「うそつき」  Aristillus



 ドアの方でベルの音がした時、フーチーは宅配のピザで、遅い昼飯を食べ始めた所だった。
 あわててコーラで口の中を洗い流し、駆けていってドアを開けると、そこには見覚えのある、肩までの長さのくすんだ金髪の少女が、レインコート姿で立っていた。
 見ると、コートからはぽたぽたと水が落ち、どこかよろよろとして、ものすごくくたびれている感じがする。
 そういやハリケーンが来ると天気予報が言ってたな、と、フーチーは空をちらりと見上げながら考えた。

「ハイ、ジェシカ。一体どうした? 遭難したのか?」

「ハイ……中に入れてくれる?」

 あ、乗ってこないな、と、フーチーは思った。
 これは本気でやばそうだと察して、つべこべ言わずに彼女を居間へ連れていった。

 ジェシカは、このメゾンの同じ階に住むご近所さんの娘で、彼女の両親とは家族ぐるみのつきあいが長い。
 確か今年11歳で、昔フーチーが学生だった頃は、彼女の両親が共働きのせいもあって、よく一緒に遊んでやったものだ。
 勝ち気な彼女は、女の子とあまり遊ばず、男の子に混じってスポーツをするのが好きな子供だった。
 特にフーチーは、ジェシカの面倒を引き受けさせられて、つきあうことが多かった。
 フーチーも、この、年下の快活な、きゃしゃでそばかすの似合う、かわいい少女と遊ぶのは好きだった。

 彼女のコートを脱がしてタオルを渡すと、コーラを持って椅子に腰を落ち着けてから、ジェシカにまずたずねた。
「何があった?」

 彼女は雨と風でくしゃくしゃになった頭を拭きながら答えた。
「今日学校から帰ってきたら、ドアの前で、カギが無いのに気付いたの。
 夜にならなきゃ誰も帰って来ないし、で、もう一度学校までの道を、カギを探しながら行ってきたのよ。
 そうしたら風が強くなってきて……」

「それでカギは?」

「よっく見たんだけど、無いの。
 戻っても家に入れないし、困っちゃって、そうしたら確か、フーチーは今日休みだって思い出して、ここなら、家に誰かいれば入れてもらえるでしょ。ね、夜までいてもいい?」
 彼女の灰色っぽいグリーンの瞳が、困ったように見つめている。

「なんだ、そんな事ならぜんぜん気にするな。とにかくシャワー浴びて、あったまってこいよ」

「ありがと。フーチー」

 彼女はものすごい勢いでスニーカーと靴下を脱ぐと、張り付いたシャツを引っ張り上げながら、バスルームへと入っていった。

 フーチーは、バスローブの入っている棚を開けた。
 今では大人用しか無いので、母の使うオレンジのローブを引っ張り出し、バスルームへ持っていった。
 中から水の音が盛大に聞こえる。
 目立つ所に置くと、「バスローブを置いとくよ。」と声を掛けた。
 「わかった、ありがと」と返事を聞くと、フーチーはキッチンに戻って、ピザを齧りながら、ジェシカが出てくるのを待った。

 出てきたジェシカは、ようやくリラックスした様子だった。
 長いローブの裾を踏みそうになるのがおもしろいのか、手でつまんであちこち歩き回っている。
 見るとなぜか、わざわざ持っていってやったオレンジのローブでなく、フーチーの使う、白に青の縁取りのバスローブを着ている。
 サイズが大きいので、腰に付いたポケットが、彼女の膝のあたりに来ていた。
 フーチーは、まあいいか、といちいち訊くのをやめて、ジェシカにピザを勧める事にした。

 食事が終わり居間へ移ると、ジェシカは、何をして遊ぼうかと聞いてきた。
 彼女は、なにか恥じらったようないたずらっぽい表情を浮かべているが、フーチーには何の事かわからない。
 ジェシカのこんな表情は、初めてだった。
 フーチーは、外へ行けないし、夜までの暇をつぶすのにいいのは、ということで、ボードゲームを持ち出してきた。
 ジェシカは、ちょっと目を伏せたあと、快活な表情に戻り、「OK」と答えた。


 準備をして、お互いボードをはさんで向かい合った時、フーチーは驚いて、目を見開いた。
 食事の時にも気付いていたが、サイズの大きなローブは大きく胸元で開いて、たまに、彼女のまだほとんど平らな胸と乳首が見えそうになっている。
 しかし、驚いたのはそんなことではない。
 座り込んだ彼女の、あぐらをかいた足に沿ってはだけたローブの間に、彼女の無毛の割れ目がはっきりと見えている。

 ジェシカは下着をはいてない!

