「秋桜 −雨−」  人面石発見器


     0

 黒い骨を隠す秋桜の雪。
 やがて〈キミ〉は溜息を吐いて、足下の白い花を踏みつぶした。
 ボクは白い骨。
 〈キミ〉は螺旋階段を降り、秋桜はその乱舞を幻夢に隠す。
 ボクは白い骨。
 黒い骨に憧れ、いずれ砕け散るために〈キミ〉を見送った。

     1

「うッ…グスン…いやぁ…お、お家に帰してください…おねがい…します」
 フローリングの床に布かれた、広さにして二畳はあるマットレス。その上に、一糸も纏わない産まれたままの姿で仰向けに転がされた保住まなみ(ほずみ まなみ)は、自分を押さえつける五人の男たちが擦りつけてくる硬い五本のペニスの感触を、耐えられないほどの嫌悪を覚えつつ受け入れさせられていた。
 右頬。両乳首。へそ。左の足の裏。滑りのある先走り汁が、それらの部位を濡らしテラテラと輝く。
「俺…もう…」
 右乳首にペニスを押しつけて動かしていた男が、ドプッと大量の精液を吐き出して果てた。そして連鎖的に、頬、お腹、左乳首、足の裏に擦り付けていた男たちも、同様にして大量の精液を、まなみの十歳になったばかりの幼い肢体にぶちまけた。
「ひいッ」
 まなみは初めて見る精液とそのおぞましい温かさに、思わず短い悲鳴を漏らさずにいられなかった。青臭い異臭が鼻腔を刺激し、彼女は涙で濡れる瞳をぎゅっと瞑って顔をしかめる。
 フレームのない丸い形のメガネの下で、まなみの閉じられた大きな瞳から涙が頬を伝い、マットに零れた。
 自分の身体を濡らす「白くで粘りけのある液体」。その正体をまなみは知らなかったが、とても気持ち悪いと感じた。
 気持ち悪いとしか、感じることができなかった。

 下校途中。まなみは男たちに拉致され、〈ここ〉に連れ込まれた。
 〈ここ〉はまなみを拉致した五人の青年の内、その一人が住んでいるマンションの一室だ。
 このマンションは防音設備に優れていて、例えまなみが絶叫しようとも部屋の外に音が漏れることはない。いわば〈ここ〉は、完全に閉じられた空間だった。
 〈ここ〉に連れ込まれたまなみは、まず衣服を剥ぎ取られた。抵抗できるほどの力は、まなみになかった。相手は男五人だ。非力な少女に抵抗しきれるわけがない。
「やっぱメガネっ娘は、メガネつけてないとな」
 と、まなみはメガネと、長く真っ直ぐな黒髪を纏めているカチューシャだけをその身体に許され、その代わりに五本のペニスを裸体に擦りつけられることとなった。

「えぐっ…えッえッ…すん…ぐすッ…」
 細く薄く小さな身体に、ドロドロとまとわりつく汚れた欲望の汁を纏い、青のビニールで防水が施されたマットレスに伏せるように顔を押しつけて泣いているまなみの姿は、一端は萎んでいた男たちの欲望を沸き立たせた。
 強く掴むと折れてしまいそうな、細く脆い腰と手足。ほのかな膨らみを宿した胸の先端には、薄桃色の小さな乳首。なんの茂みも見られない、美しく、ぷにぷにとやわらかそうな、まったくの一本線で現わされた秘部。腰まである長くて真っ直ぐな、少女特有のやわらかさを保持した黒髪…。
 そんな「小さなメガネっ娘」が、自分たちの精液を身体中に滴らせて泣いているのだ。一回射精したくらいで収まるモノではない。こんなことは、準備運動にもならない。
 男たちは再び勃起したペニスを自らの手でしごき、脅え、泣いているまなみの小さく形のいい頭部へ、二発目を放出した。
 一発目より明らかに精液の量は減少していたが、ドロドロとまなみの艶やかな髪に染み込み伝っていく白い液体の動きに、男たちは下卑た嗤いを漏らして満足を示した。

