「いけないコト」  四畳半のアムール


 湿った風が街路樹をゆさぶっている。雲がこのあたりで一番高いマンションの屋上につきそうなぐらいに、低い位置にある。
 ゆみは、右に左にゆれるイチョウの木を横目で見ながら、うなだれて歩いていた。
「……こんな点数、見せれっこないよ……」
 ゆみの脇を、中年のサラリーマンや自転車に乗った女子高生たちが、次々に追い抜いていく。とぼとぼと歩くゆみのことなど、だれも気にしていない。
 小学六年生のゆみは、自宅マンションの前で立ち止まった。大きく息を吸ってみる。昼すぎに一度ふった雨が、またやってくるような、土臭い匂いがした。
「やっぱり、塾に行ったほうがいいのかなあ」
 ゆみは、さっきから何度も入れたり出したりしている紙きれを、またスカートのポケットから出した。58点。こんな点数は、本当に初めてだった。
 秋の始まりの風が少し冷たい。風邪気味のせいもあって、頭がぼうっとする。
 ゆみは答案用紙を小さく折りたたんで、今度は通学カバンに入れた。ゆみが通う学校は、数年前に新設された市立校だ。ここと隣の市とが合併して大きな市になり、ふたつの市にあった数校が統合して、いまのようになった。乾燥室つきの屋内プールや広い体育館に、音楽ホールまである。きれいで巨大な新しい学校は、ランドセルを自由化にした。
 小さな子たちは転んだときに体を守る役目があるランドセルをしているが、ほとんどの高学年の、特に女の子たちは、思い思いの格好で通学するようになった。
 ゆみが今気に入っているのは、バーバリーの、横に長いカバンだ。背中に背負うこともできるし、ショルダーみたいに肩にかけてもかわいい。毎日布で拭いて、大切にしている。
 ゆみはカバンを胸に抱えて、マンションの入り口を通った。ゆみの後ろで一度閉まったガラス戸がまた開いた気がしたが、寒気がするし、ふり返るのもめんどうだった。早く横になりたい。今ならお母さんもパートの時間だし、テストのことは、あしたにでも言おう。
 いやなことは先延ばしにするゆみが、足元をふらつかせながらエレベーターに乗り込んだ、そのとき。
 閉まりかけていたエレベーター扉の隙間に、白い軍手をした手が差し入れられた。ゆみの目の前に、野球帽をかぶり、細いサングラスとマスクをした男が立ちはだかる。
 あわてて「開」のボタンを押そうとしたゆみの手を、軍手の手がつかんだ。そして、ゆみの細い腕を無理に後ろにひねりあげる。痛くて悲鳴をあげかけたゆみの口がふさがれて、カバンが床に落ちた。
 最上階のボタンを押した男は、ゆみのお尻をスカートの上から撫でてきた。ゆっくりと丸く揉むように撫でて、膝丈までのフレアースカートの中に、ざらついた手を入れてくる。
 鳥肌を浮かせたゆみの太ももを撫でていた男の指が、パンツのゴムにかけられた。
「う、うう!」
 ゆみが体をよじって抵抗すると、男の手が離れた。なにかを取り出す気配がする。
「静かにしろ」
「う……!」
「殺すぞ」
「────!!」
 腰の少し上に、硬くて冷たいものがある。
 ナイフ……?!
