『幽かにくゆる煙の影』

   「第五話 縁の交点、ふたたび(前編)」  海並童寿



 がちゃ、と鍵が回り、扉が開く。
「ただいまー」
 疲れ切ったその声に、
「お帰りなさい、恭介さん」
 蛍はすいっ、と玄関先へ恭介を出迎えた。
「今日はどうでした?」
 尋ねる蛍に、
「運動不足に引っ越しの手伝いはこたえるなー。今日は銭湯行ってくるわ」
 そう返して、浴室からタオル石けんの類をごそごそと取り出す。
「あ……だったら、私も行きたいな……」
 呟く蛍。
「行ってどうすんだ?言っちゃ悪いが、お前の場合湯に浸かってもどーしよーもないだろが」
「ええと……その、銭湯の前で待って、髪が冷えて……」
「お前一体何才だ……?」
 恭介が呆れた様子でぼやく。
「あら、最近リバイバルしてるんですよ。グループじゃなくて歌手個人ですけど」
 蛍は楽しげに『神田川』を口ずさんで見せた。
「やめれ。何となくだがそれは洒落にならん」
 脱いだ靴をまた履いて、
「じゃ、ちょっくら漬かってくる」
 恭介はひょいと手を挙げて扉に手を掛けた。
「はい、行ってらっしゃい」
 ばたん、と扉が閉じる。
「……もう」
 蛍はため息を一つ落とすと、不意に沈んだ表情をした。
「そんなことないって信じたいけど……でも」
 蛍はそうつぶやいて、軽く唇を噛んだ。


 その日の夜。
「んじゃ、俺寝るわ。明日は昼から憑き物落としの依頼入ってるから、手伝い頼むぜ」
 そう言って、恭介はごろり、といつものように適当な床のスペースを探して身を横たえた。
 その枕元に、すい……と蛍が寄ってきた。
「ん、どした」
 恭介は怪訝な顔をした。一時のように極端に天井に寄って寝ることはなくなった蛍だが、かと言ってこれほど近寄ってくるのは珍しい。もっと珍しいことに、蛍は寝間着姿で立っていた。恭介の目の前には蛍の足がある、という寸法である。
 その足下に、何かがぱさ、と音を立てて落ちた。
(なんだこりゃ。……帯?)
 更に衣擦れの音を立てて、ぱさり、と布地が落ちる。
 ついでに、恭介の額からも冷や汗が一つ落ちた。
 おそるおそる恭介が顔を上げると、そこには予想通りのものがあった。
 パンティ一枚を身につけたきり、両手で胸を隠して立ちつくす、蛍の姿。
「蛍……?何やってんだ……?」
 我ながら白々しいとは思うが、一応尋ねてみる。
「恭介、さん……」
 蛍の声が若干かすれている気がした。
「わ、わた、私、を……だ、抱いてくださいっ」
 そう言って、いきなりその場にぺたん、と正座する。飾り気のないパンティの三角形、その下着よりも白い脚、両腕で隠しながらも少しこぼれ出る胸、そして真っ赤に染まって目を閉じている蛍の顔、が恭介の視界に入る。
「お、おかしくないですよね?女の子からお願いしたって、変じゃないですよね?」
 わたわた、と蛍がたたみかける。
「変じゃ、ないけどな、そりゃ」
「……良かった」
 ほっ、と心底安心したように息をつく。
「なんでまた、いきなりそう来るんだ?」
 恭介がそう言うと、
「いきなり、って……それは、あの、確かに私、抱いて下さいなんて今まで言ったことないですけど、でも……恭介さんに好きだって言ってもらってから、もうずいぶんになるんですよ?」
 蛍は言葉をほとばしらせた。
「そんなはずないって分かってても、いつだって怖かったんです。確かに恭介さんは私のことを好きだって言ってくれましたけど、でも、私の体まで本当に愛してくれているのか、どうかって……あの人だけならともかく、私、やけで男の人と寝てしまったりしましたし」
(つーかあれ、やけだったのか)
 妙なところに恭介は胸中、ツッコミを入れた。
「恭介さん……私のお願い、聞いてくれますか……?」
 蛍は目をきゅっと閉じて、微かに震えていた。