     2

 シャワーでまなみの身体に付着した精液を洗い流し、男たちは「本番」に入ることにした。
 しかしそれに至るには、解決していない問題があった。誰がまなみの処女を貰うのかという、男たちにとってとても重要で重大な問題だ。
 「こういうこと」に馴れている男たちには、まなみの秘部を一目見ただけで、彼女が処女であると見抜くことができた。
 これまで男たちが拉致し陵辱した少女たちの中には、明らかにまなみより年下な少女(幼女と記すべきか)でも処女でなかった者がいたが、まなみのきれいな一本線は、彼女が自慰すらしたことがない事実を、如実に物語るに十分だった。
 結局男たちは、「それ」をジャンケンで決めることにしたらしい。まなみはその様子を覗き見ていたが、男たちがなにをジャンケンで決めているのかはわからなかった。
 だが、それも仕方ないだろう。そのようなことは、セックスという行為の存在すら知らないまなみにとって、想像外のことだ。
「っしゃあッ!」
 ジャンケンに勝利した男が奇声を発した。残りの男たちは、「クソッ!」とか「ズリーぞ」とかいう言葉で、悔しそうに勝利した男に羨望を投げつける。
「じゃあ。尻、決めよーぜ」
「ぜってぇ、尻は俺が貰う」
「ケッ…俺に決まってんだろ?」
 まなみには意味不明なことをいいながら、男たちが再びジャンケンを始める。
 その間にも最初にジャンケンに勝利した男が、
「じゃ、まなみちゃん。お兄ちゃんたちと、気持ちいいことしようね?」
 マットレス上のまなみに覆い被さった。
「きゃあぁッ!」
 男の両肩を押さえつけられ、上半身の身動きを封じられたまなみは、細い首と繋がった頭部を大きく左右に振り、それと同時に脚をバタつかせる。
「暴れんなって、調子コイてっと痛いめみんぞッ」
 覆い被さる男が恫喝した。まなみはビクッとして身をすくめ、身体を硬直させる。
「やればできんじゃねーか…そうしてれば、すぐに気持ちよくさせてやるよ」
 男が嗤う。「こわい」…と、思った。まなみは、これまでなにものにも感じたことがないほどの圧倒的な恐怖を、その男に感じた。
 男の右手が、当然のようにまなみの股間に滑り込む。
「チッ…濡れてねぇな」
 当たり前だ。こんなことをされて濡れるわけがない。
「バーカ。それがイイんじゃねーか。無理やりねじ込んでこそ、男ってもんだろ?」
 二度目のジャンケンにも負け、マットレスの側に座り込んだ男がいった。
「お兄ちゃんたちが、とっても楽しいことしてあげるからね」
 いつの間にか、男の一人がハンディカムカメラをまなみに向けていた。
 なにをされるのかわからない恐怖。そしてそれは、男たちがいうように「楽しいこと」でも、「気持ちいいこと」でもないだろうという想像。
「い…いや…いやあぁ〜っ!」
 まなみは、咽が擦り切れるほどの絶叫をあげた。
「おい、さっさとヤッちまえよ。オレ、早くそいつの小せぇケツに入れたくて、ウズウズしてんだからよぉ」
 どうやら二番目にジャンケンに勝利し、まなみの後ろを獲得したらしい男がいう。
「わかってるって」
 まなみを押さえつけていた男は答え、彼女の細い腰に両手をそえた。
「まなみちゃんの処女喪失シーン。ちゃんと撮れよ」
「いわれなくても撮るって」
 まなみの恐怖に引きつった顔を写すレンズ。まなみは、再び絶叫を発した。