 ゆみの頭の中を、最近耳にするウワサがよぎった。
 サバイバルナイフで小学生の女の子を脅して、いたずらをする男がいる。近くの公団に住む女の子も襲われて、レイプされてしまった。その女の子の両親が警察に被害届を出したのだけれど、男は捕まらずに、女の子はあることないことウワサされて、一家そろって引っ越していった──。
 ゆみのおかっぱ頭に、男の荒い息がかかる。ゆみははっきりとした抵抗ができないまま、屋上へつづく階段を引きずられていった。


 屋上につくと雨がふっていた。共用の物干し竿には、なにも干されていない。きょうは一日中ぐずついた天気だ。だれもこんな日に洗濯物など干さない。だれも助けにこない。
 そう思うと、急に怖くてたまらくなった。ゆみを水道タンクのある小屋へと引きずっていく男の胸や脇腹を、こぶしで叩いた。男はそんなゆみを鼻で笑って、足を進める。
 タンク室と書かれた四角いコンクリートの部屋に、男はためらうことなく入った。鉄の扉が閉まり、室内灯がつく。ぼんやりとしたオレンジ色の明かりがタンク室内を照らすと、ゆみは床に突き飛ばされた。
 ゆみはしゃくりあげて男を見た。男はサングラスとマスクをとって、軍手をはずすところだった。ゆれる男の顔がニヤリと笑っている。そんなに若い男ではない。お父さんより少し小柄で、がっちりとした体格だ。左目の上に、大きな刃物傷がある。
 男は事前にこの建物のことを調べていたにちがいない。ウワサどおりの大きなナイフを手に持って、ゆらゆらさせていた。
「やめ……やめて」
「大人しくしてりゃ、中出しはしねえよ」
「な、なかだしって?」
 ゆみの言葉に、男がクッと笑った。ズボンのファスナーを下げて、赤黒いような、紫色のような、さつま芋に似たものを露出させる。
「いや……!」
 それが男の性器であるということは、六年生のゆみにもわかった。威嚇するようにこちらに向けられている、巨大な棒。あれをどこに入れるのか、クラスの子が話していた。
「おれのは真珠入りだ。商売女でもよがり狂うこのチンポで、おまえみたいなガキを何人もハメてきた。最初だけだぜ、いやだって言うのは。どのガキもみんな、抜かないで、おチンポ抜かないで、おまんこにハメてえって、大騒ぎだ。最近のガキは淫乱だな」
 そう言いながら、男がゆみの体の上に乗ってきた。男の膝が脚を割って入ってくる。ゆみの両方の手首は、男の片手だけで、あっという間に押さえられてしまった。
「やだあっ!」
「静かにしないと、おれの精液をおまえのおめこん中に出すぞ! おまえ、生理きてんだろ。いいのか、妊娠するかもだぜ」
「やだ、やだっ!」
「静かに──しろ!」
「ひいぃッ!!」
 鋭い痛みに、ゆみが悲鳴をあげた。なにかがあそこに──ゆみの女の子のところに入っている。パンツの布が大きく横に広げられているみたいだった。パンツをおろさずに、隙間から、なにかが無理にねじ込まれているのだ。
 まさか、クラスの子が言っていた「前戯」というものもなしに……?!
「やだぁっ、痛い、やめてよおッ!」
「指でも痛いんか? まったく、ガキってのは興奮するぜ」
「いやあ、い、たいっ」
「たっぷり指マンしてやるからな、お嬢ちゃん。ここでやらしい汁出しておかんと、後でもっと痛いぞ。おら、力抜けよ」
「う、ぐ……!」
 こんなに痛いのに、これは指?
 ちゅぷちゅぷと、へんな音とともに出入りする男の指に、ゆみは意識を集中させた。徐々に深く差し込まれているみたいだが、痛みはだんだんとなくなってくる。
 そのかわりに、穴の入り口より少し奥のところをそっとこすられると、体がカッと熱くなって、背中がぞくぞくした。
「くぁ……! んう!」
「は……ここがおまえの弱いとこか。いっちょまえに穴が締まるからよくわかるぜ。ほうら、どうだ、こすれるだろう」
「ひあっ!」
 男の指の腹が、ゆみの「そこ」を強くこすりあげた。最初の何回かは大きくゆっくりと、そして、小刻みに素早く動かされる。
「ひあ! あ、あ」
「すげえ汁だ。指マンでこんなに汁たらすってのは……オナニー好きなんだな」
「うう、んあ、ち、ちが……」
「ちがうくないだろう? オナニーって言葉、ちゃあんと知ってるじゃねえか」
「ちが、ちがうぅ」
 男は喉を鳴らすようにして笑いながら、それなら、と言った。
「それならお嬢ちゃん、ここはどうだ」
「いっ! ひうぅっ!!」
 ゆみのお尻がびくりとした。女の子が一番感じる、肉のツボミをさわられたからだ。
「いやっ、だめ、だめぇ!」
「やっぱりな。ガキはここ、好きだからな。気持ちいいだろ。いつも自分で、ここいじってんだろ。ここ、なんていうか知ってるか」
「あふ、はぁっ、しらない」
「ウソはよくねえな」
 くちゅくちゅくちゅくちゅ!