 恭介は……10秒迷って、覚悟を決めた。
 上体を起こし、いきなり蛍の唇を奪う。
「ん、むっ?ん、んんんっ」
 驚いたらしい蛍に、軽いキスを何度も繰り返す。
 目の前の蛍の顔に向かって、
「……悪かった。いや、単純に俺に意気地がなかっただけの話さ」
 そう、弁解する。
「お前にとっちゃ、この手のことはやっぱ、トラウマだと思って、な……済まん。今度はお前に先に言わせちまった」
 すると、今度は蛍が恭介に唇をぶつけてきた。そのまま恭介の背中に手を回し、強く唇を吸う。
「ん、んふぅ……」
 恭介の唇をちょん、ちょんと可愛らしくつつくものがあった。唇を開いてやると、おずおずと蛍の舌が、恭介の口の中に入り込んでくる。それを自分の舌で出迎え、くにくにと絡め合う。そっと押し返し、今度は蛍の口の中で舌を絡める。
 唾液がしたたるほどにたっぷりとお互いの舌を求め合って、二人はどちらからともなく唇を離した。
「これは男の甲斐性って奴で、一応言わせてくれ……蛍。お前が、欲しい」
 恭介の言葉に、
「……はい。私も……恭介さんが、欲しい……です」
 蛍は頬を染めながらも、はっきりとそう答えた。


 改めて、恭介は蛍の体を見た。
(今更だけど……こうして見ると、小さいな……)
 どこが、というのではない。27才の男にとって14才の少女の体は全体に小作りに見える、ということである。華奢で、迂闊に扱うと壊れてしまいそうな……という形容がぴったり来る。
 いや、2カ所だけ、むしろ包容力を感じる部分があった。今はまた腕で隠されている、蛍の胸のふくらみ。
 先ほどキスした際、夢中になる余りふにゅ、とそれは恭介の胸板に押しつけられていたのだが、その感触は、
(──触りたい)
 という男の欲望を強烈に掻き立てた。
「蛍……」
 そう声を掛け、そっと腕に手を乗せる。すい……と、蛍の両腕が下り、ふよ、と揺れながら乳房が姿を見せた。
 そのまま、肌に手を置く。ふわり、とした女性特有の柔らかな感触が恭介の手に伝わった。
「ん……」
 ぴくり、と蛍の体が震える。
 恭介はやんわりと、手の中の塊をこね回した。
「はっ……はふぅ……」
 甘やかな吐息が、切れ切れに蛍の口から漏れる。
 手のひら全体で乳房をもてあそびつつ、その頂点に微妙に力を加える。
「ふぁ……」
 蛍が軽くのどをのけぞらせた。
 少しずつ、ふくらみの頂点が固さを増してくるのが分かった。恭介は手のひらを乳房の下側に移し、たぷたぷと揺するようにしながら、親指と人差し指で乳首を軽くこねた。
「あ、あぅっ!」
 蛍の体が少し強く震えた。恭介はなおも続けて乳首をこりこり、とつまむようにいじる。
「く、うう、ああぁ、あ……」
 いやいやをするように小刻みに首を振りながら、蛍は可愛らしい喘ぎを漏らし続けた。
 しばらくそうして、恭介が乳首を重点的に責めていると、
 ぴゅ。
 薄いクリーム色の液体が乳首の先から飛び出した。
「あり?蛍、これ、その、母乳……か?」
「……え?」
 うっとりとした表情で、とろんとした目を自分の胸に向けた蛍の顔が一瞬で真顔になり、かっと赤くなる。
「……は、はい……」
(子供を産んですぐ、殺されたって言ってたな……)
 蛍の辛い過去を思い出し、恭介は唇を噛んだ。
「あ、あの、恭介さん……も、もし良かったら……飲みませんか?」
「へ?」
 あっけに取られた表情で恭介が蛍の目を見る。
「……お前の乳を、俺が?」
「はい。その、私……恭介さんに、飲んでほしい……です……」
 尻つぼみになりながらそう、言う。
 神妙な顔つきで数秒考え込んでいた恭介だったが、
「じゃ、ま、頂くか。乳首を吸えばいいんだよ……な?」
「はい。あの、乳首の根本から、吸い上げる感じで……」
 言われた通り、恭介は蛍の乳首に吸い付いた。
「あ……」
