「零距離恋愛」  Cedric Ryo Burnrage


俺と菜摘は幼馴染だ。いやそれ以上、兄妹なみに親密だ。幼稚園から現在の中二に至るまで、一緒にいない日のほうが少ないくらい、いつもくっついていた。
「お〜い。優紀〜。起きい〜」
「んあ……もう朝か……んんー!!」
カチン ガチャ
「こら〜 起きい〜!!」
「うおッ!?」
ズッ ゴン!!(こけて床に頭を強打)
「…………!」(声にならない声)
「も〜何しよんな(何やってんの)〜? ちゃんと布団で寝な」
「お前が入ってくるまでは布団の上でグッスリや。っててて……つか何で俺の部屋に入って来るんや! そもそも何で俺の部屋の鍵持っとんや!!」
「自分ん家の鍵持ってて当然やん。てゆうかウチが部屋に入っんが不服?」
「当たり前じゃこのスットンキョーが!! 立場考えぇ!! 年頃の男の部屋に易々と入んな!!」
「ええやん(いいじゃん) この前まで同じ部屋やったし」
「それがアカンから部屋もろぅたんやないか(もらったんじゃねぇか)!!!!!」
「あ〜ホラホラ 朝ごはんやで〜♪」
「話逸らすな!!!」


 俺――春日優紀は今現在幼馴染の如月菜摘の家に居候している。それも小1から今まで。何故そんなふざけたことになってるかと言えば、これにはマリアナ海溝以上の深い理由がある。


 親父とお袋は同じ飛行機で出会った。というのも、親父がパイロット、お袋がスチュワーデスとして同じ機体に乗ったわけだ。何不自由なく付き合い、結婚し、俺がこの世に生を受けた。とまぁここまではごく普通の家庭だ。問題はこれからだ。お袋はいうまでもなく一児の母だ。俺のそばを離れるわけにはいかなかった。しかし親父は国際便のパイロット、そう簡単に家に帰れるわけがない。幼稚園にあがるまで、俺はほとんど親父の顔を見ずに育った。幼稚園にあがった俺はすぐ菜摘と友達になった。しかし、お袋はというと、大好きな親父の顔を見ず、大好きな飛行機にも乗れず、そしてなにより俺の養育費について頭を悩ませた。航空会社には産休という名目で休んでいた。つまりお袋の収入は0だ。かといって幼稚園児の俺から目を離すわけにはいかないから仕事には出れない。つまりすべて親父に任せっきりになる。当の親父はというと、国際便で日本にいる事すら少なく、外国のホテルに宿泊していた。滞在費は馬鹿にならない。その上家族を養わなければならない。
 そんなプレッシャーから、一時は苦労してなったパイロットを辞めようかというところまでに切羽詰っていた。そんな中、菜摘の存在があがった。如月家とは俺と菜摘の関係や家も近いことからそれなりに友好関係である。もうこれしかないと踏んだ俺の両親はとんでもないことをしでかした。
 もうすぐ卒園が近い三月、その日は俺と親父、そしてお袋の春日家勢ぞろいで如月家の玄関に来ていた。物心つき始めたころで記憶も曖昧な中、これだけは一言一句はっきり覚えてる。
「どうかうちの優紀を居候させて下さい!!」
 入るなり俺の両親はそろって玄関で土下座してこう言い放った。当時の俺からすればなんのことだかさっぱりだが、今考えると異常すぎて寒気がすらぁ。だがさらに驚いたことに、その場に居合わせた菜摘の親父さんが
「ああいいですよ」
 すんなりOKを出したことだ。普通そんな簡単に納得できるモンでもねぇだろ。
 ま、そんなわけで俺の居候生活が小学校入学と同時にスタートし、現在に至るわけだ。



「いってきま〜す!!」
「いってきま」
「いってらっしゃい」
