、ビクンと腰が浮く。彼はひょいと顔を上げて、にやりと笑いながら「どうだ」ときいた。
「そう、それでいいの。……ノリノリだね! パパ」
「その通り。もう遠慮はしないぞ。その代わり、医者として私が駄目だと言ったら、それは駄目なんだ。逆らうのは、許さない」
「はーい!」
思い切り乳首を引っ張られて、楽しそうな顔が歪む。ぐるんと体を回して彼に股間を向けると、彼は手を離して観客に回った。
大胆に足を開くと自然に膣が開いて、さらに腰を上げて彼を待つポーズを取る。楽しそうに指で開いて見せると、彼はそれを眺めながら話しかけた。
「江里奈は、体が柔らかいな。バレーか、体操の選手並だ」
江里奈は、両手で膝をつかみ、左右に一直線になるくらい足を開くと、言った。
「これが、えりなのジマンなの。いつもおまんこしてるから、こうなったんだよ。必殺ワザだって、あるんだから」
「知ってるさ。……フム、相変わらず健康だな。きれいな色だし、どこも腫れてない。愛液は順調に出てるし、触る前から開きっ放しだ」
「どういうこと?」
「ここは、本当に、私とやりたがっている」
「そーよ、やろう! ズブッと入れて、ゴンゴン突いてね!」
彼は、うれしそうにそれを眺めがらバイブを手に取り、手を伸ばそうとした。
「ナァー……」
猫の鳴き声に二人の動きが止まると、ポスンとハナがベッドの上に飛び乗って、ヒゲをふるわせた。
そのままなんでもないように二人の間に割って入ると、ごろんと横になって前足の爪を噛み始める。まるで、『私を放って二人で遊ぶな』とでも言っているようだ。
すっかりあっけに取られて二人が見つめ合うと、どちらからともなく忍び笑いがもれた。
「……さて、どうする?」
「追い出しちゃう? うーん……あ、トイレでしよっか?」
「いいのか?……いや、ゴメン、そうしよう」
「うんっ!」
安永の家のトイレはかなり広いが、それでも二人が入るようにはできていない。ハナを彼の寝室に閉じ込めると、二人は全裸のままトイレに入ってそっと見つめ合った。
「……後ですねないかな?」
「今はえりなの時間だもん」
江里奈はひょいと便器の蓋を上げると、向こう向きにまたいで覆いかぶさるように体を折った。爪先立ちになってお尻を高く上げると、こちらを振り向いてニコニコと彼を見た。
「ハイッ、えりな便器。さあどうぞ!」
小さい体がうまく乗って、ちょうど彼女のお尻が便器の端にくる。まさにえりな便器だ。
高く上げた尖った双丘のふくらみの間で、子供の尻なのに赤く色付く彼女の入り口が、いやでも目に入る。
「どうする?、おしっこをかけるか?」
「ううん。まずは、パパのおちんちんでして。中に出したら、おしっこで洗うの。えりなのおまんこの中を」
「えっ!?」
「入れたまま、パパも、えりなもおしっこするの。ウフフ、どーお?」
「そりゃ、スゴい……。しかし、」大丈夫か、と訊こうとして、彼は言葉を飲み込んだ。その想像は刺激的で、彼の股間は猛り狂っていた。
江里奈の頭を押さえつけると、その喉から「ふぃっ」と声がもれた。突き出した尻にペニスを押し当てて、ぬるりと押し込むと、熱く濡れた感触が彼を包んだ。
「……気持ちいいなあ」
「おちんちん、あつうい。動いて」
容赦なくペニスの出し入れを始めても、彼女はじっと耐えた。ひどい場所で犯している感覚に、彼はすぐに順応した。
「何に抱きついてるんだ。そんなに便器が好きかい?」
「好き……、好きです。うーん、……あヒッ!」