 乱暴にまさぐられる秘部。痛くて気持ち悪くて堪らない。どんなに抵抗しようとも、男がまなみを放す様子は見られなかった。
 だがまなみは、力の限り抵抗し、必死で許しを懇願した。
「るっせぇなッ」
 メリッ…と、男の拳がまなみの腹部にたたき込まれる。まなみは目一杯に瞼を開き、肺が空っぽになるまで空気を吐き出した。
「静かにしてろって、すぐに気持ちよくしてやるからよ」
 息苦しさと苦痛から、まなみは薄い身体を痙攣させる。男に抵抗する気力は、欠片もなくなっていた。
「げっ…ゲホッ」
 咳き込むまなみの、仰向けになるとまったくなくなる胸の突起に男が吸い付く。
「…たす…けて」
 周りの男たちが嗤った。
「助けてだってよ」
「まだ助かるって思ってんのな。まなみちゃんは」
「バカだな」
 学級委員長を務める、学校では優等生のまなみ。これまでの勉強も、両親や教師の教えも、〈ここ〉では無意味でしかない。
「じゃ、穴開けするぜ」
 なにか重い物が、まなみの下半身にのし掛かる。熱いなにかが、短いスリットを割るようにそえられた。
 そして一気に、
 ビチイィッ!
 瞬間。まなみの視界が真紅に染まる。次いで、激痛がまなみを支配した。まなみは、自分の身体が裂けてしまったと感じた。
「ウッ…キツイ。こいつのマンコ、結構旨いぜ」
 結合部から零れる破瓜の証。男のペニスは、一気にまなみの最深部まで到達していたが、根本までは埋まっていない。まなみの膣穴に、男のペニスを全て受け入れるだけの深さはなかったからだ。
「ヒッ…いぎいぃ」
 言葉にならない激痛。内蔵に突き刺さる硬い棒の感触。苦しい。死んじゃうっ!
「どうだ、気持ちいいだろ? じゃ、もっとよくしてやるからな」
 告げると、男は落とした腰を引き、再び勢いよく落とした。
「ヒギュッ!」
 まなみが意味不明の悲鳴を上げる。男は構わず、先ほどの動作を繰り返す。まなみはその度に意味をなさない悲鳴を上げ、細い首と繋がった頭部を激しく左右に振った。
 その様子も、カメラのレンズが冷たく記録する。
「おい。まなみちゃんのマンコ、ちゃんと撮らせろよ」
「ちょ、ちょいまて。もうすぐだから」
 カメラ担当の男にいうと、まなみと繋がる男は一段と動きを激しく増す。まなみからはグッタリと身体の力が抜け、まるで彼女は、できのいいダッチワイフのようになっていた。
 と、男の腰の動きが落とされた形で止まり、
「ウッ…」
 男の声と共に、まなみは大きく背中を跳ねた。まなみの膣内に放出した男は、数回腰を前後させた後、まなみとの結合を解いた。
「…ほらよ。ザーメンまみれのマンコ、好きなだけ撮れよ」
 大股開きで横たわるまなみ。陰部は赤く染まり、パックリと開いた穴から血と精液の混合液を溢れさせている。
「すげぇ穴。子宮まで見えるんじゃねぇの?」
 カメラが悲惨な状態のまなみの秘穴を、ありのまま鮮明に記録する。
「おい、もういいだろ? ケツさせろよ、ケツ」
 順番をまってした後ろの獲得者が、カメラの男を押しのけてまなみを裏返しにした。男はマットレスに上がり、まなみの脚に腕を入れて持ち上げる。
 おしっこポーズで持ち上げられるまなみ。男はまなみを抱えたままあぐらで座ると、起立するペニスをまなみのアナルに当て、まなみを串刺しにするようにして下ろした。
「アグウゥッ」
 首を反らせ、まなみが小刻みな痙攣を始める。男は、
「こいつ便秘なのか? ケツん中、カチカチウンコでいっぱいだ」
 そう嗤いながら、ペニスを押し込むように腰を突き上げる。ムチムチと肉を拡げる嫌な音を発しながら、まなみの狭いアヌスに男のペニスが埋まっていく。
 と、まなみは排泄器官を埋められたまま、
 ぷしゃああぁあぁ〜っ!
 赤と白のまだらに染まる秘部のワレメから、放物線を描く黄金色の液体を放出した。それはマットレスを濡らし、被されたビニールに溜まる。
「やっぱ、ガキはすぐ漏らすよな。ま、そこがいいんだけど」
 いいながらカメラの男は、放物線を描くまなみを正面から記録していた。
 だが座位の男は、まなみの放尿にも気を取られることなく、串刺しにしたペニスを激しくシフトさせる。まなみは涙と鼻水と涎で濡れるだらしのない顔を露わにし、音もなく口をパクパクと動かした。
 ブチッ、グチイィッ
 結合部からの、耳を塞ぎたくなるような音。この男はまなみの前を奪った男より「耐久力」があるのか、その音は十分ほど続いた。
 やがてその音も止み、
「ほ、ほらよ。お待ちかねのチンポ汁だ、ウンコいっぱいのケツでたっぷり飲みなっ!」
 ガックリと首を項垂れ、男の動きに揺れているだけだったまなみは、直腸を灼く熱にエビ剃りになって跳ねた。
 放出を終えた男は、小便の水溜まりに向かってまなみを倒し、結合を解く。
 ビチャッ
 自らの小便に顔を浸し、膝を折ってうつ伏せになるまなみ。マットに当たり、斜めにずれるメガネ。長い髪に、汚水が染み込んでいく。すでにまなみの性器は閉じていたが、今度は肛門にパックリと穴が空いていた。
 充血した腸壁を伝い、茶色く変色した精液が零れる。それがマットレスに糸を引いて零れるとほぼ同時に、
 ムリュッ…むちゅむちゅブリブリ、ブッ、ぶりゅッ。ぷっ、ぶぴいいぃ〜ッ!
 固さを保ったままの排泄物が、まなみの開いた肛門から勢いよく飛び出す。その最後には、いっそ心地よく感じるほどの放屁音が室内に響きわたった。
 まなみは排泄臭に包まれ、
「たす…けて…」
 と、男たちには届かないほどの小さな声で発した。