 さっさとメシも食い終えて登校。(菜摘の)家からそう遠くない中学校に徒歩通。小学生のころからの日課のような感じの二人並んでの登校。端から見ればりっぱな(バ)カップルな訳だが、菜摘は何らそんなこと気にはしていなかった。まぁ、俺も気にはならなかったが、最近はそうでもない。
「な〜な〜優紀〜」
「なんや?」
「最近ウチに冷たいやんかぁ(冷たいよね)?」
「俺は生まれたとっから(時から)こ〜ゆ〜性格やけん(だから)」
「そうやのうてぇ(そうじゃなくてぇ)……」
「まぁ気にすな。もう着くが(着くよ)」
「う〜ん……」
 本当に学校まですぐそこだ。予鈴鳴ってから家出ても全力ダッシュなら間に合いそうなくらい近い。
「おはよ!!」
「おはよ〜!!なっちゃん!!」
 横を通り過ぎる女子達が菜摘の肩を叩きながら玄関に吸い込まれていった。
「オッス!! 春日!!」
「ようなっちゃん!! 相変わらずお二人ラブラブで!!」
 横を通り過ぎる男子達が冷やかしながら駆けていった。
「おっはよ〜!!」
「んなんとちゃうっつーの(そんなのじゃないっつーの)……」
 いつもの様にノー天気にあいさつを返す菜摘に対し、ちょい不満を漏らす俺であった。
菜摘とは小学生のころから同じクラスだ。無論、今現在も同様に。偶然にしてはでき過ぎな訳なんだが、その所為もあってかなかってか一日中俺と菜摘は離れることがない。しかも菜摘の性格だ。休み時間になった途端に俺のとこに来るからますます周りの疑惑に拍車がかかる。
「優紀!! 大富豪やろ!!」
「ん?ああ、かまんよ(いいよ)」
 とはいってもはねつけるのは気が引けるから相手はするんだが。休み時間には大概ほかの女子を引き付けて俺とトランプゲームをするのが菜摘の日課だ。本来なら外でドッヂボールしたいとか言ってたが。
「ほい、上がり」
「ああ〜ん。優紀強いぃ〜……」
「春日君、彼女には勝たせてあげなアカンやん」
「ちゃうって。彼女やなくて妻や、つ・ま」
「はぁ? コイツ(菜摘)がぁ? 訳分からんこと言うな」
「も〜春日君、そんなに否定したらなっちゃんかわいそうやで」
「な? なっちゃん」
「え? う…うん……」
「やったら(だったら)全力で否定してやるわ」
「照れとるでぇ〜」
「しばくぞ」
「やめぇって優紀」
 授業が終わる度に女子共が茶々を入れに来るに腹を立たせつつも、いつものようにつまらん授業を受ける。退屈な授業も終わり、時は日が傾いた放課後へ。
「んじゃ待っといてな〜(待っててね)」
「おー」
 菜摘はバスケ部へ、帰宅部の俺はとりあえず図書室へ。別に帰ってもいいんだが、先に帰ると菜摘に何されるか分からない。それに幼稚園のころからずっと一緒に帰ってたから二人じゃないと違和感があるような気がしないわけでもなかったりするのだ。
 それなりに図書室は広いんだが、放課後ということもあって人は数えるほどしかいない。見慣れた風景を背に、いつもの窓際の席に陣取ってSFを読む。俺が入ってくると、中にいた奴ら(特に女子)がすぐさま茶々を入れに来る。毎度のことながら、コイツらは本気でウザい。
「なっちゃんと春日君て何でつきあいよん(つきあってるの)?」
「つきあいよらんから〜(つきあってないから)」
「ウソや〜。すっごいラブラブやんか〜」
「菜摘がくっついてくるだけやが(くっついてくるだけだ)……」
「でも、悪い気はせんやろ〜(しないでしょ)?」
「いい気もせん」
「つか、一緒に住んどんやろ〜(住んでるんでしょ)? 同棲やね〜」
「居候や。なろう思ってなったんとちゃう(なったのと違う)」
 お前ら何しに図書室まで来てるんだ? いい加減キレるぞ?
