『カッコーの巣』
第一部「カッコーの雛(完結)」 Aristillus
13.
「あ、カウンセラーの遠藤先生でいらっしゃいますか? 安永です。ええ、お久しぶりです」
安永は、受話器に話しかけながら、隣の部屋にいる江里奈を見た。テレビを熱心に見ながら、時折菓子鉢に手を突っ込んでいる。微笑が浮かぶのを止めずに、電話口の向こうの、彼女の担当のカウンセラーに話しかけた。
「ええ、そうですか。それは良かった。うちの方でも、何も問題はありません。……ええ」
彼は、一つを除いて正直に話したつもりだった。江里奈は今ではすっかり精神的に安定して、問題を起こす事なく日々を過ごしている。学校でも、ごく普通の小学生として、いじめられたりもしていないようだ。
医者である彼は、彼女の体に残る虐待の跡に、できうる限りの治療をしていた。今では体の傷は消え、ピアスの跡も消えかけている。無理矢理大人になってしまった彼女の部分は、どうする事もできなかったが。
電話を置いて、江里奈に近付いていっても、彼女はテレビから目を離さなかった。
「カウンセラーの先生が、これからは一ヶ月に一回でいいってさ」
「ふーん。よかったあ」
安永は、床に座り込んでいる彼女の後ろに横になると、彼女の後ろから腕を回した。長袖Tシャツの裾から手を入れて、彼女の平らな胸をなでると、すべすべの肌に、彼女の乳首がころころと彼の手の間で転がった。
「なんで、えりなのおっぱいばっかり触るの?」
「イヤかい? 私は、江里奈のここの感触が大好きなんだ。何度だって触りたくなる」
「ふーん」
気にせずにテレビを見続ける江里奈の大きな乳首をつまんでさらに固くすると、たっぷりと転がして彼女の感触を楽しんだ。そうしながら、脇から新聞を取って読み始めた。
彼は安らかな気持ちで、彼女との繋がりを感じていた。しばらくたって番組が終わると、彼女がふと振り向いて彼にたずねた。
「ね、パパ、変な事、きいていい?」
「ん?」
「パパって、お医者さんなんでしょ? お金持ちみたいだし、せいさんがいるっていっても、ここは広すぎるし」
「そうだよ」
「でも、たまにしか仕事にいかないよね。……どうして?」
新聞を下ろすと、彼女の心配そうな顔が目に入った。
「子供の君が、心配する事じゃないよ」
乳首をつまむ指に力を入れると、彼女の顔が少しゆるんだ。
「やん、……ひょっとして、えりなのせい?」
何を心配しているのか気がついて、彼は新聞を置いて体を起こした。
「君のせいじゃないさ。そうだな……江里奈になら、話してもいいか」
彼女は、真面目な顔で彼に向き直った。
「私は、手術をして色んな病気を治す医者だったんだ。手術って、分かる?」
「うん、お腹を切るんでしょ?」
「そうだ。そうやって、何人も患者を治した。そのつもりだったんだ。でも、君が来るちょっと前に、失敗しちゃってね」
「えっ! 死んじゃったの?」
「……そうだ、救えなかった。手術の最中にね……、別に、間違えたわけじゃなかったが」
江里奈は、目を伏せてじっと聞いている。
「それはしょうがない。いつかこういう事もあるって、知っていたからね。でも、その患者は小さな女の子で、お父さんお母さんから責められてね……つらくなったんだ」
「かわいそう……」
「で、その病院をやめて、今では医者が足りない時に呼ばれるだけの非常勤になったのさ。今は、手術はしてない」
彼女の悲しそうな顔に、彼は手を伸ばして、ゆっくりとなでてやった。
「だから、江里奈を引き取る気になったのかもしれない。……まあ、暇だった方が、世話を焼けるしね」
明るく言ったが、彼女は顔を伏せたままだった。
「分かった。ありがと……」
「心配するな。そのうち必ず病院に戻るさ。だから今は、江里奈と一緒にいたい」
くいっと抱き寄せると、彼女は逆らわずに彼の首に腕を回した。
「えりなにできる事、ある? おまんこしよっか?」
「馬鹿……。今のままで、十分私の役に立ってるよ。ま、ちょっと困ったとこがあるけど」
「え? どこお?」
彼は、笑いながら少女の体を抱きしめた。ぎゅっと抱きしめると、暖かい気持ちが体を駆け巡った。
「今、きゅーんてなったよ」