 マットレスとまなみの清掃。それが終わると、残りの三人が一度にまなみに襲いかかった。
 絡み、一体化するまなみと男たち。まなみはされるがままに男たちを受け入れた。というより、受け入れさせられた。まなみには抵抗する手段はなく、抵抗する気力も失せていたからだ。
(…おうち…はやく、おうちにかえりたいな…)
 もうろうとする意識。まなみはなんとか、それだけを考えることができていた。身体の感覚はすでになく、痛いとか気持ち悪いというよりは、頭からつま先までジンジンと痺れているだけだ。
「やっぱ、ガキのマンコは最高だなッ」
「あぁ、女は中学まで。それ以上はゴミだ、ゴミ」
「俺は小学までだな。でも、五歳前後が一番だけど」
「マニアックだな、お前。やったことあんのか? 園児と」
「二回だけな。四歳と五歳。最高だったぜ」
「入んのかよ。そんなの」
「入るとかじゃなくて、入れんだよ。ブチブチいわせて。血とかスゲー出るぜ、お前らもやってみろよ」
「オレ、血とか嫌い。キモイじゃん」
 まなみは、なんのことだか理解できない男たちの会話を聞き流す。そんなことよりも、いつ家に帰してもらえるのかが知りたかった。
 帰りが遅くなると、父と母が心配する。飼い犬のマークの散歩はまなみの仕事だ。マークも、まなみが帰ってくるのを待っているはずだ。早く帰って、散歩につれていってあげなくてはならない。今日は宿題も出ているし、遠足の作文の提出も明日だ。クラスメイトの朔美に借りた本も読みたいし、大好きなアイドルが主演しているドラマも観たい。先週の続きがどうなるのか、この一週間ずっと気になっていた。
 だがそれらの心配ごと、やりたいことを消化するためには、まず家に帰らなくてはならない。〈ここ〉で、こんなことをしている場合ではない。
(かえして…おうちに。おねがいします…おうちにかえしてください…)
 だがまなみが「家に帰る」ことができるまでには、未だまなみにとって膨大な時間を必要としていた。