「も〜睨まんといて〜。怖いわ〜」
「じゃどっか(どこか)行け」
「おもっしょないわ〜(面白くないな)」
 ブーたれつつ離れる女子共を背に、また一人で読書に励む。自分で言うのも何だが、立ち読み平均2時間で約300ページというほど本を読んでるくらいだから、集中力にはそれなりに自信がある。一度読み始めたら本を読み終えるくらいの集中力がある。菜摘の部活待ちにももってこいの趣味だと我ながら思う。
 気がつけば時計の短針は5と6の間を指していた。そろそろ終わるころだな、そう思いつつ読み終えたSFを棚に戻し、体を後ろにそらしているとうまい具合に菜摘がきた。
「終わったで〜。帰ろ〜」
「ああ」
 7月の蒸し暑い夕方。ヒグラシがちょっとした涼を奏でる帰り道。
「あついね〜。太陽が恨めしいわ〜」
「のわりにゃしっかりバスケやっりょるでん(やってるじゃん)」
「そりゃ、すきやけんな〜(すきだからな)」
「ふ〜ん……」
 そんなハッキリ言ってどーでもいいよーな話をしてるうちにもう家に着く。
「たっだいま〜!」
「ただいま〜」
「お帰り〜」
 いつものようにお袋さんが迎えてくれる。あたりまえだが、帰宅したという実感がある。
「あついな〜、汗びっしょりかいて。風呂沸いとるで。どうする?」
「いっしょに入ろっか。優紀」
 ふざけんなよ、言いたくはなるんだがついこの間まではいっしょに入ってたりするからそうともいえない。
「遠慮するわ」
「ん〜、じゃウチが先でかまん(いい)?」
「かまんよ、俺と違ってお前は部活のあとやし」
「ありがと〜」
 そういうと菜摘は風呂場へ消えた。俺はそのあとからのぞく……ようなことはしない。別に見る必要ないし。
 ほんの一週間前になったばかりの自室に戻る。さっさと制服やらシャツやらを脱いでカゴにぶち込んでパジャマに着替える。これ以降家の外に出ることもないからパジャマで十分なわけだ。着替え終わって一息ついてるとしたから声が上がった。
「優紀〜、空いたで〜」
「お〜う、いくわ〜」
 菜摘と入れ替わりに風呂場へ。体中の汚れと疲れと苛立ちを一片に片付けられる場所が風呂。ジジイじゃねぇが思わず
「は〜、極楽極楽……」
 なんて恥ずかしいセリフが普通に言える位の安らぎの空間とひと時。
 心も体も洗われた俺を次に癒してくれるのが夕食。これまた料理の腕がいいお袋さんの料理ともなりゃなおのこと。
「「「「いただきます!!」」」」
 家族四人の暖かい食卓。俺は如月家の者じゃないが、もうほとんど家族だ。
「あ〜五臓六腑に染み渡るの〜」
「も〜父さん、オヤジみたいや〜」
「俺ぁもうオヤジやが」
「いやぁ親父さんは若いっすよ」
「褒めてもなんちゃ(なにも)出んぜ」
「事実っすよ」
「ハハハ」
 ふと、本当の親父とお袋はどうしてんだろうな、と思った。俺を如月家に預けた後には、月に4、5回程度しか会えないため、いろいろと心配になる部分も当然出てくる。しかし二人とも心配するなと言うし、月に4、5回は顔を出すから、いまはこの家族のなかでいることを考えていればよかった。
「ふ〜ごっそさん」
「お粗末さま〜」
 夕食が済むと俺と菜摘はリビングでテレビを鑑賞する。なんといってもゴールデンタイムだ。見逃せない番組がひしめいている。
「ホラホラァ、始まっちゃうよ、優紀ぃ〜」
「別にテレビは逃げんやろ……」
 リモコンを握るのは菜摘。つまり番組変更はすべて菜摘の委ねられる。とはいってもほとんど趣味が一緒だからこれといった苦労はないが。
 画面には最近流行りのお笑い界を映したバラエティ番組。ドラマよりも爆笑系のほうが性に合ってる。
「にゃははは!!! すっごーい!!」
「は〜よくまぁこんなん思いつくなぁ……」
「ね、おっかしーよねアレ!!! にゃはははははは!!!!」