彼女の中はすっかりほぐれて、コンコンと奥に当たる彼のペニスに、ゆるんでまつわりついていた。耐えているその姿に、彼の獣性が加速した。
「簡単にイくなよ。……私が出すまで、……イくことは許さんからな」
「そんなあ……。でも……、ぐオ……、はいイーッ」
イきそうになると、安永は一旦抜いた。しゃがんで、彼の開けた大穴が縮んでいくのを眺めている。息が整うと、再び突き込んで、腰を使った。
そのうち、彼女の反応も声も薄くなった。たゆたうことを覚えて、味わいながら、ただペニスの出し入れを感じている。
彼は、幸せだった。永遠に楽しみたかったが、子供の彼女の限界も近い。出しても終わりじゃなかったので、気兼ねなく射精する事に決めた。
突然素早い動きにして、小刻みに腰を使う。細い腰をつかんでいた手を放すと、体の下に入れて固い乳首をつまむ。今度は止まらずに、乳首をひねりながら加速すると、何度目かの頂上に合わせて、欲望を思い切り開放した。
粘着質の音がして、奥まで突き入れると彼女の奥に液体が溜まっていくのが分かる。細かくビビビと膣全体がふるえて、彼に最後の射精を促した。
「もういいぞ。イけ、そらイけ!」
「もうイッてまーーーす!! はあっ、あああ……」
膣のふるえが過ぎると、ぶるると彼女の体がふるえた。ペニスをくわえこんだまま、少女の腰がこくんこくんと二三度動いて止まる。完璧な、オーガズムだ。この子供は、彼とのセックスで完全にイくことができた。
「江里奈……言ってなかったことがあるんだ。おい……って、聞いてないな?」
ずるりと抜くと、腰が落ちてガニ股に便器にまたがった。息を止めていたのか、ぜーぜー息を切らしている。
その時、白い愛液でぬめぬめと光る彼女の中から、とろりと泡だった粘液が洩れてきた。粘性の高いそれは、ふるふると揺れながら、ゆっくりと糸を引いて便器に落ちていった。
「……良くやった」
首が上がったが、彼女はこちらを向かずにしゃべり出した。意外なことに、怒りの声だった。
「んああ、もう! なんでこんなトコで、こんなスンゴいおまんこするの! 次、行けないじゃない!」
「そんなにスゴかったか。このまま、身も心も私のものにしてやる。どうだ?」
振り向いた彼女は、泣き笑いのゆるんだ顔で彼を見た。
「はい」
小さな声は、ゾクゾクするほど官能的だった。
「……江里奈」
「だいじょぶ……涙が出るほどいい気持ち。さ、今度はおしっこだ」
しんどそうに上半身を起こすと、背中を大きく反らして、両手を便器の縁に踏ん張った。足は相変わらず便器をまたいだまま、がに股につま先立っている。
「おしっこをかけて。それでね、出始めたら、すぐにえりなのおまんこに入れて」
「分かった。覚悟しろよ」
「クスッ、えりな、本当に便器になるね」
ぼうっとした表情で彼を振り返る顔を見ながら、彼は、まだ勃ったままのペニスをつかむと彼女のお尻に向けた。ちょろちょろとお尻に黄色い流れが当たりだすと、彼女は歓喜そのものの顔で叫んだ。
「今よ!」
腰を落としながら前進すると、彼女は受け入れるように腰を上げた。小便の流れが彼女の中に跳ねて、そのままペニスを包んでしまう。
「おおうっ、これは!」
「ハァヒィッ!! うぅーーーん……」
安永は、江里奈の膣の中で放尿していた。逆流する暖かい流れの中で、彼女が恍惚と宙を見つめている。すぐに彼女自身も放尿し始めて、二人は重なって、同じ場所から小便を流し続けた。
信じられないような感覚の中で、ぞくぞくするような快感を感じていた。それは、射精とは違う、温かでゆるやかな一体感だった。
12.