 思考が停止して、しばらくじっと見つめてしまい、いかん、と目を離すと彼女の笑顔と目が合った。

「ジェシカ、そのう……パンツまで雨で濡れたのか?」

 彼女ははじけるように笑い出し、すぐに真面目になって言った。
「フーチー、私の事、好き?」

「ど、ど、どういう事、いや、もちろん好きだけど……」

「少し違うわね。私、セクシーに見える? あなたは感じる?」
 片足を投げ出し、さらにはっきり大きく足を開く。

 困った顔で、口を開けて硬直しているフーチーに、ジェシカはすり寄ると、
「私とファックしない?」とささやいた。

 その言葉が頭の中で理解されると、彼の脳の中でまばゆい光がフラッシュして、なにも見えなくなった。
 私が11歳の女の子とファックする! なんてこった! ありえない!

 だが……彼女は他ならぬジェシカだ。
 ジェシカとなら……と、一瞬浮かんだ思考は、たちまち彼の頭の中で、戦いを引き起こした。
 ジェシカは、固まっている彼を見てそっと笑うと、手を伸ばして、彼の顔や胸をさすりながら、するすると手を彼のズボンの真ん中へと下ろしていった。
 彼の、すでに大きくなっていたこわばりをズボン越しにつかむと、彼はうめいて蘇生した。

「ああ! ジェシカ! いけない!」

「どうして? 私、処女は好きな人にあげたいの。パパに奪われるくらいなら、フーチーのものになりたいわ」

「お、おじさんが? でもどうして……」

「パパがこの頃、毎晩私の太股とお尻を触って言うのよ。お前は俺のものだ、誰にも渡すものかって。
 すっかり大きくなって、そろそろ大丈夫だろうなんてことも言ってたわ」

「そんな……まさかあのおじさんが……」

 突然のことに、フーチーは怒りが込み上げてくるのを感じた。
 あの親父、そういう趣味があったのか。
 彼は、状況を忘れてこぶしを握って、立ち上がろうとした。
 彼の硬くなったこわばりが引っ張られて、痛みがはしり、そのままどすんと尻餅をついた。

「やめて。それより教えて。ね、私の事好き?」

 こういう時、どうすべきかをフーチーは考え、やがて一つの答えにたどりついた。
「ああ、もちろん、ジェシカのことを愛してるよ」

「誰よりも?」

「ああ。世界中で一番愛してる」
と言いながら、たまたま現在、彼に恋人がいないのが、果たして、こう言ったことに影響したのだろうか、という考えが頭の片隅をよぎっていった。

「私もフーチーのことが好き、昔から。ねえ、私とファックしない?」

 フーチーは、またしばらく硬直した後、突然ジェシカを抱きしめて、激しくキスをした。
 ジェシカの顔に喜びがあふれ、その両手を、彼の首に巻き付けてくる。
 そのうちキスはディープキスになり、ジェシカは少し驚いたが、すぐに舌をからめて、彼に答え始めた。

 二人が離れると、フーチーはジェシカを抱き上げて、彼のベッドへと運んだ。
 持ち上げた時、感じた彼女の体の大きさと軽さに、彼の頭に再び、大丈夫だろうか、という疑念が浮かんだ。
 見下ろすと、ジェシカは幸せそのものに笑みを浮かべて、彼の胸に頬をつけている。

「ジェシカ。」

「なに? フーチー」

「そのう、俺は大人で君は子供だ。君とこのままやってしまうと、間違いなく君の体を傷つけてしまう。
 本当にいいのか?」

「イエス」

「その上、最初の時は女のほうに処女膜があって、それを破らないといけない。
 血も出るし痛いぞ。俺は男だから知らないが。」

「イエス、イエス、イエス。心配しないでフーチー。私の望みだから」

 腰の引けてるフーチーに、ジェシカはベッドを降り、端に座らせると、ズボンを脱がせはじめた。
 動こうとすると、「そのまま!」と言って、フーチーを黙らせる。
 彼女は、彼の下着からこわばりを引っ張り出すと、「見てて」と言って頭の部分を舐めはじめた。
 眼下の信じられない光景と、突然の快感にあえいだ時、フーチーは突然、なんでジェシカはこんなことを知っているんだろうと気が付いた。