「私もだ」
「あ、ねえ! えりな、気がついた事があったの!」
ばたばたと体を離すと、立った彼女は買ってやったばかりのスカートの裾をつかんだ。
「スカートって、おまんこするのに便利だね! ほらっ!」
ぴろっとまくると、彼女の真っ白のパンツがのぞいた。ついでにガニ股に足を開くのは、やり過ぎだ。
「江里奈って、ほんとにそればっかりだなあ……」
彼がため息をつくと、彼女はさらに言った。
「でもねでもね、これならパンツ脱げば、服を着たままできるよ! パパに抱っこしてもらえば、見られても、分からないんじゃない?」
その光景を想像して、彼は下半身に血が集まってくるのを感じた。
「こんど、ためしてみよ!」
「うん」
思わず答えて、彼は自分の言葉に笑った。
「でも今は、ちゃんと裸になってやろう。江里奈、ベッドへ来い」
「はい!」
「その前に、浣腸して来い。ビニールシートも忘れるな。今日は、全部の穴で出すからな!」
「ふにゃあっ、ありがとー!」
泣き笑いのような顔で振り返ると、彼女は自分の部屋へ駆けていった。
江里奈が身動きするたびに、粘液質の音と共に、耳障りなガサガサという音がした。
絶頂の余韻にひたったまま、たまにぴくぴくとしては、夢見るような無垢な表情と共に「うふっうふう」という声がもれる。広げられたシートの真ん中に寝ている彼女は、さまざまな液体にまみれて目をつぶったまま、仰向けに手足を投げ出していた。
彼女の性器には、大人の使う黒いバイブがしっかりと突き刺さっている。上に乗った安永のペニスを顔に乗せ、その根元の袋を口で丸呑みしたまま、はぐはぐと唇と舌で愛撫し続けている。
彼女の上で見下ろしている安永には、何回射精したか、記憶がなかった。
アナルに射精した後、彼女がかわいいおならの音と共に精液が噴き出すのを彼に見せてから、凶暴な気分になったのを覚えている。その後は、何度も彼女にペニスを使った気がするが、順序よく思い出すことはできなかった。
彼のペニスは硬度を保っていたが、すっかり精液は出し尽くしていた。ペニスの痛みに限界を超えて酷使してしまった事を知っても、彼にはそれほど後悔は生まれなかった。
呆けた表情で口をもぐもぐしている少女は、まるで哺乳瓶をくわえた赤ん坊のようだ。彼は、今この瞬間、この少女の髪の毛一本まで自分のものだという思いに静かに感動しながら、飽きずに彼女を眺め続けた。
ふと確かめたくなって、彼は口を開いた。
「江里奈」
「ふぁあい」
「江里奈は、自分が気持ちよくなるのと、私を気持ちよくさせるのと、本当はどっちが好き?」
陰嚢を吐き出すと、彼女は不思議そうな顔で目を開いた。
「どっちも」
「一番なのは?」
彼女は、べたべたの顔で眉を寄せた。するっと顔をすべってペニスが脇へ行くと、彼女の粘液まみれの唇が動いた。
「えりなね、パパにこうしてもらうために生まれたのかもって、思ってる。だから、どっちも」
「ふーむ、私は、うまくやったかな?」
「こんなに疲れたの久しぶり……。ものすごくうまかったよ。どうして?」
「君の、前のパパよりもかい?」
「え? そういえば、長い事考えた事なかった。うーん……」
彼女の口から本当の父の話が出なくなって、随分になる。わざわざ思い出させるのは愚か者のする事だと知っていても、確かめずにはいられなかった。
「今のパパのがいいよ。優しいし、えりなのしたい事してくれるもん」
彼が安心して微笑を浮かべると、それを見た江里奈は、いたずらっぽい表情で付け加えた。
「でも、パパは普通にばっかりしたがるから、えりなちょっと不満。そういうのは前のパパのが、考え出すのうまかったよ」
「……そうか」
下から優しくペニスの軸に舌を這わせる顔を眺めながら、彼は、自分の嫉妬心に火が注がれるのを感じた。
安永は、遠い親戚筋とはいえ、彼女の父親当人には会った事がない。当人を知らないせいで、彼の嫉妬心は、純粋に理想化された姿の男に対して向けられていた。
この子から、奴の全てを消し去ってやる!
微笑を浮かべたまま、彼は言った。
「江里奈は、私のものだ」
無心にうなずく少女は、彼の中の心の動きに、最後まで気がつかなかった。
14.