 男の指が、ものすごい速さでゆみの穴を出入りする。おそらく人差し指と中指を穴に入れて、親指でツボミをいじめているのだろう。穴をこする動きに合わせて、敏感な肉の粒も手加減なしにこすりあげられた。
「きゃぁああん!!」
「ガキのくせによがりやがって。ほうら早く言わないと、おまえのやらしいところに、おれのでかいチンポを入れるぞ!」
「いやあっ……あう、あっ」
「おらおらおらおら」
「あ、あ、あ、あ!」
 ぐちゅぐちゅいっているゆみの女の子のところが、ものすごく熱くなってきた。男の太い指が不意に根元まで入れられても、痛みよりも、お尻まで痺れるような気持ちよさが強すぎて、腰がおもちゃみたいに震える。
「ひぃああ! く、くりちゃ……!」
「なんだって?」
「クリちゃんっ! くり、クリトリス、です」
「そうか、おまえはいっつも、クリトリスでイッてんだな。でも今日からは、おめこの穴もよくなるぜ。まんこ汁たらして、ぐっちゃぐっちゃいわせるオナニーするんだ。毎晩な」
「い、い、ひぅぅっ!」
 ゆみは頭を横にふった。身のすくむ声で口にされる、聞いたこともない言葉。指でほじられているところからしている、ひどくいやらしい音。穴の内側はこすられるたびにひきつれて、節くれだった指をおねだりするように、きゅっと縮むのがわかる。
 小さなクリトリスを指で慰めることも、ほんの数カ月前に知ったことだ。じんじん痺れる恥ずかしい感覚は、毎日求めているわけではない。数えるほどしかしていないのだ。
 もうだめ……もう……!
 ゆみの目の奥に白い光が広がりはじめたとき、金属音がした。男の指が引き抜かれる。
 ガチャッ!! ゴキン!!
 唇を噛んで「イク」寸前の感覚に耐えていたゆみの上に、重いものがかぶさる。
「はあっ、はあっ、ううん……」
 自由になった手で頬をぬぐいながら目を開くと、胸の横に男の野球帽があった。
「早く立ちな!」
「えっ」
「逃げるんだよ!」
 タンク室の入り口に、見覚えのある人影があった。隣のクラスの、水野恵子という子だ。成績はいつも五本の指に入るほどで、最近まで所属していたバスケットクラブでは副キャプテンをしていた。いつもたくさんの友達に囲まれていて、ゆみのクラスの男の子も、何人か告白をしたと騒いでいた。
「早く! レイプされたいの?」
「あ……い……いや……」
「じゃあ早くしな!」
 ぴくりとも動かない男の肩を、恵子の手がつかんだ。男の下から這い出したゆみの手を、恵子が乱暴に引く。右手には少し血のついたゴルフクラブを持っていて、二重のはっきりした大きな目は、きつくつりあがっていた。
 タンク室の外に出ると、恵子はゴルフクラブを扉の取っ手に通した。斜めに通ったクラブの柄が、カンヌキのかわりになった。
「あの……あの人は……?」
「あんな男ほっときなって言いたいとこだけど、一応手は打っておかなきゃね」
 手を打つって──? 

あそこが少し痛くて、ひくひくしている。ゆみはタンク室のひさしの下にしゃがんだ。風邪のためなのか、くらくらする。
「お兄ちゃん? 例の変態、捕まえたから。友達が体さわられたの。……うん、そうして。うちの、斜め向かいのマンションの屋上。タンク室って書いてあるとこに、閉じ込めたから。うん、うん。早くね。パパのゴルフクラブ、使っちゃったから」
 携帯電話で話す恵子は、学校で見るのとはまったくの別人だった。長い髪を強くなってきた風になびかせて、薄手のコートのポケットに手を入れて立つ姿は、自分と同じ年齢だとは思えない。
 ゆみの視線に気がついたのか、恵子がこちらを見た。コートを脱いでゆみの肩にかける。
「あんた、高田ゆみでしょ」
「…………」
「あたしもね、あの変態オヤジにやなことされたんだ」
 そう言った恵子が、あごをしゃくってタンク室の扉を睨みつける。
「うそ……! 水野さんが……そんな」
「マンションの駐輪場で、胸とお尻さわられたの。ちょうど自転車にあった傘でめっちゃくちゃに殴ってやったけどね。あんたは……すごいことされちゃったみたいだね」
「み、水野さん! このことは」
「言わないよ。でも、カタはつける」
「カタつける……って?」
「今電話したのね、あたしの腹違いの兄貴。あたしが体さわられたって話したら、すっごい怒って。ちょっとコワイ友達多いから、あの変態のこと、ボコボコにしてくれるよ」