「変な味がするのね。どう?」

「すごく気持ちいいけど、なんで君がこんなイケナい事、知ってるんだ?」

「ビデオで見たの。パパの持ってるビデオで、パパが前に無理矢理見せてたの。
 だから、やり方は全部わかってるわ。」

 フーチーは、目の前にあるジェシカの、見慣れた、かわいい小さな顔を、見つめていた。
 なんちゅう親だ、と思いつつも、体の内からの甘い衝動に敗北したフーチーは、
「わかった。君にまかせるよ。」とつぶやいていた。

 ジェシカは勢い良くむしゃぶりついて、舐めはじめた。
 乱暴なつかみ方で顔に引き寄せ、ぎゅっと押し付けるそのやり方に、すぐにフーチーは閉口した。
 彼女を押しとどめ、もっと優しく扱うやり方を、色々教えはじめる。
 ジェシカはすぐに理解して、フーチーの顔色を伺いながら、上手に舐めるコツを憶えていった。
 やがて頭の部分を口を大きく開けて包み込むと、そのまま頭を前後に揺すり出す。
 彼女の唇の輪が締め付けた時、フーチーは大きくうめいたが、しばらくするとフーチーは目を開いて、ジェシカに困った顔をした。

「ジェシカ、口の中で舌を巻き付けてうごかして、それと、頬をすぼめてくれ」

 口の中でなにもしてなかったので、フーチーは、彼女の舌を十分に感じ取ることができなかった。
 ジェシカは、上目遣いに注意深く聞いていたが、うなづくと、両手でおさえたまま舌を激しく使いはじめた。
 さらに頬をすぼめて吸い込むと、ゆっくり前後に出し入れしだす。
 すぐに、フーチーは叫んで、大きく身悶えるように、腰を揺すりだした。
 その動きに、ちらりと得意そうな笑みを浮かべたジェシカは、さらに強くフーチーを締め上げて、激しく動きだす。
 すっかり我を忘れたフーチーは、最初の奔流が彼のペニスから飛び出す瞬間、しまった、と頭の中で叫んだ。

「ジェシカ! ごめん、止められない!」

 つっぱった姿勢で彼女の頭を押さえ、なんとか口からはずすと、ジェシカは素早くしゃべった。
「いいの! このまままかせて!」

 その時、二回目の白いねばついた流れがほとばしり、彼女の口の端と頬に散った。
 素早く口に彼を戻すと、そのまま次から次へと噴出する流れを、その喉で、全て受け止めていった。
 フーチーは、驚きと幸福感につつまれながら、ゆるんだ顔でそれを見つめていた。


 しばらくそのままでいた二人は、やがてフーチーから、ゆっくりとジェシカの頭に手を沿え、優しく彼女を離させた。
 ジェシカは逆らわず口を抜くと、その時、口の端から白い流れが、彼女のあごから喉へ、一筋伝っていった。
 口をすぼめてしばらく宙を見ていたジェシカは、下を向くと、右手に彼の精液をどろりとこぼした。
 そのまましげしげと観察しているジェシカに、フーチーはティッシュを渡そうと肩をまわした。

「こんな味はじめて。でも素敵ね。」
 彼女は、彼をにこりと見上げると、
「見てて」と言い放って、そのまままた、全て吸い込んでしまった。

 フーチーが「だめだ!」と小さく叫ぶのと同時に、彼女の喉がこくんと動いて、彼が、彼女の口に流し込んだ精液を、全て飲み込んでしまった。
 フーチーの喉でもごくりと大きな音がして、彼は眼前の信じられない光景を、霞のかかった目で見つめた。
「すごい」
 彼がつぶやくと、ジェシカはいたずらっぽい顔で、よく見えるように顔を上げ、舌を出して口の周りを舐め始めた。
 指で、頬に散った精液も拭って口に入れて、指についた分もきれいに舐めると、もう一度喉を鳴らして飲み込んだ。

 少し離れると彼女は言った。
「私上手だった? フーチー」

「ああ、きみはもう一人前の女性だよ。今までで最高のジョブだった」

「フーン、じゃ、私とファックしてくれる?」

「バレると僕は犯罪者だ。黙っててくれる?」

「フーチー、誰にも言わないから。大事な二人の秘密。ね?」

「OK」

 ジェシカは再び、もう柔らかくなっていた彼のペニスを持ち上げると、したたった彼の残りの精液を、舐め取ってきれいにしてくれた。
 そのまま彼のペニスを舌で刺激して、十分大きく硬くなるのを見届けると、ローブを脱いでベッドに這い上がり、あおむけになって、彼を待った。
 その間に、フーチーは全ての衣類を脱ぎ捨てると、静かに待っているジェシカに寄り添って、ベッドに横たわった。
 なめらかなジェシカの裸身を見つめながら、彼女の裸を最後に見たのは何年前だったかな、と彼は思った。
 昔は一緒に風呂に入ったこともあった彼女と、こんなことになるとは、と、彼の頭の中でぐるぐると思い出がめぐるうちに、大事なことに気付いた。コンドームが無い!