前の上司から紹介された病院の内諾を受けて、ようやくほっとすると、安永は、江里奈の待つ自宅へと向かった。
彼女が少し前から寝込んでいた風邪はほぼ治っていたが、今日もまだ、自分の部屋で寝ているはずだった。あせる気持ちを抑えて店に寄り、まっすぐに家へとクルマを飛ばすと、自宅のドアを開けた。せいさんに報告し、しつこいお祝いの言葉をかわしながら江里奈の様子を聞くと、彼女の部屋に向かう。ノックすると、向こうから待ちかねた少女の声が響いた。
「パパでしょ。入って!」
歩み入る彼に、江里奈はパジャマ姿のまま、体当たりでずどんと飛びついた。
「こら! ちょっと待て」
熱の後遺症でどこかぽやっとしてる彼女の額に手を当てて、熱がないのを確認し、口を開けさせ喉の腫れを見る。ようやく安心すると、彼は、彼女に仕事先が決まった事を告げた。
「うんっ、よかったね」
「いや、いい事ばかりじゃないんだ。なあ、江里奈」
ベッドに座らせると、彼は真面目な顔に戻って、言った。
「そうなると、私は家をあける事が多くなる。昼間はせいさんがいるからいいが、夕方から夜は、一人になる事も多くなる。心配なんだ」
「あ、そうか。……たしかにちょっと怖い」
「大丈夫? 一人で我慢できる?」
「うーん、ガマンする。でも、なるべく一人にしないで」
「うん。帰りが遅くなる時は、せいさんに夕食も一緒に取ってもらおう。ドアのカギはちゃんとするんだぞ。一応できる事はしておくから、心配しないでできるね?」
うなずく彼女を見ながら、彼は箱を取り出すと差し出した。
「なに、これ?」
「携帯電話。私がもう一つを持っているから、お互い話したい時はこれで話せる。メールもできるんだ。使い方は、私が教えるから」
「わー! ありがとう。クラスでも、十人くらいしか持ってないんだ。スゴイッ!」
さっそく開ける彼女を手伝って、テストしながら使い方を学んでいると、階下からせいさんが呼んだ。
「夕飯だ。起きて食べる?」
「うん!」
うれしそうに携帯を眺めながら、彼女は食事をした。忙しくなる前の、ほんのわずかの休暇だ。彼は、どうやって過ごそうかと頭を巡らしていた。
あり合わせの物でささやかなお祝いを過ごした夜、安永のベッドの中で、二人は珍しく、何もしないまま過ごしていた。
「そうだ。あやまらなきゃいけない事が、あるの」
裸の肌がするすると触れ合って、心地いい。
元気になった彼女が喜び勇んで乗り込んできたベッドで、彼は、「今日は私の好きなようにやる」と宣言すると、彼女を優しく抱き寄せた。そうやって、二人は寄り添ったまま、何もしないまま時を過ごしている。彼女も最初こそ不満そうだったが、今は満更でもない様子で、うっとり彼と肌をこすり合っている。
「何の事だい?」
「あのねー、一週間前に、ラブレターもらったんだ」
「へえー、それのどこが、あやまらなきゃいけない事なんだい?」
「えりな、すぐに破いて捨てちゃった。そいつったら、つっ立って動かなくなったんで、逃げちゃった」
「……そりゃ、ひどい事したな。でも、あやまるんならその子にだろ」
「バカ! えりなはパパのために、そうしたのに」
小さな指が彼の腹をつねって、彼はワザとらしい悲鳴を上げた。
「ごめんなさい」
「馬鹿……、でも、そこまでする必要はなかったと思うな。嫌いな子だったのか?」
「クラスの子なんて、子供っぽくて。いいおちんちんだって、付いてないくせにさ」
「それが、江里奈の基準かい?」
「そーよ。いいおちんちんは、パパのおちんちんだけ。そうでしょ?」
「そうだな……」
ぎゅっと抱きしめると、平らな胸に彼女の乳首がそこだけ当たる感触がする。すっかり固くなって、彼の肌に気持ちいい。
「ね、そろそろおまんこしようよ。まだあ?」
「まだ。だいたい、病み上がりに急に運動させるわけにはいかないだろう。元気になったって、今日ぐらいはじっとしてなさい」
「ずーっと一人で寝てたんだから。退屈でタイクツで、しょうがなかったんだもん」
「しょうがないだろ、うつるかもしれなかったし。だから、今日はこのままパパのベッドで寝ていいよ。私も寂しかったから」
「え? うわっ、はじめて! でも、寝るだけ?」
「大切な話がある。君の話だ」
「なあに?」