 胸の張りつめた感じが楽になり、ふんわりとした心地よさに包まれる。
(中原さんに飲まれたんですもの、恭介さんにだって飲んでほしい……)
 蛍の中の妙な対抗意識が、女体の神秘が作り出す慈愛の液体に混じって溶けてゆく。
 ややあって、恭介が乳首から口を離した。
「ごちそさん。結構おいしいもんだな」
 そう言われて、何故とはなしに照れくさく、蛍は赤い顔をうつむけた。
「……でも、今はここはお母さんじゃなくて……エッチのための場所。だろ?」
 恭介のささやきに、まだ顔が赤くなるのかと驚くほどに顔を赤らめて、蛍はこくこくと頷く。
「今度は、もっといろいろしてやろうな」
 そう言うと、恭介は乳首を集中的に責め始めた。ミルクのまだにじんでいたその場所は、すぐに性感帯へとその役割を切り替える。
 指でいじる。先ほどのように口に含んで、しかし今度は舌でころころと転がす。そっと優しく、前歯で挟む。
「ひゃはっ、うっ、うん、あぅ、あ、あ、あぁん、あ、ふぁっ……」
 激しく首を振りながら喘ぐ蛍。次々と生じる快感に飲まれそうになりながら、
(あ……すごく、あの部分が……熱い……)
 意識に上ってくるより先に、体が既に反応していた。太ももがきゅっとすり合わさり、蛍の秘密の部分をじわじわと刺激している。
(……どうしよう……ひょっとして、もう濡れてるんじゃ……)
 まだ下着をつけたままの状態でそうなってしまっているかも、という想像に蛍は消えてしまいたいほどの羞恥を覚えた。
 恭介はなおも蛍の胸をいじり続けている。
 秘密の部分からの訴えと、心の中の恥じらいがせめぎ合った末、蛍は覚悟を決めた。
「きょ、恭介、さん……」
 唇でぴ、と乳首をつまみ上げていた恭介は唇を離して答えた。
「ん、どした?」
「そ、その、あの……し、下も……さわって、ください……」
 言うだけ言って、まるでどこか痛むかのようにきゅう、と顔をしかめる。
「お。いかん。そろそろそっちもか……なんだか、今日は蛍に一方的に恥ずかしい思いさせてるな、俺……」
 そう言うと、恭介は視線をその部分へ移した。
(おいおい。なんかもうびしょびしょだぞ?)
 少女の恥ずかしい部分を覆うはずのその布は、雫がしたたるほどに濡れて、却って少女の恥じらいを増していた。最初からシースルーの下着ででもあったかのように、薄く生えそろった若草も、その下の微かに桃色のひだが覗く秘裂もはっきりとその姿がうかがえる。
 相手が蛍でなければ、ちょいとからかう一言も掛けてやるところだが、
(うかつなこと言うとこいつ、今度は自分が淫乱の変態だとか思って悩みそうだしな)
「蛍、横になれ……」
 恭介の言葉に、蛍は素直に体を横たえた。
「少し、足、開いて。もう、脱がすぞ」
 こくり、と蛍が頷くのを見て、恭介は蛍のパンティに手を掛けた。
 くちゃ……と、微かに粘っこい音を立てて、蛍の体を覆う最後の布が引きはがされた。


 蛍のスリットは少し充血して、三分咲き、といったところ。とろとろと透明な液体をあふれさせるそこに、恭介は軽くすいっと指を走らせた。
「はぁっっっっ!!」
 悲鳴を上げて蛍が体をのけぞらす。
(えらく敏感になってるな……こりゃ、このまま一回、イかせた方がいいか?)
 そう考えて、恭介は蛍のスリットに人差し指と中指を差し入れた。そのまま膣孔を探り当て、ずにゅ、と突き込む。
「やぁぁあぁぁん!」
 再び蛍が甲高い声を上げる。
 恭介の指を蛍の膣がきゅうっ、と締め付けていた。きつい、というのではなく、懸命にしがみついてくるような感覚。
(ったく、こんなとこまで可愛いんだもんな、こいつは……)
 顔が可愛い。体が可愛い。言葉が可愛い。仕草が可愛い。反応が可愛い。心根が可愛い。
(完全無欠、文句無し……って、どっかのホラー小説の煽り文句じゃねーっての!)