「笑いすぎてむせんなよ」
 大爆笑して床を叩きながらヒーヒー言ってるほうが見てて楽しい。俺の狙いは実はそっちだったりする。
 退屈な授業とは違って楽しい時間ほどさっさと巡るもので気がついたら23:00を回っていた。
「も〜こんな時間や〜。ウチ先に寝るけん(寝るから)。おやすみ〜……」
「おやすみ」
 眠そうに目をこすりながら部屋を出る菜摘を背に、俺は番組のエンディングロールを見ていた。
「……?」
 違和感を感じた。しかしそれが何なのか分からなかった。気のせいか、そう自分の中で割り切ってテレビを消して自分の部屋に戻った。
「……」
 何か、どうも変だ。いつもと明らかに違う。特に布団が……。不自然に盛り上がってるし、たまに動いてたりする。
「……」
 ばさッ
「!!」
 剥いで見ると、案の定、菜摘がいた。
「……何しよん(何してるの)?」
「隠れてみた」
「ふ〜ん……気が済んだら帰れ」
「ねぇ一緒に寝よ!!」
「はぁ?」
 まぁたしかにこの前まではそうしてたがな。
「お前はガキか。一人で寝んか」
「一緒にねるんや〜!! ウチこっから(ここから)動かんけんな!!」
「あっそう。んじゃお前の部屋で寝るわ」
 そういって部屋を出ようとした。
「待ってよ!!!」
「待たん」
 扉を閉めようとした瞬間、
「……行かんといてよぉ……」
 いつもと違う菜摘の声に思わず振り返った。……泣いていた。
「何で……何でウチから離れようとするん?」
「いや……それは……」
「何か優紀最近おかしいやん。部屋分けてっていった日から……」
 確かにあの日以来俺は菜摘と距離を置くようになった。でもそれには理由があった。
「いやだから……それは」
 その言葉を遮る様に菜摘が言った。
「ウチはそばに居たいのに……ずっと……大好きな優紀の……」
「な……」
 ぽつりぽつりと漏れてくる言葉とともに、頬には伝う光が一筋……。
「ずっと好きやった……いまでも好きやのに……でも……でも……優紀は……」
 一筋、また一筋と増える涙、菜摘の本当の気持ち。しかし次には俺がもっとも恐れていた言葉が……。
「優紀は……ひくっ……ウチの……ボクのこと……っくっ……嫌い」
「違う!!!!!」
「!?」
 気がついたら叫んでいた。
「好きやけん(好きだから)……菜摘が好きやけん……だけん(だから)……」
 ついに打ち明けた自分の心。それと同時に決壊したダムの水の様に涙が溢れた。俺も菜摘も……。
「でも……やったら……なんで……?」
「それは……」
 それは一週間前だった。その日は退屈な授業の変わりに別の教科が入った。保健。つまり、性教育。そこで初めて、俺は男と女の体の作りの違い、セックスという行為、そして男女の交わりについて聞かされた。聴いた瞬間に菜摘が思い浮かんだ。いつも一緒にいて、一緒に泣き、一緒に笑い、妹のように甘え、姉のように叱る。いとおしい、ずっとそばにいたい人、菜摘。その時俺は気づいた。いや、知ってたのを知らないふりをしてたかもしれない。俺は、菜摘に恋心を抱いているのだと……。それと同時に、たった今習った性に関する知識、とくにセックスと言う行為による菜摘との接触がしたいという猛烈な性欲に駆られた。だがそこで俺は思った。本当に菜摘は俺のことが好きなのか?好きだとしてもそういう好きじゃないのかもしれない。だとすればセックスなんてしたならば一生菜摘の顔が見れなくなる。いやだ。菜摘に嫌われたくない……。
 その時はそれで抑えられたが、いつまた理性を失って菜摘に襲い掛かるか分からない。そう思った俺は自分の部屋をもらった。自分を縛る鎖を求めて……。
「優紀……」
 俺の横で聞いていた菜摘がそっと手を握った。
「ごめん……お前の気持ちも知らんで……」