「私たちは、二人とも話し上手とはいえない。うまく言えるか分からないが、今日はごまかさずに話し合いたいんだ。聞くとつらい事があるかもしれないけど、これだけは分かって欲しい。本当に、江里奈は、私にとって大事な子だ」
「……うん」
「よし……君は、前のパパに教えられた事を、いまだに忠実に守っているね? 自分でも分かってると思う。気持ちいいからだけじゃなくて、そうしなけりゃいられないように、教え込まれたんだ」
真面目な顔の江里奈の背を、彼は優しくなで続けた。
「でも、もうその必要はない。なぜって、君が大きくなって、このまま大人になったらどうなると思う? 今は私の手の中にいるが、そこから出たら、もう一人で生きていかなきゃならないんだぞ。君が、男に都合のいい存在のまま大人になって、誰かにおもちゃにされるなんて、我慢できない」
「ちがう! そんな事ならないよ」
「私も、そんな大人の一人だ。君が許すからって、君の体をおもちゃにしてきた。だから、このままじゃだめなんだ」
「もう、えりなとしてくれないの?」
「ちゃんと、最後まで聞きなさい。本当はね、君も私も、今までは相手が欲しがってるものをあげてるつもりで、奪っていたんだよ。分かるかな?……だから、変えていかなきゃならないんだ」
「……どんな風に?」
「自分に嘘をつかず、奪う事で喜ばず、相手の気持ちをちゃんと分かって上げ、自分が与えたいものを与えてあげる。そんな人間に、なって欲しいんだ。私も偉そうな事は言えないが、君のためにそうなるよう、努力しよう。……難しかったか?」
「……よく分かんない、結局どういうこと?」
彼は、笑って彼女を持ち上げた。
「うーん、好きな人を、大切にしようって事さ。江里奈は私が好きか?」
当たり前のように大胆に受け入れ態勢を取って足を開く彼女を腹の上に乗せると、優しく微笑んで眺めた。
「好き、大好き……」
「その気持ちに嘘がないなら、私を大切にしてくれ。私は今日、好きなようにすると言ったよな? 今日の君は病み上がりだ。だから、私の番だ。欲求不満は私が解消してやるが、君は何もするんじゃない。いいな?」
「……うん」
彼がM字開脚で寝そべる彼女の足の間に入ると、風呂に入っていない彼女の体臭と共に、もう慣れ親しんだ彼女のあそこの匂いがつんと匂った。小学生にして牝の匂いをさせる性器だったが、ずっと爽やかで、本物よりも悪臭はずっと軽い。
赤く色づいた左右の乳首と性器周辺、その敏感な三ヶ所を避けて、彼の唇が這った。子供のきれいな肌でいる部分にキスを加え、彼女の反応を確かめながら進んでいく。彼女はじっと素直に、目だけ動かしていた。
「ここが心臓の真上。どきどきが聞こえるよ」
そのまま真っ直ぐ上に上がり、首筋を横からくわえると、フフと彼女が身もだえした。
「ああ、これいいかも……」
あごを反らす彼女に合わせて、ゆっくりと首の根元を唇でこすり、薄い皮膚の下で動く骨と筋肉を確かめながら、指を胸に這わす。乳首には触らない。
彼の太股で彼女の足をこすり、絡ませては離しながら、首の後ろに手を添えて、あごの下を攻める。全身で感じて、江里奈の声は甘くなった。
「えりなの体中、んフッ、愛されてる感じぃ……」
「分かるかい?」
左右の足の指を、指の股に彼の指を差し込むようにくすぐり、ふくらはぎと太股は、マッサージのように軽く揉みながらこする。下腹にキスをすると、彼女が甘い声でせがんだ。
「もういいよぉ。して」
腰を左右から押さえて、軽く持ち上げるようにはさむと、キュキュッと足の付け根をこするように腰がひねられた。はあふうという息は、かなり入り込んでいると彼に教えてくれる。彼女の割れ目が始まる少し上を指で押さえて、押してはすべらせるとへそまでなぞった。何度も大事な場所に伸びる彼女の手首をつかんでは、キスをして戻す。「いやだよう」という声に、彼は腹をなでながら言った。
「入れられなくたって、幸せだろう?」
「これじゃあ、イヤ。しあわせだけど、これじゃイヤなのう」
「イきたいか?」
「うん、はい、はいハイぃ!」
「でも、イくのは君だけだ。私はそれを見てるぞ」
「そんなあ……」
「乳首は、自分で触ってもいい」