 とりあえず自分にツッコミを入れておいて、恭介は指を動かし始めた。抜き差ししながらくに、くに、と曲げ伸ばしを加える。そして、親指はその少し上、まだ莢に包まれた蛍の急所の莢の上に当て、軽く、だが激しい勢いで叩く。
「ひはぁ、やっ、あっ、あっっっ、うっ、うんっ、あぅっっ、うくぅ、くっっっ、はぁ、あああぁっ……」
 蛍の上げる声が、だんだん高くなっていく。
「あっ、あっっ、きょ、きょうすけ、さぁぁん、わっ、わたしっ、あっ、はぁっ、だ、だめっっ!!」
 前髪がばらばらになるほどに激しく首を左右に振る。少女の意識に一体、どれほどの快楽が押し寄せているのか、それをその激しさが物語っていた。
「あっ、あっ、あっ、あ、ああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっっ!!」
 びくん、と蛍の体が大きく震えた。同時に、蛍の膣が吸い込むように恭介の指を締め付けた。
「は……あ……ん……う……」
 荒い息をつきながら蛍が焦点の合わない目で天井を見る。
 恭介は蛍に寄り添うように横になると、髪にそっと手櫛を入れた。
「はふぅ……」
 それだけでも感じてしまうかのように、蛍は微かに身じろぎして甘い吐息を漏らす。
「蛍……」
 呼びかけると、蛍の瞳が恭介の方を向いた。
 そして、開口一番、
「ずるい……です」
 蛍はそう言って恭介を睨んだ。
「ずるい、って……何が」
「私だけ……ひとりで」
 ぷい、とそっぽを向く。
「おいおい……」
 なだめるつもりで、恭介は手を伸ばした。
 不意に、蛍は恭介の方へ向き直った。瞳には、どこか悪戯っぽい光。
「……だから……今度は、恭介さんだけ、しちゃいます」
 そう言って、いきなり蛍はくるり、と体を回転させた。そして、
 むぎゅ。
「こ、こらこらこら、いきなり力一杯掴むな! 一応、男のモノってのもそれなりにデリケートなんだよ!」
 ペニスを襲った感覚──というか、明確な痛覚に恭介は叫んだ。
「あ、ご、ごめんなさい」
 慌てた様子の蛍の声とともに、恭介のペニスに加わった力が弱まる。
「……その。大きい、ですね……」
 さわさわ、と表面を撫でられる感覚。どちらかというと、おそるおそる、という感じである。
「うーむ。他人といちいち比べたことなんぞないが……多分平均的な大きさだと思うんだがな」
 さわさわ、という感覚が消えたかと思うと、いきなり先端に、
 ぺろっ。
 湿ったものが撫でて行く感触。
「ほ、蛍、ちょい待て!」
 恭介は慌てて身を起こし、その場所を見た。……案の定、蛍は服越しに恭介のペニスに触れていた。霊体と接触できるのはあくまで恭介の体だから、こういうことも可能なわけだが──
「どうかしましたか?」
 きょとんとした表情で蛍が問う。
(女の子は必ずなんか出るもんじゃないからなぁ。気が付かんでも不思議は無いが……)
 胸中愚痴ると、
「脱ぐから、それからにしてくれ」
 そう言って、恭介は慌ただしくズボンとトランクスを脱ぎ捨てた。
「きゃっ」
 蛍の小さな悲鳴が上がる。見ると、手が目を覆ったものかどうか迷うように泳いでいる。
「……見ながらだと恥ずかしいので、服越しにしていたんですけど……」
 蛍が頬を染めてそう言うのに、
「……最後どうなるかわからんか?」
 そう言われて、蛍はようやく得心行ったという風に頷いた。
「出ちゃって……下着がすごいことになっちゃいます、ね……ごめんなさい」
 しゅん、とうなだれる蛍。
「いや、分かればいいから。それより、その……続き、頼む」
 恭介は再び横になった。
「は、はいっ」
 蛍は改めて恭介のペニスに触れた。きゅうくつな衣服の枷から解き放たれたそれは、大きさも固さもすっかり臨戦態勢である。
(舌で、なめるのよね……)