     3

 まなみが〈ここ〉に閉じこめられて、三日が経過した。
 その間まなみは、止むことない陵辱に心を閉ざしていった。考えることを止め、家に帰るという希望も捨てた。
 犯されては洗われ、洗われては犯される。まなみは、それだけの人形になっていった。
 まなみには、五人の男たちの区別がつかない。そんなものはどうだっていい。どうせ見分けがついたところで、犯されるのは同じだ。
 満足に眠ることもできずに犯される。性器、アナル、口、身体全体を犯される。糞尿を胃の中に詰め込まれ、精液を身体中に刷り込まれる。
 タバコの火を押し当てられ、タバスコを粘膜に振りかけられ、乳首やクリトリスといった敏感な部位に、針を突き刺される。
 与えられる食料は、糞尿や虫の死骸が混じった残飯。食べたくなくても、無理やり口に押し込まれた。吐き出すと、吐き出した物を再び押し込まれる。
 栄養価の低い食事。不規則で短い睡眠。まなみは日に日に衰弱し、肌も荒れていった。だがそんなことは関係なく、男たちの陵辱は続く。
「オラッ、なに寝てんだよ」
 いつの間にか、彼女の指定位置となったマットレスの上で眠っていたまなみの腹部を、五人の内で一番体格がよく、その上気性の激しい男が蹴った。まなみの後ろの処女を奪った男だ。
 まなみは「ゲホゲホ」と咳き込み、男たちがまなみよりも大切に扱うメガネの奥で、その虚ろな瞳を開く。
 苦しげに眉と眉の狭間にしわを作り、のっそりと顔をあげるまなみ。なにをされるのかはわからないが、取りあえず男に後ろを見せて四つん這いになる。
 男たちに対し無理に抵抗を見せたところで、乱暴なことをされるのは理解させらている。素直にこの体勢を取ることが、男たちと「つき合って」いくのに一番いい方法だと、まなみは無意識の内に学んでいた。
 まなみは洗われたばかりなのか、身体には湿った髪が張りつき、肌は汚れていない。使ったらちゃんと洗う。それが男たちのルールだ。
 取り返しがつかないほど壊さないということと、使ったら洗うこと、アパートの外には出さないこと。まなみの使用条件として男たちが決めたのはそのくらいで、他は自由にしていい。
 開いていてば好きなときに使っていいし、互いのプレイの種類にケチをつける者はいない。SMだろがスカトロだろうが、最後に洗いさえすれば誰も文句はいわない。当然、まなみは除外してだが。
 男たちにとってまなみは人間ではなく、欲望を排泄する便所だ。〈ここ〉に連れ込まれた以上、まなみはそれだけの物でしかない。
 どんなにまなみを犯そうとも、まなみにキスをする男がいないのが、そのことを如実に物語っている。
 男はズボンからそそり立つペニスを取り出すと、乱暴にまなみのアナルに挿入した。馴れてきた痛みとはいえ、やはり痛いものは痛い。
 まなみは、
「う…ぐうぅ」
 歯を食いしばって、直腸を擦る痛みを堪える。
 室内にぶつかり合う肉の音が響き、まなみは崩れそうになる体勢を維持するために身体を硬くした。そうしないと、今にも前のめりに倒れ込んでしまいそうだった。
 倒れてしまうと、なにをされるかわからない。少なくと、アナルセックスなどという楽なことでは済まなくなる。まなみは絶望に支配されていたが、辛いことより楽なことのほうがいいというのは、ありふれた日常という「懐かしい夢」の住人だった頃と、なんら変わってはいない。
 男の自己満足な行為に、まなみの細い身体と脆い骨格が悲鳴を上げる。自分の骨が軋む音が、彼女には聞こえた。
 一時間ほどをかけてまなみの後ろを二回と前を一回楽しんだ男が、まなみを洗って部屋に戻す。
 ガクガクと震える膝。ズキズキと痛む頭。
「これで、少し休めるかな」
 マットレスに倒れ込み、まなみがそう思った瞬間。
「まなみちゃん、空いてる?」
 最初のときにカメラを回していた男が、部屋のドアを開けて入ってきた。
「あぁ。今使い終わって、洗ったとこだ」
「ラッキー。タイミングバッチリじゃん。それじゃまなみちゃん。今度は、お兄ちゃんが遊んであげるからね」
 まなみは、
「もう、どうだっていい」
 そう思いながら、ボロボロの身体で四つん這いになった。
 この後もまなみはほとんど休みを与えられることなく様々な陵辱を受け、約六時間後、胃の中に自分とスカトロ行為を好む男の排泄物を詰め込んだままで、三時間ほどの眠りを得ることができた。