今まで二人の間で、こんなにたっぷり彼の方から奉仕した事はない。彼女は彼の気持ちをちゃんと理解して、与えられる快感の海を、ただ幸せな表情でたゆたい続けた。
最後に、彼の右手の指先にローションを塗り、親指と人差し指以外の指で、彼女の膣を閉じるように、外から大陰唇を左右に押さえた。中には一度も入っていないのに、はさむとちゅっと粘液質の音がする。押すようにはさんでもむと、すぐに体に緊張が走った。
「あ……うん……ん……ん……」
モミモミとしながら、人差し指でクリの莢を軽くもて遊ぶと、うめき声が始まる。たまに肛門を外から押さえてもむと、ピクンとする。たっぷりともんでからクリに当てるスピードを速めると、彼女は挿入される事なく、ゆるやかに達した。
「……わたし、わたし、イってるぅ……」
「見てるぞ」
快感の波が引くまでたっぷりと指で遊ばれ、彼女は細い声で礼をささやき続けた。
明りの消えた中、パジャマを着た二人は再び布団の中にいた。安永の右腕は、全長に渡って江里奈の手足に絡みつかれて取られている。
二人は、お互い見つめあうこともなく、ただパジャマ越しに相手の温もりを感じ合っていた。
「ウソみたいウソみたい……、こんなに幸せ」
すっかり満足した彼女の声は、嗄れて細かった。
「私もだ」
「私ね、このまま死んじゃいたいって……思った」
「死ぬなんて、簡単に言うもんじゃないよ」
「そうね、じゃなきゃ、時間が止まっちゃえって。今も、ちょっと思ってる……。どうしたらいいか分かんないよ」
「……もう寝なさい。ずっと一緒だから」
「うん。ね、えりなとおまんこするって、そんなにいけない事?」
「そうじゃないさ。世間ではね、君みたいな子供とするのが、いけない事なんだ」
「えりなって、やっぱりヘンタイなのかなぁ……。だって、子供なのにするの大好きだし、パパになら、どんなにひどい事でも許しちゃうと思うから」
「私だって、これからもずっと君としたい。悪い事だと知っててもね。……許してもらえるかな?」
「ゆるしてなんて言わないで。……ウフッ、二人のヒミツって、楽しいね?」
「ああ……」
彼女の意識が、どれほど彼の言葉で変わったかは分からない。ただ、この淫乱な少女が、ただセックスを求めて彼を求める事はないだろうと思って、彼は満足した。
彼は、犯罪者になった自分をとうに認めていた。彼にとって、彼女は必要な存在だ。別に肉体関係がなくとも、彼は彼女を愛している。それがどんなに歪んだ関係でも、彼にはもう、彼女を手放すつもりはなかった。
実は彼は、「どうしたらいいか分かんない」と言われた時、「幸せは、周りの人に分けてあげればいい」と言うつもりだった。しかし彼には、どうしてもその言葉は言えなかった。
闇の中に彼女の寝息を感じながら、彼はただ胸の中で、一つの言葉を繰り返していた。
15.
安永はその日、自分でもあると思っていなかった感情に揺すぶられて、急いでドアを開けた。
「江里奈!」
少しして、はーいと声がすると、とんとんと江里奈が降りてくる足音が聞こえた。彼は、待ちきれずに階段へと向かった。
ただいまと言うのももどかしく、上はトレーナー下はパジャマのズボンといった格好の江里奈を抱きすくめると、ぎゅっと腕に力を入れた。
「おかえんなさあい。なーに? どうしたの?」
ほっぺたに軽くキスをしながらけげんな顔で離れようとした彼女を抱き上げると、彼は黙って居間に向かった。
「宿題してたんだよ。いったいなに? 大事なお話?」
彼は、ききたい事があったが、素直に言う事ができなくて悩んだ。それで、とにかく会話を始めた。
「宿題してたのか。……ちゃんと勉強はしてるかい?」
「テストはこの前見せたじゃない。えりな、ガンバってるよ。なんかあったの?」
「そうか……、ならいいんだ。……江里奈」
「はい?」
「ここの所、学校から帰るとすぐに出かけるそうだね。せいさんに聞いたよ」
「うん」
「どこ行ってたんだい?」
「うーん、最近は、川のそばのななめになってる土手の所で遊んでるよ。あそこですべるのが面白いんだー」
「……友達も一緒に?」
「うん、みんな一緒だよ。女の子ばっかりの時は、お花やクローバー探したりもするの」
「友達がいっぱいできて、毎日遊んでるんだね」
「なーに? えりなの事が心配?」