「ジェシカ、そのう、学校で教わったと思うけど……」

「妊娠する?」

「そう。コンドームはここに置いてない。取りに行かなきゃ」

 起き上がろうとする彼を、ジェシカは掴まえて言った。
「大丈夫、私まだだから」

 フーチーは目を見開くと、「えっ!」と叫んだ。
 ジェシカはそのまま引っ張ると、「このまま」とささやいて、彼の首に腕を回した。
 今更ながら彼女の年齢を感じて、後ろめたさと強烈なしびれる感覚を感じて、フーチーは、彼女に強烈な愛おしさを感じた。
 キスをしながら、彼女の胸をゆっくり愛撫する。
 乳首のあたりをさすると、少しづつ、彼女のわからない程小さな乳首が立ち上がるのが、分かった。
 そのまま胸と腹と背中を愛撫してゆくと、くすくすと声がして、「くすぐったい」と彼女が身悶えを始める。
 彼は笑みを浮かべて、そのままさすり続けながら、片手を下腹部に持っていった。
 そこに彼の手が触れるのが感じられると、彼女の身悶えが、艶っぽく変っていった。
 フーチーは、彼女の足の間に指を滑り込ませると、そこに湿り気を感じて、ショックを受けた。
 彼女は、今までの行為で、すでに感じ始めている!
 彼は自信を深めて、そのまま指を潜らせると、親指でクリトリスのあたりを刺激しながら、指をスリットへ沈めていった。

「ああ! フーチー、そこ!」

 彼女は叫ぶと腰を突き出すように動かしだす。
 突然のことにすっぽ抜けた片手を戻し、体を彼女の足の間に回り込ませると、今度は舌でクリトリスを探しだした。
 片手の指は、そのままゆっくりと彼女のスリットに出入りさせている。
 ジェシカは、初めての感覚に我を忘れて、叫びながら身悶えしている。

「おお……フーチー! ……もっともっと私に!」

 すでにはっきりと濡れている彼女のスリットに、指で刺激を与えながら出し入れを激しくする。
 舌でクリトリスをころがす速度を上げると、やがて、大きな叫びが彼女の口から飛び出した。

「アアアアアッ! いっちゃう! 私いっちゃう! フーチーーッ!!!」

 思わず心配になったフーチーは、周りに耳をかたむけた。
 聞いている者がいたら、身の破滅だ。
 幸い、人の気配はまるでなく、静けさの中に、激しい雨の音が聞こえる。
 雨が降っている限り大丈夫と、彼は安心した。

 ジェシカは、ブリッジの様な体勢から、すでに全身を弛緩させ、はあはあ息をしながら、フーチーを見ていた。
 その顔に幸せそうな笑みが広がっているのを見ると、彼は、そのまま彼女の足の間にすべりこんで、彼女の両足を広げさせた。
 ジェシカは、両手を頭の両側に投げ出すと、両足を上げて大きく開いた。

 その光景を見下ろしながら、フーチーはかすれた声で、
「ジェシカ、痛いけど我慢して」とささやいた。

 ジェシカがうなづいてぎゅっと目をつぶると、彼は自分の手で固定したペニスを、彼女のスリットに沿ってこすりはじめた。
 再びうごめく彼女の体を腰をつかんで止めると、ゆっくりと、湿らせた頭の部分を入れはじめた。
 入ってすぐに抵抗を感じ、彼女の処女膜に当たった事が、分かった。
 ジェシカの顔を見ると、ぎゅっと目をつぶって、歯をくいしばっている。
 そろそろと腰に力を入れて前に突き出すと、突然抵抗が無くなって、彼のペニスが半分、一気に潜り込んだ。
 ぴくんと全身が動いたが、彼女は声を上げなかった。
 そのままゆっくり進んで奥へと行き着くと、ゆっくりと入り口付近まで後戻りさせる。
 急がないように注意しながら、彼女の中をスライドさせ始めた。