「そんな……」
「じゃああんた、公団の、引っ越した子みたいになりたいわけ? あの変態、警察に捕まったりしたら、あんたのこともレイプしたって言いだすかもよ。それでもいいの?」
「……いや……」
「それならあんな男のこと、気にすることないよ。ね、うちに来ない? パパもママもいつも遅いし……あんたのあそこも、ちゃんと洗っておいたほうがいいからさ」
「そんな、そんなの、いいよ」
「よくないよ。あんな男にさわられたところ、そのままにしておいていいの?」
「でも……もう……家に、帰りたい……」
 壁に手をついて立ちあがるゆみの腕を、恵子が支えた。雑誌のモデルにと誘われるらしい恵子の顔を、ゆみは初めて間近で見た。弓なりのきれいな眉に、形のいい唇。
 こんなにきれいな子に、男の指を気持ちいいと思った自分の声を聞かれたと思うと、耳まで赤くなるような気がした。
「あんたのカバン、うちにあるよ」
「え……?」
「うちのシャワー使いなよ。ね?」
「水野さん──」
 美しい恵子の、少しぎらぎらした目で見られると、体がざわざわしてきた。あんなにひどいことがおきたのに、気持ちが騒いでしょうがない。ゆみは恵子に手を引かれるまま、階段に向かった。


 ゆみが住むマンションの斜向かいに、恵子の暮らすマンションがある。六階建てと、ご近所では小さな印象を与えているが、敷地内には中庭を含めて平地部分を多くとってある。そのために高層建物が多い一帯にあって、一戸建てに似た光を放っていた。そして、一フロアに一邸ないし二邸という、永住向けの高級な造りに、憧れているお母さんも多い。
 黒を基調とした荘厳なエントランスに入る前に、恵子がインターホンで部屋番号と暗証番号を入力した。管理人に軽く頭を下げる恵子は、ゆみの腕を離そうとしない。
 最上階の、一フロア一邸の豪華な部屋が、恵子の自宅だった。玄関に立ったゆみは、あっと声をあげた。
「あたしのカバン……!」
 バーバリーのカバンが、スリッパ立ての横に置いてある。エレベーターの中で男に襲われたときに落としたことを思い出した。
「あたし、ずっとあの男を探してたんだ」
 玄関に鍵をかけて、ゆみの足元にスリッパを置いた恵子が、低い声で言った。
「だって、悔しいじゃん。あいつのせいで転校した子までいるんだよ? だからあたし、バスケやめて、学校が終わったらすぐにこのあたりを見張ってた。ああいう男は絶対同じことするって思ったから」
 カバンを持つと、ゆみは恵子と一緒に廊下を歩いた。恵子が急にバスケットをやめたことは耳にしていたけれど、そんな理由があるなんて、まったく知らなかった。
「あんたの後をあいつが歩いていくのを見て、あたしもこっそり後をつけた。エレベーターが一番上で止まって、あんたの家を郵便受けで確かめると四階だったからさ。絶対屋上だって思って、カバン拾って、うちに戻って、ゴルフクラブ、取って」
 黒く光る浴室に入った恵子の声が震えた。大きなバスタブの縁を握る恵子の指先が、白くなっている。
「水野さん……?」
「……転校した子ね、いまの学校になる前、一緒の学校だったんだ」
「え」
「バスケも一緒だった。だからあたし、あの男だけは絶対に許せないって思ってた。でも……あたし、だめなの。友だちが、あの男のアレを……無理に入れられたんだって考えると……おかしくなるの」
「水野さ……」
「あの子のあそこに、アレが入って……出たり入ったりしたって思うだけで、エッチな気分になっちゃうの。あそこが、すごく熱くなって、それで──」
 ゆみはカバンを胸に抱いて、恵子を見た。なにを言っていいのかわからない。でも、逃げることもできない。
「ごめん……へんなこと言ったね」
「う、ううん」
「シャワー、使って。寒かったらお風呂にしてもいいよ。お湯入れようか?」
 ゆみはカバンを抱いたまま、首を横にふった。恵子の笑顔が少し曇った。
「下着もかえたかったら、あたしの使ってないやつ、あげる。ゆっくりしてって」
「……ありがとう」
 恵子が脱衣所から出ていくと、ゆみはほうっと息をついた。なにもかもがめまぐるしい。服を脱ぐのも、どこか無意識のうちだった。壁にもたれてパンツをおろすと、ゆみは小さな声をあげてしまった。女の子のお汁が、つう、と糸を引いたからだ。
「や……すごい……」