「い、いや、最近会う時間も少なくなったし、ちょっとね……。なにか、問題はないかな?」
「なぁんにも」
彼はため息をついた。
「よもや……、私たちの事を、誰かに話したりしてないな?」
「なに言ってんの! えりなバカじゃないよ! なんでわざわざパパを困らせる事、言うってゆーの!」
「ごめんごめん!……変な事をきいてごめんよ。心配なんだ。江里奈が私から……その、離れるのが」
「でも、毎日こうやって会ってるじゃない。パパはお仕事だし。……何がそんなに心配?」
「自分でもバカらしいって解ってる。……でも怖いんだ」
「パパらしくないよ。何が?」
彼は、ぎゅうと小さな体を抱きしめた。
「江里奈がこの生活に慣れて、色んな人と出会うのがだ。もう、私が必要なくなるのが、怖いんだ」
彼女は、少し考えると言った。
「……えりな、一つだけ方法知ってるよ」
「え?」
「でも、パパはきっといやがるから」
彼女は、自分の胸と股間を押さえた。
ピアスの事だと気付いて、彼はさすがにひるんだ。彼女の父親が彼と同じ気持ちでそうしたのかと思うと情けなくなって、嫌悪感に耐えられなくなった。
「そういう事じゃない……、もっとずっと江里奈といたい。江里奈を信じていたいんだ……。勝手だと思うけど、江里奈はずっと私の腕の中にいて欲しい」
江里奈は、悲しそうな顔で彼を見た。そっと彼の下半身に抱きついて見上げると、言った。
「ずっとそうじゃない。えりな、もうこれ以上あげるものはないの。口も、おまんこも、お尻も、みいんなパパにあげたよ。もうこれ以上、何も持ってないんだ。それとも、まだなにか、あげられるものがあるの?」
たった9歳の彼女に、彼の胸に渦巻く激しい感情をぶつけても、帰ってくるのは子供らしい一途な思いだけだ。彼女の精一杯の言葉に、彼は張り裂けそうな気持ちで、泣きそうになった。
悲しそうな顔をしている彼女を押し倒し、顔を押し付けて体中にキスの雨を降らせながら、彼は叫んだ。
「江里奈!」
彼自身が甘えるように愛撫するのを、江里奈はじっと見ていたが、そのうち笑い声を上げて彼に答え始めた。服の上からじゃれ合うように触れ合い、こすり合う遊びに、少女の笑い声がはじけた。
「江里奈、江里奈!」
「アハッ、パパあ!」
「かわいくてしょうがない。ああ、どうしたらいいんだ」
素早く彼のあちこちを触り、押し付けてくる彼の頭を抱きかかえながら、彼女も叫んだ。
「うれしいよ! パパ、パパ」
「変な事言って、本当に悪かったね。忘れてくれ」
「ベッド行く?」
体を離すと、うっとりした彼女の顔を見ながら、彼はそっと言った。
「宿題、途中なんだろ。行って来い。私は待ってるから」
「ひどーい!」
そう言いながら、彼女は階段に向かった。
「えりなのパパは、あなただけ! 覚えておいて!」
彼は、もうすっかり心のまま、微笑して彼女を見送っていた。
江里奈は、安永が風呂から出てくるのを、彼のベッドで待っていた。いつの間に着替えたのか、お気に入りのサーモンピンクのタートルネックセーターだけを身に着けている。彼がうれしさににやけると、挑むような目で彼を見て、話し出した。
「今日は、パパを安心させるために、おまんこする。いいわね!」
「ああ」
彼女はがらりとせつなそうな顔になると、腕を上げて彼に長いものを差し出した。見ると、学校で体育に使う紅白のはちまきだ。
「見えないようにして」
意味が分からずに彼女の突き出された顔と見比べていると、目隠しして欲しいと気がついた。
何をしたいのか察すると、彼は尊大な態度を取り、言った。
「よし、しばってやろう。目をつぶれ」
「うん」
「……と……どうだ、見えるか?」
「見えません。パパ、どこー?」
わざとらしい仕草に、彼はガウンを脱ぎながら離れると、彼女を追って立ち上がった。
首まで覆ったタートルネックのセーターからは、かわいいお尻がむき出しになっている。かわいらしい印象があるのに、ボディラインに密着して、全裸よりも数段肉感的で、いやらしい。
ぐるぐる回る彼女にそうっと近付くと、後ろから手を回して、セーターの裾から手を潜り込ませた。
「なにしてるんですかぁ、ああ、熱い指がおっぱいをいじってます。つまんで、ひねってるぅ、これはだれの手?」
彼は、黙って彼女ともつれあったまま、ベッドに座ると彼女を膝に乗せた。