安永がようやく仕事に一区切りつけて、帰宅のために病院のロビーに出ると、前方から突然声がかけられた。
「しばらくね、安永さん」
よれよれで疲れきった彼が目を上げると、夕暮れの中に、シックな格好の麗子が立っていた。きれいに整った化粧が映えて、相変わらずシャープな印象があるが、少し太ったようにも見える。
彼は驚いていたが、疲れていたので反応は鈍かった。
「……やあ……」
「お話したいの。帰るところでしょ、一杯つきあってくださる?」
彼は反射的に断ろうと口を開いたが、うまい口実が見つからなかった。言い訳はもっとしたくないが、彼女にはっきり説明する機会も必要だろうと思い直して、ようやくうなずいた。
「疲れてるんだ、一杯だけなら」
麗子のクルマに乗るのを断って、自分のクルマで追いながら、安永は、相変わらずだなと車中で苦笑いを浮かべた。
安永が三日ぶりに、電車で自宅へたどり着いたのは、夜の9時を回ってからだった。病院で、これから帰ると江里奈に伝えたのが6時頃だから、すっかり遅くなってしまった。
麗子とお互いの空白の時間を当たり障りのない程度に話し合うと、昔がよみがえって、つい懐かしい話に花が咲いた。強引な麗子の勢いにつられて、つい酒も進んでしまった。いつも、そうだった。安永は、酔った頭でそう思い返し、後悔していた。
強気な麗子は、まるで、周り全てが自分の思い通りになるとでもいうように振る舞い、実際そうなっていた。彼は、そんな彼女に年中振り回されていたが、悪い気分ではなかった。そうあの日、彼女が浮気をしていたと知るまでは。
もちろん、結婚まで考えるほどの仲ではなかった。本気でとがめた彼がそれに気付かされた時、関係は終わった。
安永は、今日初めて麗子に逆らい、はっきりと別れを告げる事ができた。彼女の驚いた後の微笑が、忘れられなかった。
「あなたも、強くなったのかしら……」
そう言った麗子に、彼は、複雑な胸中のまま背を向けて、その場を去った。彼女にも、彼がなぜそうなったかは、知る事はできなかったろう。
足にくる程でなかったが、少し悪酔い気味で、頭が重かった。
鍵を使ってドアを開けると、まっすぐに台所に行って水を飲んだ。2杯目を汲んでるいるとパタパタと足音がして、「パパっ」と声がする。
「おおっ、ヒクッ、江里奈、遅くなってごめん」
うれしそうな顔は、彼の様子を見ると少し曇った。夏も近いせいか、大き目のTシャツに短パンの姿で現れた彼女の髪は、左右にまとめられてぴょこんと飛び出している。太股の白さが眩しい。まるで、妖精みたいだと思った。
「……お酒、飲んでるの?」
「ああ、ちょっと昔の友達と会ったから……。ご飯の支度もしてあるのか。悪いことしたね」
「そんなこと、どーだっていいの! 三日ぶりよ!」
「こら、抱きつくな。酒臭いし、ロクに風呂入ってない」
「だめ、ぎゅーっとして!」
しゃがんでぎゅっと抱きしめてやると、彼女はしばらく彼の服に顔をうずめて、再会を喜ぶ犬のように匂いをかいでいた。
「風呂に入ってくるよ」
「あれ?」
考え込むような顔をして、彼女は身を離した。
「……どうした?」
「友達って、だれ?」
「どうしたんだ、いきなり」
「麗子さんね! 香水のニオイがしたもんっ」
突然怒り出した江里奈に、彼はあきれて立ち上がった。触れたわけでもないのに移ったかすかな残り香に気付いたのもすごいが、それですぐに麗子と気付く勘に、彼は少しわずらわしくなった。
「違うよ」
「ウソっ」
「どうでもいいだろ、三日ぶりだってのに、帰ってすぐに、ケンカすることもないじゃないか」
「やっぱり会ってたんだ。なんでウソつくの?」
言ったら言ったで、やっぱり不機嫌になった癖に。子供だというのに、江里奈もやっぱり女だ。
彼は酒臭いため息をつくと、ドアまで歩いてから振り返った。
「教えてやる。麗子と会ったのは半年ぶりだ。うやむやになってたから、ちゃんとさよならを言うために会ったんだ」
「なら、なんでそー言わないの!」
「言えるわけないだろ! 大人の麗子を捨てて、子供の江里奈を選んだなんて!」
一瞬の静寂の後、彼はそのまま風呂場へと向かおうとした。とたんに江里奈がダッシュして、彼の腕につかまった。
「離せ」と彼が言うと、彼女は顔を伏せたまま、「ゴメンなさい」と小さな声で言った。
「今は優しくできないぞ、離せ」