 見下ろすと、彼女の限界まで開いたヴァギナを出入りする、彼のペニスに赤いものが付いているのが見えた。
 今まで感じた事のない、処女の膣の強烈な締め付けが、彼の理性をとろけさせていった。
 彼が、両手で彼女のクリトリスを刺激しながら、スライドの速度を上げていくと、ジェシカは、やがて彼の動きに合わせて腰をスライドさせ始めた。
 彼女の中はすっかり潤って、今では、動く時にいやらしい音をたてている。
 片手を離して、彼女の胸に重ねて愛撫すると、乳首のあたりをつまむ。
 頭を振って、なにかに耐えるようにしている彼女から、「ああ……」と声がもれると、彼は限界まで速度を上げた。

「オオオ! フーチー! そうよ、私の中に全部流し込んで!!」

 大きく甲高い彼女の叫びと共に、信じられない快感が腰にはじけて、彼のペニスから彼女のスリットの奥深くへ、精液の弾丸が撃ち込まれていった。

 何度も何度もはじける絶頂の波が、やがて静かに収まっていった時、フーチーは、ついに後戻りができなくなった事を、幸福感と共に感じていた。

 静かに引き抜かれたペニスを追うように、彼女の体内から白い半透明の液体があふれてきた。
 大きく開いたその光景は、さっきまでの、ぴたりと合わさった彼女のそれと、同じものだとは思えなかった。
 彼女の両足は左右に大きく投げ出されて、その光景をさえぎるものは何も無い。
 ジェシカはまだ目をつぶったままで、乱れた髪をまとわりつかせて、荒い息をついていた。

「ジェシカ……」

 ジェシカは目をつぶったままで両手を差し出した。
 彼女の脇に寝転がって抱き合うと、彼女は目を開けて、フーチーをみつめてキスをした。

「とても気持ちよかった。またしてくれる? フーチー」

「もちろん。でも痛かったろ?」

「ちょっとね。でも大丈夫、すぐ忘れた」

 またキスをして、
「望みがかなったわ」

「フーム、そいつは良かった。頼むからあまり無茶は言わないでくれよ」
と言った後、真面目になって、
「それにしてもこれから大変だな。おじさんの事もあるし、どうしたらいいんだろ?」

 それを聞くと、ジェシカは突然笑い出した。
 驚いたフーチーが見つめると、いたずらっぽく笑って、話し出した。
「だいじょうぶ。全部ウソだから」

 フーチーのあごが落ちると、ジェシカはまた笑った。

「そんなはずないでしょ、パパはママにぞっこんよ。
 フーチーにその気にさせるために、一生懸命考えて、思い付いたの」

「なんだってっ! じゃあおじさんに処女奪われそうになってるってのも、無理矢理ビデオ見せられたってのも」

「ビデオは、こっそりパパの隠してるのを見ちゃったの」

「全部ウソかっ!」

「全部じゃないわ。私があなたを昔から好きだったっていうのは」

「そ、そ、それは……」

「ほ、ん、と、よ」

 泣き笑いのような顔をして、フーチーは黙り込んだ。
 この期に及んでは、それさえ確かなら、他はどうでも良いのではないか、と、フーチーは思った。
 今や、彼女は彼の恋人であり、大切な存在になってしまったのは、間違いない。
 それにしても、この勝ち気で活発な少女と、つきあっていくのはたいへんなことだと、フーチーは困惑した。
 少なくとも、彼女がミドルティーンになるまでは、つきあっていることは、誰にも悟られる訳にはいかない。
 それに、彼女がこれから成長して、新しく好きな男ができたらどうする? はりあうのか?
 そんな思考が頭を駆け巡り、これからの数年間の苦労を思いやって、彼はため息をついた。

「フーチー?」

 暗い顔をして黙り込んだフーチーに、心配してジェシカが覗き込む。
 彼女を見ると、笑顔を取り戻して、彼は後始末を始めた。
 ジェシカをきれいにすると、二人でシャワーを浴びて、乾いた服をとりに行き、元通りに服を着る。

 フーチーは、さっぱりとした顔の彼女に、顔を寄せてキスをすると、「そういやカギ、どうする?」ときいた。

 彼女はその時、得意そうにこちらを見て、ゆっくり腰に手をあてて、ポケットからチャラとカギを取り出して、振ってみせた。

 みたびあっけにとられた彼は、しばらくして、口を閉じると叫んだ。

「このうそつき!」



END.