「ううん……かまんよ……それにウチはいまうれしいんや……」
「何で……? 怒らんの?」
「うん……だって、優紀はボクのことを思ってそうしたんやろ?」
「うん……まぁ……」
「だけんね(だからね)……優紀はウチのこと……その……」
 握った手をもじもじとさせながらはにかむ。よく顔をみると真っ赤だ。
「その……あ……愛してくれてるんや……って……あ〜ん恥ずかしい〜……」
「菜摘……」
「でね……優紀……えと……」
 もう言わなくても分かった。もうお互いの気持ちが分かった今、言葉は必要ない。
「菜摘……」
「優紀……ん……」
 口付け。幾度となくしてきたお遊びのチューではない、恋人同士のキス。
「ん……んんん……んむ……ん…」
 初めてのディープキス。俺は菜摘の肩をもって、菜摘は俺の肩に手を置いて、舌を交え、唾液を飲みあい、互いの存在を確かめ合った。
「んん……ん!……ぷはぁ……はぁ……ゆうきぃ……」
 とろんとした目で見つめる菜摘。いつものボーイッシュな目ではない、女の子の目……。
「菜摘……大好きや……」
「ウチも……大好きやで……優紀……」
 再び重なる唇。無限とも感じられるひととき。
「はぁ……はぁ……ゆうきぃ……何か変やぁ……」
「どうした?」
「何か体の奥が熱いんや……ジンジンする……」
「菜摘……」
 もう俺の口からはそれ以外に意味をもった言葉は出ない。すると何か悟ったように菜摘は口を開いた。
「……しようか……」
「うん……」
 もう俺に理性はほとんど残ってはいなかった。あるとすれば、菜摘を押し倒したりしないことぐらいだ。
「パジャマ……脱がすで……」
「うん……」
 前のボタンを外して菜摘の上半身をさらけ出す。ブラジャーはしていない。小高い丘といったくらいのふくらみ。しかしその頂点だけはぴんと立っていた。
「何回も見られとるはずやのに……なんか恥ずかしいわぁ……」
「ああ……見てる俺も何か変な感じがする……さわるで……」
「うん……優しぃしてな……」
 といっても初めての俺。どうすればやさしいのかも分からなかった。とりあえずぴんと立つ乳首に触れてみた。
「ぁん……」
 ビクっと菜摘が反応する。
「ご……ごめん……アカンかった?」
「いや……大丈夫や……もっと触って……」
 そういうと菜摘は俺の手をつかんで自分の胸へ当てた。
「ゆっくり動かしてみて……」
「分かった」
 言われたように手全体でもみほぐすようにゆっくり動かしてみる。
「はん……んん……は……あぁ……」
「どう?」
「ちょっと気持ちいいわぁ……もっと……」
 切なげな声を上げる。何より俺の手で感じてくれることがうれしかった。
「わかった……いっぱいしてやるけん……」
 少し先ほどより大きく、そして力を込めて手を動かす。
「んん!……んはぁ!……あん……あ!……くぅん!……」
 甘い吐息が漏れる。その切ない喘ぎがさらに俺の性欲と高める。
「舐めるよ……菜摘……」
「ふぇ……? ひゃぁん!!」
 右手を菜摘の後ろに回し、左胸の先を舐める。
「はぁん!……ん!……はあ……気持ちええよぉ……あん!」
 乳首を舐め上げ、甘噛みし、舌で転がす。その間も左手は右胸への刺激を怠らない。
「んん!……はぁ……あん!……んん……」
 いつしか俺のベッドに押し倒した形になっていた。
「はぁ……んはぁ……はぁ……」
 肩で息をして、甘い吐息を漏らす菜摘はとても魅力的に見える。そして少し目を移すと、そこには菜摘の下半身が見えた。もう俺は止まらない。
「下も脱がすで……」
「うん……ええよ……」
 そういって脱がしやすいように腰を上げる菜摘。抑えきれない俺はズボンとショーツを一気に脱がした。いまや菜摘は何も纏ってない、菜摘そのものだった。