 いままでこんなことはなかったので、透明な液の糸を見た瞬間はおどろいたが、あの男の指を思い出して、ゆみはかぶりをふった。
「あたしが悪いんじゃ……ないもん」
 ゆみはつぶやきながら、磨きあげられたバスタブをまたいだ。金色の蛇口をひねると、ちょうどいい温度のお湯が出てくる。シャワーを首から胸、お腹、そして女の子のところに持ってくると、なぜだかため息が漏れた。
 男にいじられたところがどうなってしまったのか、恐る恐る指先で確認する。指を見ても、血の一滴もついていない。シャワーの水圧を低くして大切なところにあててみても、強くしみるようなことはなかった。
 そしてゆみは、ゆるゆるしたお湯で割れ目の内側を流しているうちに、男に刺激されて大きくなった敏感なツボミを、指でさわりたくなってしまった。
「ん……だめ。人の家で、こんな」
 ゆみの細い指が、ただ洗うのとはちがう動きで、硬い肉粒を上下になぞりはじめる。
「水野さん……も、オナニー、するんだ……」
 恵子の思いがけない言葉を追いかけて、指を溝に沿わせた。少し強めにそこをこする。
「はっ……はぁ……」
 ゆみはバスタブの中に座り込み、お湯を胸や膝、ももの内側にあてていき、息を弾ませて指を動かしつづけた。頭の中に、タンク室でのことが鮮明によみがえる。
「ん……んうう」
 きのうまで決して入れることのなかった穴に、指を一本だけ入れてみた。洗ったのにもうにじんでいるお汁のせいで、難なく入る。
「んん、ぬるぬるしてる……。ゆみの、ゆみの……おま、んこ……ぬるぬるだよぉ」
 男が口にしていた言葉を言うと、お汁がどんどん出てきた。指をもう一本増やして、こすれると気持ちよかったところを探してみる。
「おじさん……さっきの、気持ちいいとこ、こすって……ねえ……」
 そう……たしか、このあたり──。
「ひ、あ」
 偶然さわったところに、電流のようなものが走った。足の先が突っ張る。
「おじさぁ、ん。そこ、こすって……!」
「こすってほしいんなら、チンポ舐めろよ」
「!! だれっ……?!」
 いつの間にいたのだろう。大きな人影が浴室の入り口に立っていた。影の後ろから、髪の長い少女が顔を出す。
「ね、お兄ちゃん。すごいエッチな子でしょ」
「水野、さん?」
 背の高い、浅黒い顔の若い男が、ゆみを軽々とバスタブから引きあげた。荷物を持つように全裸のゆみを小脇に抱える。背後の浴室から、恵子とだれかの笑い声がした。
「きゃあぁっ!!」
 恵子の自室らしい部屋のベッドに、ゆみは裸のまま放り出された。恵子が男の横に立つ。
「おじさん、チンポ洗ったよ。お兄は洗った? あたしその子のこと気に入ったんだから、汚いチンポなんて舐めさせないでよね」
「ちゃあんと洗ったぜ。ゆみちゃんの処女をもらうんだ。失礼のないようにしないとな」
 なにがおきているのかわからないまま、ゆみは大きな足音に顔を向けた。
「あの……おじさん……?!」
 恵子と、恵子がお兄ちゃんと呼ぶ男の間を割って、ゆみを襲った男が部屋に入ってきた。
「いや……いや……! どういうこと?!」
 ゆみは逃げようと必死にもがいた。若い男に両肩を押さえつけられているゆみの脚を、タンク室の男が広げた。
「いやあッ!! やめてやめて、水野さんっ!!」
「だからあ。お芝居なの」
「おしばい……?」
「あたしの友だちをレイプした男は、どこかに実在するけどね。そのおじさんはお兄の知り合い。ゴルフクラブで殴ったのも、タンク室の壁を殴っただけ。血は絵の具」
「そ……な、どう、どうして」
 一瞬の沈黙の後、激痛が走った。
「ぎっ……いぎぃッ!」
 タンク室の男の指が、唐突にゆみの穴の中にねじ込まれてきたのだ。だがそれは、タンク室で入れられたのより確実に太い。裂かれる痛みに息がつまる。
「あぐぅ、や、めて」
「おいおっさん。その子のお初は俺がもらうんだぜ? 無茶すんなよ」
「奥まで突っ込みゃしねえよ、心配すんな」
「わ、すご……三本も入れたの?」
「このガキ、すぐによがるんだぜ。ほうら、この、ここんとこが、弱いんだよなあ?」
 そう言った男が、三本の指の腹全部で、ゆみの弱点を、リズミカルにこすりはじめた。待っていた刺激に、ゆみの腰が跳ねる。
「ひっ! い、あ!」
「おじさんの指マン、すごいでしょ」
「いや……こすれる、こすれ……ちゃうっ! ひ、や、やだ……あ!」