「ああ、お尻になんかカタいのが当たってるう。えりな、なにされるんでしょう。こわーい」
そう言いながらも、彼を手伝ってセーターをたくし上げながら、すぐに足を開いてくる。
「誰が、足を開いていいと言った?」
「ごめんなさい」
ぴたりと足を合わせると、彼女の性器はただの割れ目になった。大事な部分がはさみ込まれて、子供のつるりとしたあそこにしか見えない。激しいギャップが、彼にはまた魅力的だった。
大きな乳首を引っ張ると、彼女はおおげさに悲鳴を上げた。たっぷりと指と舌で楽しんでから、小さい体を足の間に降ろす。彼がペニスをつかんで彼女の顔に向けると、すぐに彼女は唇の端に笑みを浮かべた。
「あ!? パパの匂いがします」
「どんな匂いだ?」
「えりなの大好きな、パパのおちんちんのとってもエッチな匂いです。ああ……」
すりすりと醜い肉棒を顔にこすりつける彼女を見下ろすと、髪をつかんで押し付けた。
「よく濡らすんだ」
「分かりました。……ああ、お尻に入れるんだ。えりなのちっちゃいお尻の穴に、入れるんですね」
「そうだ」
たっぷりとつばを出して、なすりつけながらもぐもぐとしゃぶる彼女を見ながら、彼は頭を押さえ続けた。いつまでも夢中になっている彼女を強引に引き離すと、口までよだれの線が繋いだ。
「もっとぉ……」
「ダメだダメだ」と言いながら、再びひざに抱き上げると、肛門にあてがって強引に突き込んだ。
「ぐわっ! 熱いっ、熱くて大きなものが入ってきましたあ!」
彼女のアナルを犯しながら、彼は言った。
「つばじゃ、やっぱりキツいか」
すぐに抜くと、かたわらからローションの大瓶をつかみ、さっと塗って再び挿入した。とまどっていた頃と違い、アダルトグッズを使う手付きになんの躊躇もない。冷たかったのか「ひゃっ」と叫んだ彼女も、すぐに滑らかになった出し入れに感謝しながら、彼に答え始めた。
「お前のまんこが、一緒になってパクパクしてるぞ」
「言わないでぇ……。恥ずかしいですぅ」
開いた足の中心に、先程と同じものと思えないような開ききったヴァギナがあった。つやつやとした小陰唇が盛大にはみだして、彼が突き入れる度にパクパクと開いたり閉じたりしている。今ではアナルでもいけるようになって、彼女もお尻が好きになり始めている。
後の入り口は突き込むたびにぎゅうぎゅうと締まって、ペニスのカリが引っかかると、そこでちぎろうとでもいうかの様に締め付けてくる。いくら感じても、締め付けが女性の自由自在なのが、アナルの魅力だ。
突き込んだまま膣の方にぐいっと二本指を差し込みこりこりと膣壁越しにペニスをこすると、すぐに彼女が悲鳴を上げた。
「ふひっ……、アアアアア……、ダメ、ダメぇええ!」
「なにが……ダメだって?」
「お、おかしくなっちゃうぅ……あ、アハハはははああッ!!」
ぎゅうとお尻が締まって、彼女が高く叫んだ。絶頂が収まり切らないうちに、ペニスを抜くと今度は膣に入れる。ぬるりとたっぷり濡れた粘膜が包んで、彼を迎え入れる喜びに膣がふるえた。
「お尻に入れたばっかりの、汚いおちんちんが、まんこに入っていくぞ。ほうら、いいのか?」
「いいよ……もちろん。パパのだもん。ああ……おまんこいっぱいぃ」
そう言いながらも、小さな腰は彼の上下動に合わせてグラインドしている。だらしない顔で必死に腰を振る彼女を見下ろしていると、すぐに激しい射精感が突き上げてきた。後ろから肛門に指を入れながら、彼は叫んだ。
「くっ、出すぞっ。お前は、私だけのものだ!」
「いいよ! アッ、ヒイイ……ヒイイイィ……」
奥まで突き入れて射精すると、彼女の声は、天上の音楽のように鳴り響いた。
ふるえるほどの快感に身をまかせていると、彼女の唇が動いているのに気が付いた。体を弓なりに反らせた口で、目隠しをしたまま何かをつぶやいている。顔をつけて、「なんだ?」と苦しい息の下で言うと、唇から「分かった? ねえ、分かった?」という言葉がこぼれた。
彼はたまらずに、その唇を自分の唇でふさいで、激しくキスをしていた。最初は顔をそらした江里奈も、最後には口を開け、彼を受け入れた。舌を絡め合いながら精液を流し込んだ後も、二人は長い事そのままで、ふるえながら抱き合っていた。
16.