「脚……開くで……」
「ああん……恥ずかしいわぁ……」
 そういっても脚を開くのに抵抗は無かった。
「これが……菜摘の……」
 はじめて見た女性器に思わず目を奪われた。
「きれいや……」
「ホンマに?」
「うん」
 本当にそう思えた。真っ白の肌。そのなかにある一筋のスリット。そしてそこからは泉のように止めどなく流れる、菜摘の蜜が溢れていた。しゃぶりつかずにはいられなかった。
「ああああん!!!」
「菜摘!?」
 舌を這わせた瞬間菜摘が大きくのけぞった。
「ゴメン……大丈夫やで……なんかビリビリってゆうか……なんかすっごい気持ちようて……」
「すまん……」
「謝らんでかまんよ……それより……もっと……」
 俺の頭をつかんで自分の性器に押し当ててきた。そんな大胆な菜摘によってますますエスカレートする。
「ああん!! ひあ!! はあん!! んん!! ああ!!!」
 舌を這わせる度に大きく菜摘が動く。感じてくれてると思うと、菜摘が恋しくてたまらなくなった。
「んはぁ!! あああん!!! んん!! ひゃん!!!」
 甘酸っぱい菜摘の蜜を舌で掬い、ついに舌を中に進入させた。
「はああん!! ああん!! ゆうきぃ!! もっとぉ!!」
 さらに強く俺の頭を押す。俺は中の壁、周り、そして上部の尿道口、クリトリスへと舌を運んだ。と同時に菜摘の反応が変わった。
「ああああ!!! そこぉ!! ああん!! あん!!! んんん!!」
 反応がひとしきり強くなった。すかさず俺はクリトリスを基点にその周辺を愛撫した。
「はあん!! あっ!!! ゆう……きぃ……!! なんか来るぅ……!! あん!!……はん!! 来るよぉ!!!」
 絶頂が近いと感じた俺はクリトリスを甘噛みした。
「ひゃあん!!! 来たぁ!! よぉ!!! ああぁぁぁぁぁあああああああん!!!!!」
 全身で仰け反り、ヒクヒクと痙攣したかと思うと、プツンと糸の切れた人形のように落ちた。初めての絶頂。
「っはぁ……はぁ……ふぅん……」
 先ほどにも増して大きく肩で息をして、トロンとした目つきで俺を見る菜摘。すると少しニヤケた菜摘が、
「……今度はウチが優紀を気持ちぃしてあげる……」
 そう言うとふらつきながらも上半身を起こすと、俺のパジャマを脱がし始めた。
「お……おい……」
 何もかも初めての俺は今まで本能だけでしてきたようなものだからこの菜摘の行動が理解できなかった。
「動かんといて……ウチに任せて……」
「……」
 さっさと上半身を脱がすとすぐに下半身に移った。
「な……ちょ……」
「ウチの裸見とって優紀はウチに裸見せてくれんの? ズルいやん……」
「分かったよ……」
 ついに観念した俺は自らズボンとトランクスを脱いだ。これでふたりは完全に生まれたままの姿になった訳だ。当然、俺のモノは東京タワーのごとく天井を仰いでいた。
「うわぁ……優紀のっておっきい……」
「そ……そうか……」
「んじゃ、頂きま〜す……はむ……」
「え?」
 何のためらいも無く菜摘は俺のを口に咥えた。それもアイスキャンデーを舐めるかのようなとても淫靡な笑顔で……。
「う……あ……な……菜摘……」
「んむ……むぐ……ん……ふぃもふぃいい?……ふむ……」
「うん……菜摘……」
「んふふ……んぐ……んむ……ん……」
 とても言葉では言い表せられないような快感が全身を走った。ただでさえ敏感な所に加え、今までの俺の菜摘への愛撫や今俺のモノを咥えてるのが菜摘だと思うだけであっと言う間に射精感がこみ上げてきた。
「あ……ヤバイ……菜摘ぃ……出る!!」
「ん!!」
 びゅる!! びゅく!!
 ほとばしった俺の精が菜摘の喉を打ち付ける。それでも菜摘は離さなかった。
「う……うう」
 びゅっ!! びゅびゅっ!!