それでも彼女は離さずに、彼の手を引っ張った。顔を伏せ、肩を丸めた姿を見て、彼は、酔った頭とカッとなった勢いで、少女の体を脇に抱きかかえた。だんだんと足音をたてて寝室まで歩いていき、ぽいとベッドの上へ彼女を投げ出す。ベッドの上で弾んだ少女は、必死な顔で短パンを下げると、さらにパンツもひざまで下げて、うつぶせになると尻を上げた。彼の前に、這いつくばって彼に捧げられた尻があった。
「この馬鹿。小学生だってのに、麗子に妬いたのか!」
彼の右手が振り下ろされて、パチーンといい音がした。
「ゴメンなさあい!」
「お前は、この俺を、疑ったのか!」
もう一度、今度は左の尻が、パチーンと鳴った。
「ゴメンなさい。ゴメンなさい。ゴメンなさあーいッ!」
彼のズボンのジッパーを下ろす音が聞こえると、シーツに押し付けられた顔から「ふええぇ」と声をもれた。
半脱ぎの彼女にいきなり突き入れると、彼女はのどの奥でぐうとうなった。
濡れてない膣を引き裂いて、彼が強引に侵入していく。めくれ上がる痛みに、細い腰が逃げた。酒のせいで、ペニスの感度は下がっている。
シーツに付けた頭を片手で押さえつけて腰を引くと、めりめりと粘膜がこすれて痛んだ。痛みにうめく彼女に構わず突くと、子供の尻は逃げるように、右に左にひねりながら腰を浮かせた。
年端もいかない少女を強引に犯す気分に、彼はすっかり興奮していた。酔ってセックスをするとロクな事がない事は経験で知っていたが、この時は止める事ができなかった。
「お仕置だってのに、感じてるな!」
「あう、あうっ」
ずるずるめりめりと動かす内、すっかり彼女の中はいつもと変わらなくなった。そうなると、軽く前後に腰をひねって、彼の動きを受け入れるように合わせている。
「反省したか!?」
「はいっ! もちろんですう」
頭を押さえつけた手を戻して彼女の腰をしっかりつかむと、ゴンゴンと動かした。止めた腰の前で、彼女自身を強引にピストンして彼のペニスをしごいていく。何度も思い切り腰を引き寄せ、彼女の奥に突き当てていた。
「んぎいいッ!」
酔ったせいで、興奮は高かったが絶頂を感じる前に、彼の精子は放出された。興奮でさらに酔いが回り、急速な睡魔が押し寄せてくる。歓喜の射精を味わい続ける彼女の姿を見下ろしながら、彼はそのまま横に倒れこんだ。横たわるのに合わせて、江里奈はペニスを抜かれまいと、密着したまま横になる。のけぞって手を伸ばす彼女の手が首筋をなでるのを感じながら、彼はあっさりと眠りに落ちていった。悪酔いと疲労感と開放感が彼の中で渦巻いて、それでも不思議と彼は幸せだった。
目覚めた時、いつもと変わらぬ光景に、安永は少しとまどった。パジャマを着て、メガネはいつもの所に置いてある。
江里奈がしてくれたに決まっているが、パジャマまで着せるのは大変だったに違いない。目覚まし時計を見ると、まだ5時だ。昨日の出来事は、悪酔いのせいかあまりはっきり記憶になかった。
体の不快感に、朝風呂に入ろうと思い立ってベッドを出ると、ふと気づいてパンツの中を覗き込んだ。
彼はここ数日、ロクにシャワーも浴びずに仕事をしていた。当然彼の性器も汚れていたはずで、それで彼女をレイプしてしまった事になる。後悔しながら覗くと、そこはすでに、すっかりきれいになっていた。
相変わらず、彼女の後始末は完璧だ。なりふり構わない淫乱さを持つくせに、男に対する気づかいと手間を惜しまない所が、彼女の素晴らしい所だ。
彼はうれしくなって、鼻歌を歌いながら湯を張ると、朝日の中で気持ちよく風呂につかった。江里奈に少しひどい事をしたかなと思っていたが、目覚めた様子を見れば、彼女が彼をどう思ってるかは明白だ。
昨日の出来事を思い出しながらゆったりと湯を感じていると、戸口に人の影が浮いた。
「パパ?」
「おお! 江里奈か? 風呂入ってるよ」
「一緒に入っていい?」
「もちろん」
入ってきた全裸の江里奈は、少し心配そうな顔で湯船の脇に立つと、ぺこりと頭を下げた。
「ありがとうございました。これからも、えりなをよろしくお願いします」
「なんだ? かしこまって」
「きのうは、聞き分けのない子でした。それなのに、すてきなおしおきしてくれて……。えりな、幸せです」
彼は、真面目な顔でそう言う彼女を眺めながら、ぞくぞくする幸せを感じた。
「私と、一緒にいよう」
言ってから、まるでプロポーズのようだと恥ずかしくなった。彼女は、うっと泣きそうな顔をして、湯船に入ろうと足を上げた。
「こらこら、急がないで、ちゃんと湯を浴びなさい。体に良くないぞ」
「うん!」
ここには彼ら以外、二人を傷付ける何物も存在しない。前の妻や麗子の面影は遠く去って、彼の前にはただ、彼を信頼する9歳の女の子がいるだけだった。
続く