児童虐待のサイコセラピストをしている遠藤佐知子は、気のない様子に見える江里奈に話しかけた。
「安永さんには話してあるけれど、これにサインすると、正式に養子になる事ができるの。お願いできる?」
かわいい服にスカートをはいた少女は、遠藤の目から見て、一年前とは見違えるほどだった。ハーフっぽい顔は以前からかわいい顔付きだとは思っていたが、今は陰気な影が消えて、自信にあふれて内面から輝いているようにさえ見えた。
「……何も訊かないのね。もう両親の事は気にならない?」
さらさらと書く江里奈に、遠藤は話しかけた。
「もう、会えないんでしょ?」
「いいえ、許可が出れば、会えるわ。でもね、江里奈ちゃんが会いたくないって言えば、もちろん絶対に会えない。江里奈ちゃんの居場所も教えないから、安心して」
「前のパパもママも、もういらないの。えりなには、今のパパがいるし、ともだちだってできたんだから」
居心地悪そうに椅子の上でもぞもぞする少女に、遠藤はかすかな疑念を感じた。
「いらない」というのは、9歳の子供にはふさわしくなかった。それで、遠藤はもう一度きいた。
「本当にいらないの? 今のパパは、そんなに好き?」
「あなたには分からないわ。わたしの体じゃ足りないぐらい、パパにカンシャしてるの」
「体?」
「あ、そのぐらいいっぱい、カンシャしてるって事。わたし、もう自分でなんでもできるし、何が正しいかだって、分かるんだから」
「そう……大人の男の人は、もう全然怖くないのね?」
「なんで? パパはやさしいよ。やさしすぎて、ちょっと不満になるくらい。他の人なんて、カンケーないでしょ?」
「……分かった。心配はいらないみたいね」
「あなたには分からないわ。わたしのパパは一人だけ」
にやっと笑った顔は、子供っぽくなかった。
外でタバコを吸いながら待っていた安永に、江里奈は駆け寄って抱きついた。服も髪もすっかりおしゃれになった彼女は、すっかり彼の好みに染まった姿で、彼を喜ばせている。
「ちゃんと、言えたか?」
「はい!」
笑顔で見つめ合うと、彼女はふとつらい表情をして、両腕を彼の首に伸ばした。
抱き寄せた彼の耳元で、「お尻が痛い」とささやくと、彼はあきれたように笑った。
「なんで黙ってたんだ。……じゃあ、しばらく座薬を入れて静かにしてないとな。無理しすぎなんだよ、君は」
「うん、パパがそう言うなら。……でも、口でしゃぶるだけなら、いい?」
彼がうなずいて、キスをしようとすると、彼女はそっと拒んだ。
「江里奈って、ほんとにキスはしたがらないな。どうしてなんだい?」
彼女は、恥ずかしそうに言った。
「だって……、えりなの口は、汚いから。パパのおちんちん専用だもん」
「馬鹿っ、こんな所でなんて事言うんだ」
「パパがきいたんじゃない」
彼はため息をつくと、気分を変えて話しかけた。
「……そういや、今度の誕生日のプレゼント、何がいい? 去年とおんなじは、カンベンしてくれよ」
去年の江里奈の誕生日に彼女が求めたのは、大人のおもちゃ一式だった。もちろんそれで済むはずもなく、彼は一日中、江里奈と共に地獄のような天国にいるはめになった。
あれからたった一年しか過ぎてない事が信じられない。二人にとってそれは、もう遠い昔の出来事に感じられた。
「今年は、普通に過ごしたいな……。映画を見て、お食事するの」
「うん、それはいいな。でも、それはプレゼントじゃないだろう」
「特に浮かばないよ。だって、パパはなんでも買ってくれるもん」
その時、くっきりと形のいい眉が上がった。
「あ、こんな事言っていいのかなあ。えりなね、ユビワが欲しいの」
「え?」
もちろん、おもちゃの指輪の事じゃないだろう。意外な言葉に、彼はしばらく考えた。
「やっぱり、いけない?」
「なんだって、指輪が欲しいんだい?」
「もっと、きれいになりたいの。大人みたいにお化粧だって覚えて、パパにきれいだって言われたい」
背伸びしたい気持ちは伝わってきたが、彼は断固として言った。
「指輪はいいが、化粧はだめだ。大きくなるまで必要ない」
「わっ、ほんと、本当に買ってくれる?」
「これから選びに行こう。江里奈の記念だからな」
「ありがと! パパ、愛してる!」
「馬鹿、今日から本当の親子なんだぞ。分かってるのか?」
「はい!」
その声は、彼の頭上に広がる春の空のように晴れ渡っていた。すでに、暗い影のかけらもないその声に、彼は満足した。
それで彼も、思わず彼女の耳に、初めての言葉をささやいていた。
彼女は、そんな事を言われるなど考えもしなかったように、きょとんと彼を見つめた。
「そんな事、言っちゃダメ。……だって、えりなはパパの娘、パパのものなんだもん」
彼女は、そう言う事を楽しんでいる。盲目的にそう言ったのではなく、助けを求めてそう言ったのでもない。彼女の瞳にそれを知った彼が小さくうなずくと、彼女は幸せそうに微笑んだ。
二人は、楽しそうに会話しながら、手をつないで再び建物へ入っていった。お世話になった人々に挨拶をして、本当の別れをするために。幸せそうな二人の姿を見て、親子でないと疑う者は、誰もいなかった。
終わり