「たまらんガキだぜ。おまえの後に、おれにもやらせろよ。ここんとこ、おれの真珠で掻き回してやりてえ」
「あん、おじさん。その前に、あたし」
「恵子はハメコが好きだからな」
「お兄ちゃんだって女の子だったら、おじさんのおチンポ好きになるわよ。ねえおじさん、もういいでしょ。こっち来て……舐めてあげるから……」
「お、おお、よしよし。待ってな」
 男は名残惜しそうにゆみから指を抜くと、ベッドの端に座る恵子の前に立った。白く透けるキャミソール一枚という姿の恵子が、慣れた手つきで男のベルトを外して、ズボンと下着を引きおろす。
「おじさんの、きょうもおっきい……!」
「うお……!」
 恵子の長い髪でよく見えないが、恵子が、あの芋に似た巨大な棒を、口に含んでいるようだった。
「じゃあゆみちゃんには、俺のを舐めてもらおうかな」
「え……あ……!」
 ゆみの顔をまたぐようにして、若い男がベッドの上に膝をついてきた。黒い皮のズボンのファスナーがおろされると、生きた蛇のような影が、勢いよく飛び出してきた。
「なんだよアキラ、またノーパンで来たのか。つくづく変態だな、てめえも」
「あんたに言われたくないね。恵子、髪の毛持ってもらって、こっち向け。ゆみちゃんに、チンポの舐めかた教えてやるんだ」
「うう……ん、ぐ」
 恵子の苦しそうな、それでいて、どこか鼻にかかった声と、ゆみの息をのむ音が、ほとんど同時にした。
 長い髪を男につかまれた恵子が、あごを突きだして、太い芋の先端部にしゃぶりついている。両手の指先で赤黒い芋の根元をさすり、一度男から唇を離す。そして、すぐに唾液にまみれた舌を、下から上に、ナメクジが這うように動かしていった。
「く……たまんねえな、このフェラ。大人の女みてえにじゅぱじゅぱ吸わねえくせによ、すげ……いいぜ。ゾクゾクする」
 恵子は、不思議と上品な動作で男のものを舐めていた。先のところを軽く吸って、またすぐに舌を肉棒全体に這わせていく。ゆみの視線も気にならないのか、わずかに眉をよせて、夢中になって味わっているみたいだった。
「さあ、恵子みたいに舐めな」
 アキラと呼ばれた男のものが、ゆみの唇をねっとりと撫でてきた。
「エッチなこと、したいんだろう?」
 その言葉に、ゆみの女の子の奥が、じゅん、といった。お汁があふれてきたのだ。
「……は……ぁ……」
 熱い肉の棒がパンパンに張っている。恵子が味わっている男のものよりは細いが、それでも六年生のゆみには、充分にグロテスクだ。
 ゆみは、指でそっとアキラのもの全体をなぞってみた。さつま芋かと思った男のものとはちがい、アキラのは先が高く盛りあがっている。虚空を向いてそびえ勃つそれは、黒い蛇そのものに思えた。
 両手で蛇の根元をにぎって、頭の部分に唇をつけた。舌も一緒に押しつけて、吸いついたままで少し這わせる。次に恵子の真似をして舌だけで舐めて、また先端をしゃぶる。
 ちゅ……っぱ、ちゅうっ。
 ちゅっ、ぢゅう、ちゅぴっ、ちゅぼ。
「くっそ……! たまんねえ、入れるぞ!」
「んうっ! ああんッ!」
 恵子の甘い悲鳴に、ゆみは目を開けた。それと同時にベッドが大きくきしんで、恵子の髪がゆみの足指にふれた。
「くぅぅ! あ、あひ、おじさ……!」
 顔を真っ赤にした恵子の上半身だけがベッドの上にある。キャミソールが胸の下まではだけて、無駄なぜい肉のない両脚は、男の太い腕がしっかりと支えていた。
 そして、そのきれいな脚の間に、ポロシャツだけを着て下半身丸出しの男の腰が、確実に押しつけられていく。
「一気に入れるなよ。恵子はまだガキなんだ」
「わかってる、ぜ。はあ、まったく、何回やっても、キツい、まんこ……だ!」
「あああう!」
 恵子の大きな悲鳴とともに、恵子と繋がっている男が中腰になった。大きく開いていた両脚を担ぎあげられて、恵子の腰が高く浮く。美しい太ももがぴったりと閉じると、男は頑丈そうな腰を、浅く動かしはじめた。
「あ! あ! おじさぁ、ん!」
「喰いちぎられ、るぜ。恵ちゃんのまんこは、ゴムの輪っか、だな……そっちは、どうだ」
「これからいただく。ゆみちゃんは、生理きてるか?」
 恵子たちを穴が開くほど見ていたゆみが、アキラを見て顔を横にふった。アキラは皮のズボンも上着も脱いで、全裸になっている。
「そうか。恵子と同じだな」
 恵子と目もとが似ているアキラが微笑んだ、次の瞬間。
 ぐっ──ちゅうぅ!