     4

「こいつ、完全に壊れちゃったな」
 胡座をかきその上にまなみを載せている男が、身体を揺すりながらいった。男のペニスは、まなみのアナルに根本まで突き刺さっている。
 だがまなみは、半分瞳孔が開いた目から涙を流しているだけで、拉致された日には目一杯に張り上げていた、「いやあぁーッ!」とか「いたいぃ〜ッ!」とか、男たちにとっての「心地よい声」は出していない。
「おい。そろそろ代わってくれよ」
「ちょいまてって…もうちょいだから…」
 男が腰の動きを速めと、それに伴ってまなみの身体が激しく上下運動を繰り返す。
 ガクガクと首が揺れ、湿った髪が少し重たげに動きを共にする。〈ここ〉に来てから、犯されて汚れる度にシャワーで洗われているため、まなみの長い髪が完全に乾いたことは、これまで一度もなかった。
「ウッ…っと。…ハァ…出した、だした」
 直腸の奥に射精した男は、まなみを前のめりに倒してペニスを抜いた。まなみの開いた肛門から、少し茶色くなった精液が零れだす。
「後ろは汚れてるしなぁ…まぁいいか…そろそろ飽きてきたけど前に入れるか」
 順番を待っていた男は、まなみを洗うのも面倒なのか、うつ伏せになっているまなみをひっくり返して仰向けにすると、覆い被さる様にして性器に挿入した。
 〈ここ〉に来たときは一本線だったまなみの股間も、一週間ほとんど休みなく繰り返された陵辱によって、その形が変わってしまっていた。小陰唇は伸びて外に出てしまい、堅く閉じていた膣口も、キュッと締まっていた肛門も、常に半開きになっている。
「なぁ…もうこいつ、飽きてきたな」
 まなみを犯しながら、男がいう。
「そうだな…次はどんなのにする? 俺は、もうちょい小さいのがいいんだけど」
 先ほどまなみを犯していた男が、汚れたペニスをウエットティシュで拭いながら答える。
「そうかぁ? これ以上小さいと、一回で壊れちまうんじゃねぇの? 裂けちゃうとそれまでだろ? 長持ちしないって」
 これは、部屋の隅でこれまで獲物にしてきた少女たちを撮した「記念写真」を眺めていた男の言葉。ちなみに、まなみの処女を奪った男だ。
「なにいってんだよ? こいつだって、まだ一週間じゃねーか」
「一週間もちゃ上等だって…なぁ?」
「そりゃそうだ。なんてったって、こんな小さな身体で五人もだもんな」
「あぁ」
「そうだ。こいつと同じ学校に金髪ちゃんいたじゃん」
「そうそう…確かアリスちゃんだ」
「アリス? どうぞお食べ下さい…って感じの名前だよな」
「決定だな。こんどの肉はアリスちゃんに決定。で、どうする? 明日にでも狩りに行く?」
「だな。そうすっか?」
「じゃ…まなみちゃんは、完全に壊しちゃっていいよな」
「お前、壊すの好きだな。そんなにイイか?」
「あぁ…あの裂ける時の、ブチブチって音がたまんねーよ」
「ハッ…変態だな、お前」
「お前だって、尻にしか入れねーじゃん」
「尻の方がイイんだってゼッテー。あの、ゴムみたいなキュキュってのが最高なんだって」
 どれが誰の言葉なのか、すでに感情も思考力も完全に奪われたまなみには理解できない。そもそも男たちの会話が聞こえていても、意味をなす言葉として認識することができなくなっている。
 まなみは自らの力では指一本も動かすことなく、ただ犯されながら虚空に暗い瞳を向けていた。

 次朝。まなみは〈ここ〉から離れた山奥にある、数年前まで不法に廃棄物が投棄さていた、今では近隣の住民も近づかない場所に、裂かれた下半身を染める赤黒い染みも露わな、一糸も纏わぬ姿で捨てられた。
 冷たい小雨が、一人捨てられたまなみの体温を奪っていく。
「…ぅ、ぁあ…」
 苦しげな、だが小さな呻き。発したまなみ自身にも、もちろん他者にも聞こえてはいない。ゴミに埋もれ、頭部だけを露出させたマネキン人形だけには、もしかしたらまなみの呻きが聞こえていたのかもしれないが、彼(もしくは彼女)にまなみを安全な場所に運び、温かな毛布や栄養のある食事を与えてあげることはできない。
 彼女(もしくは彼)にできるのは、まなみと共に小雨に濡れることだけ。
 やせ細り、骨と皮だけになってしまったようなまなみ。たった一週間。その間の変化としては、あまりに痛々しくて見るに耐えない。
 いったいどこで、まなみこのような「罰」を受けなければならぬほどの「罪」を犯したのだろうか。いったい誰に、まなみにこれほどの「罰」を与える「権利」があったのだろうか。
 変わり果てたまなみ。瀕死で小雨に晒される、わずか十歳の少女。光に祝福された未来が、きっと彼女をまっていたことだろう。
 だがこのままではさほどの時間を必要とせず、まなみの未来への路は断ち切られ、彼女は過去という、彼女にとっては無意味な世界の住人となってしまうだろう。
 「絶望」…あるいは「矛盾」というタイトルの彫刻のモデルを、まなみは自らの身体をもって務めているかのようだ。
 彼女には多くの幸福と少しの不幸に包まれ、笑い、ときに涙して、ごく普通の生をまっとうする「権利」はあっても、このような残酷なモデルを務めなければならない「義務」はなかったはずだ。
 一週間前とは別人のようなまなみ。だがメガネだけは、彼女が男たちに拉致されるまでのありふれた日常を生きていた頃のまま、その形で、小雨に濡れる感情の失せきったまなみの顔を飾っていた…。



終わり