 なおも続く射精。このまますべて搾り出されるかと思うくらいの量を吐き出してやっと俺のモノはおとなしくなった。
「だ……大丈夫か……菜摘」
 その俺の質問に対し、口いっぱいに俺の精をためた菜摘はコクンと頷くと、
「んく……んく……ん……っはぁ……」
 一滴もこぼさずにすべて飲み干した。
「へ……平気なのか? 飲んでも……」
「うん……優紀のやもん……平気やで……」
 先ほどの様な笑顔。愛らしくもあり、淫靡でもある魔性の笑顔を見せながら俺のベッドに上に横たわった。
「えへへ……さぁ……ここからが本番やで……優紀……」
「ああ……」
 それが何を意味するのかは俺にも分かった。ついに菜摘と一つになるんだ、と思うとさっき無駄に精を吐き出した俺の愚息はまた天井を仰いでいた。
「元気やなぁ……ホラ……はよぅ……」
 そういいつつ菜摘は自分の足を開いて手招きをしていた。
「まぁ、焦るなって……」
 そういって焦ってたのは俺だった。何しろ初めてだ。実際のところどうして良いか分からなかった。でも同じ初めての菜摘は妙に落ち着いていた。
「ホラァ……ここやで……」
 俺のモノとついでに主導権もつかんだ菜摘は自分のそこへ俺のモノをあてがう。
「ごめん……菜摘……入れるで……」
「かまんよ……来て……ゆっくりな……」
「分かった」
 そのままゆっくりと腰を進めた。菜摘が持っているから入り口には難なく入った。しかし難関はここからだった。
「あ……あぐ……うう……」
 今までの声とは一変、とても苦しそうな声に変わる。恐ろしくなった俺は挿入を止めた。「大丈夫か!?」
「ゴ……ゴメン……ちょっと痛かって……大丈夫や……続けて……」
「でも……」
「ええけん(いいから)続けて!! ここまで来たんやけん(来たんだから)止めんといて!!」
 いつになく必死な叫び。その目と言葉から俺は菜摘の決意を見た。菜摘が覚悟決めてるのに俺が逃げてどうする!!
「ゴメン……俺……浮かれすぎとったな……もうやめんから……」
「うん……ウチは大丈夫やけん……ね……」
 菜摘は笑った。
「行くぞ」
「うん」
 自分と菜摘に合図を送り、再び挿入を開始した。もう途中で止めたりはしない。
「う……うう……」
「ぐ……が……あん……んん!」
 狭い中を押し広げて進んでいくのが分かった。菜摘の中はかなりきつく、痛覚に変わるくらいに締め付けてきた。そして外では必死に痛みに耐える菜摘が。爪が俺の背中に食い込み、目からは絶えず涙が溢れていた。
「あぐ……! うう!……んんん!! あぎ……」
「菜摘……菜摘ぃ!!」
 たまらず上からそのまま菜摘を抱きしめた。それに答える様に菜摘もさらに強く俺にしがみついてきた。そうした直後、俺の侵入が阻まれた。
「菜摘……」
「うん……優紀……」
 俺のモノはすべて飲み込まれた。挿入時とは違う感覚がモノを通して全身に伝えられた。
「ついに……ウチと優紀……一つになったんやね……」
「らしいな……」
「うれしい……優紀と何もかも一緒になれたんや……」
 また新たな流れが一筋。しかしそれは暖かい、安堵の涙だった。
「ごめんな……菜摘……痛かったやろ……?」
「ううん……いやな痛みやなかったで……優紀のがウチの中に入って来よる(来てる)んやってな……」
「菜摘……」
「優紀……」
 つながったままでの初めてのキス。本当に全て何もかも一つになった瞬間。
「ん……優紀……もう動いてもええよ……」
「分かった……でもな……」
「え?」
「……多分すぐ出ると思う……」
「……ぷ……」
「笑うな……」
「だって……んふふ……」
「しょうがねえじゃん……菜摘ん中が気持ち良すぎて今にも出そうなんだから……」
 これはなんともなせかいが偽りようのない事実だった。
「ふふ……ええよ……ウチで好きなだけ気持ちぃなって……」
「うん」
 よく分からないまま、とりあえず腰を引いた。
「うああ……」
「あああん……」
 ズズズズ……。
「やば……ホンマ出そう……」
「なんかウチもすごい気持ちええ……」
 半分くらい抜いたところでまた入れる。
 ズズズズ……。
「あくぅ……」
「はああん……」
「よ……よし……なんとなく動きは分かった……」
「いける?」
「ま、なんとか……」
 先ほどの動きを繰り返す。なんともぎこちないピストン運動。
 ズップズップっ……。
 パンパンパン……。
 いやらしい出入りの音に互いの肌がぶつかる音に、早くも性感が高まる。
「くぅ……ん……う……」
「あん!! んん!! はん!! あっ!!!」
「あ……う……もうだめ……出る……」
「はっ!!! ああん!!! ウチも……んんん!! もう…! イクぅ!!!」
「菜摘ぃ!!! う!」
「優紀ぃぃぃいい!!!」
 びゅびゅっ!! びゅく!!!