 耳学問を総動員しながら、蛍はまず肉棒の根本から先端へと舌を這わせた。意図してのことではないが、その動きはちょうど裏筋を刺激するコースになる。
「う……」
 先端までたどり着いた舌が、今度は亀頭全体をまんべんなく舐める。
「い、いいぞ、蛍……」
 言いながら見ると、蛍はともすれば視界を邪魔しそうになる髪をかき上げながら、一心にペニスを舐めていた。
(……顔だけ見りゃ、まったくの小娘なんだが……下手な大人よか、よっぽどエロティックだな……)
 ぐにぐに、と肉棒がレバーか何かのように前後左右に動かされる。舐めにくい場所へ舌を届かせるために、蛍なりにいろいろと工夫しているらしい。
 ほどなく竿全体が蛍の唾液にまみれ、さらに新たな唾液が塗りつけられようとしていた。
(……舐める以外知らない……ってこともあるか。なんせお嬢さまだしなぁ……)
「な、蛍……くわえて、唇でしごくようにしてくれないか?」
 恭介は直接要望を伝えることにした。
「はい。こんな感ひ、れふか?」
 はも、と実際に亀頭の半ばくらいまでを口中に納めながら、蛍が聞く。
「ああ、そうだ。苦しくない程度に、できるだけ下までくわえ込むようにして、ゆっくり上下にしごいてくれ」
 蛍は言われた通り、顔を上下させ始めた。
(うへぇ……比べるだけ罰当たりってもんだが、テクはともかく良さじゃ、そこらのヘルス嬢なんかとは比べものにならねぇ……)
 蛍の動きは正直言って稚拙だが、その一途な様子が恭介を高ぶらせずにおかない。
 ちゅぶ、ちゅ……と水音がする。唾液が唇の隙間から漏れ、ペニスを伝い下りて、床へ消える。
 動き出してからおよそ、3分。蛍は少しずつ要領を飲み込んだ様子で、時に舌の攻撃を加えながら、一心不乱に恭介のペニスに奉仕している。
(苦しくないのか?よく息が保つ……あ、こいつ、息する必要はないのか……って、ひょっとしてこのまま俺、フィニッシュまで直行ですか?)
 それも情けない気がして、何とか蛍が与える快楽から意識を逸らそうとする。……しかし。
(ぐあっ、何考えても蛍に行き着いちまう! そーだよな、二人暮らしでテレビもラジオも漫画もなーんもねえんだもんな……)
 やむを得ず恭介は覚悟を決めた。高まってくる放出への欲求を見定めると、
「蛍……そろそろ出そうだ。後は、手でしてくれないか」
 恭介にそう言われて蛍は一瞬動きを止めた。が、すぐに先ほどと同じ動きを続ける。
「わ、おい、それじゃお前の口の中に出るだろっ! いや、それも悪くない……って何言ってんだ俺!、お、おい、蛍!」
 慌てる恭介に対し、蛍は平然と奉仕を続けた。そして、
「くっ、蛍、悪い、もう、だめだっっっ!!」
 びくん!
 ペニスが跳ねるのを手で握り、ぐっとペニスの半ばまでを蛍は飲み込んだ。
「ん、んふ、ん゛ふっ!!」
 途端に苦しげな声が蛍の鼻から漏れた。それでも、ペニスを口から離そうとはしない。
 ペニスの痙攣が収まると、蛍は慎重に唇でペニスをぬぐうように口を離した。少しの間目を白黒させていたが、思い切ったようにこく、と喉を鳴らした。
「……飲んだのか?」
 呆然と恭介が問うのに、こく、と蛍は頷いた。
「なんだか、ねっとりしてて、飲みにくかったです……まだちょっと、喉にからんでて……」
 もう一度、唾液をこく、と飲み込む。
「……不味かったろ?自分の味なんて知らんけど、相当苦いって聞いたことがあるし」
「……ちょっと苦かったですけど……あれだったら、お薬やニガウリの方が苦いと思います」
(そんなもんなのか?うーむ)
 ともあれ、精液の味について討論しても仕方がない。
「あの、恭介さん。今度は、これを……」
「分かってる。お前の膣内[なか]に……な」
 恭介の言葉に、蛍は赤い顔でこくり、と頷いた。


   後編に続く