「き……あ……!!」
 すごい音がしたと思ったら、股間全体に、焼けるような強い痛みが走った。経験したことのない圧迫感に、吐きそうになる。口を大きく開けるのだけれど、声が出てこない。
「アキラのは、カリ高だから、な。最初がキツいよ、な」
「お……! ゆみちゃんは、汁がすごいな。かわいい顔して、よだれたらして喰わえこんるぜ……やらしいまんこだ」
 男の指が入ってきたところより、ほんの少し奥までアキラの棒が侵入してきた。ゆみはその間、声らしい声を出せずに、開けた口をぱくぱくさせるだけだった。
「は……あ……このガキ……ぬめりが……すげえ。気ぃ抜くと、引きずり込まれそうだ。ゆみちゃん、力抜きな……天国に、いかせてやるぜ」
「い、たいぃぃ!!」
 じゅるっ、じゅる、じゅちゅっ!
 男に指でされたときよりも大きな音をたてて、アキラのものが前後に動かされた。先の太いところがゆみの穴の中を予測できない動きで割り進んで、熱い痛みがお腹の奥から頭の先まで突き抜ける。痛みと異物感が怖くて、涙がゆみの頬を伝った。
「うっ……いた、いよ、やめて……!」
「どんなふうに痛い」
「やけ、焼けちゃうう」
「感じはじめた証拠だな。ほんとに痛けりゃ……こんなに汁、出ないんだぜ?」
 荒い息のアキラに、繋がったまま腰を抱えられた。ゆみの体は横向けにされて、静かに体を反転させたアキラの片脚が、ゆみの脚の間に入ってくる。そして、膨らみかけのゆみの胸を、アキラの手がそっと包んだ。
「んぅっ!」
「ゆみちゃん、恵子を見てみな」
「はあっ、みずの、さん」
 ゆみのすぐ目の前に、信じられない恵子の姿があった。ドスドスと音がするほどの勢いで体をゆさぶられて、シーツに爪を立てている。泣きそうな声を断続的に漏らしている唇からは、唾液の筋が光っていた。
「俺は親父とも、恵子のお母さんとも、恵子とも仲がいい。親父も恵子の母さんも帰りが遅いから、俺は時々ここに飯食いにきてる。恵子の友達がレイプされてから──恵子は少し不安定だった。バスケもやめて、心配で、親父たちが旅行に行ったとき、見にきたんだ」
 そう言いながら、アキラはゆみの胸でしこっている突起を、指で撫でまわしてきた。脚の間では、浅い動きで蛇がくねりはじめる。
「恵子は俺が部屋の扉を開けたことにも気がつかないで、オナニーしてた。スティック糊をあそこに突っ込んで、半泣きで、腰ふってた。友だちがレイプされてるのを想像しながらオナるのがやめられないって、泣きながら言うんだ──だから、俺が」
「あううっ!」
 アキラのものが、リズムをつけて上下に動きだした。かま首のところが、徐々にゆみの電流を生む場所に近づいてくる。
「ゆみちゃんなら、わかるだろう? いけないことって……すげえ、気持ちいいって」
「ひっ! ひあ!」
「恵子は、ハメコされると、なにも考えられなく、なるんだ……はあ……いいぜ。ガキのくせに、おまえも、恵子も……!」
 硬く大きい蛇の頭が、ゆみの急所に当たった。指でこすったときとはあきらかにちがう、体が大きく跳ねるほどの痺れが走る。
「ああう!! そ、こおぉっ!」
「すっげ、締まる……! なあ、おまんこ、気持ちいいか」
「はあっ、はあぁっ、おま……こぉ」
「ゆみちゃんも、エッチなしでは、いられなくなる、かもな」
「んああ! ああぁんっ!」
 じゅぶ! ぐちゅ! じゅぶ! ぐちゅ!