 本日二度目の射精&オルガスムス。膣を通り越してそのまま子宮に届きそうなくらいの勢いで精を打ち出す。
「はぁ……はぁ……うぅ……」
「んんん……んはぁ……あうう……」
 二人とも全力疾走した後のような息をしていた。
「はぁ……お腹ん中に優紀のがいっぱいや〜……なんかあったかい〜……」
 そううわ言のように菜摘がつぶやく。
「次からはもうちっとがんばらなアカンのぉ……」
 そう言ったのを最後に意識は闇へ落ちて行った。



「……ゆうきぃ〜……重いわ〜…………」
 翌朝。俺は下から聞こえるうめき声で目を覚ました。
「……んあ……?」
「……おはよ〜……ゆうきぃ……」
 状況を把握し切れてない俺のすぐ隣に菜摘の顔があった。
「…………うおッ!?」
「あん!! ちょっとも〜何なん?」
「え〜っと……」
 布団の上。俺と菜摘。朝。二人とも全裸。
「そんまま(そのまま)寝てたか……」
「うん、そうやね……」
 昨日の夜の記憶がフラッシュバックされる。
「ウチら一つのまま寝よったんやなぁ……」
 妙にニヤケた顔で菜摘が言った。
「とりあえず、着替えよ」
「そうやね……ああん!!!」
 入れっぱなしだったモノを抜くと急いでトランクスを履く。
「えへへへ〜……」
「どしたん(どうした)?」
「ん? いや、優紀とつながっとった証拠や〜思って」
「そうやな……」
 ふと視線をそらすと、先にカレンダーと時計が見えた。え……?
「土曜日の……8……時……37……分……?」
「え゛? うそぉ!!」
 目にも留まらぬ速さで菜摘が振り向く。
「うわー!!! ヤバイ!!! 今日朝練あったんやー!!!」
「うお!!! まずいぞ!! 急げ!!!!」
 全裸のまま菜摘が部屋をすっ飛んでいく。着替え終えた俺も後に続く。
「菜摘!!! 荷物チャリに積んどいたぜ!!!」
「サンキュー!!!!」
 慌しくユニフォームに着替えた菜摘が自室から出てきた。
「昼にメシ届けに行くけん!!!(行くから)」
「OK!! あ、優紀!!!」
「何や!!! わっせもん(忘れ物)か!!?」
 チュッ
「んふふ、じゃいってきまーーー!!!!!」
「お……おう、いってら……」
 言ったときにはすでに姿はなかった。俺は黙って自分の唇に手を触れた。
「……ま、えっか(いいか)……」
 そうして俺はいつものように朝食を摂りに台所へ向かった。


     End













     あとがき
「どうも春日優紀です。零距離恋愛、楽しんでいただけましたか?」
「如月菜摘です。って楽しめた人って少ないんじゃない?」
「まぁな。この作者素人だからなぁ……」
「てゆうか方言で書くのってアリ?」
「う〜んまぁいいんじゃないの?」
「楽観的だよね、優紀って」
「っとそんなことより次回予告しなきゃ」
「次回予告って次回なんてあるの?」
「あるんじゃねぇの? この作者のことだし……」
「ま、そうね……」
「「それでは次回『持ちつ持たれつ……』お楽しみに!!」」
「つか優紀って早漏?」
「違う!!!!」