 アキラの蛇に突かれて、ゆみの穴が煮えたようになった。痛みは確かにあったけど、いやらしいお汁の音を恵子とおじさんにも聞かれていると思うと、目がかすんで、体じゅうがガクガクしてくる。
 シーツにしがみつきながら顔をあげると、恵子に芋棒を突き立てている男が、赤鬼みたいな顔で腰を小刻みにふっていた。巨大な芋の根元を手で握っている。恵子の中に、全部は収まりきらないみたいだった。
 そして恵子は、自分の指を噛んですすり泣いていた。口に入れていないほうの手で、キャミソールの上から胸を揉んでいる。
「も、もう、もたねえ! 恵ちゃんに、妹のおめこん中に、出すぞっ、ウオォ……ッ!」
「ひぐっ! んぐううぅ──!!」
 動物みたいなうめき声をあげて、男と恵子が震えた。恵子の胸の突起が小さな四角形に尖って、透ける布地にいやらしい影を作っている。恵子は細い体を大きくのけぞらせて、そのまま動かなくなった。
「──はあ、は……恵ちゃん、完全に気をヤッちまったな。そっちのおめこは、いいか?」
「あ……あ、いいぜ。ゆみちゃんも、気持ちいいだろ。ここが、いいよな……?」
 ぐちぐちぐちぐち! ぐちっ、ぶじゅ! 
「ああああああああ!」
「今までのガキん中で、一番やらしいぜ、こいつ。見ろよ、このまんこ汁」
「へ……へ。小便漏らしたみてえだな。お、いい肌してやがる。つきたての餅だ」
「ひ、あ! おじさあん!」
 アキラの指で軽くつままれていたゆみの胸の先を、男の指がつねりあげた。
「いあああ!!」
「おっさん、優しくしてやれよ」
「このガキ見てると、おかしくなってくるぜ。おうおう、こんなかわいいぷっくりまんこに、黒いのが挿さってるなあ。痛そうだから、ここをこうしてやろうか」
「ひぎ……!!」
 凶悪な蛇がねじ込まれているすぐ上の、ゆみの大切な肉のツボミが、男の指の腹で強く押し潰すようにこすられた。
「ひぃああーッ! だめえっ、おまっ、おまんこ、こすれる、よおぉぉッッ!!」
 悲鳴に似た大声をあげて、ゆみの全身が突っ張った。頭の中が真っ白になって、歯を喰いしばる。お尻とお腹の奥と、そして女の子のところが、強烈に収縮した。
「う、おッ! 出る……!」
 いやいやとかぶりをふるゆみの中に、熱い濁流が流れ込んできた。大人の男が爆発するときの膨らみが、ゆみの穴の奥を破りそうな強さで突き上げる。ゆみの小さな体は、足の指先まで痙攣した。
「アキラ、最後まで気ぃヤらすなよ。チンポ抜いたら、おれに尻向かせてくれや」
「ああ、はあ、いい、ぜ……ほらよ」
 口を開けたまま震えるゆみがうつ伏せにされる。下半身だけがベッドの端からおろされて、お尻の肉が無骨な手で広げられた。太い芋棒がゆみの傷ついたところに入ってくると、ゆみの視界は歪み、絶叫とともに赤い闇になった。


 次の年の、桜が淡い緑色になる季節。
 ゆみと恵子は、お揃いの制服を着て坂道を歩いていた。恵子の長い髪とゆみの白い頬を、まばらになった桜の花びらがかすめる。
「ゆみのクラス、かわいい子いる?」
「きれいな子は二、三人いるけど、かわいくてエッチそうな子って、いないみたい」
「あたしはひとり見つけたよ。お兄の写真見て会いたいとか言ってるし、案外楽かも」
 有名私学中等部の制服でさっそうと歩く恵子には、いまもスカウトの声が頻繁にかかる。常に恵子の横にいるようになったゆみは、スカウトこそされないものの、もうふたりの他校生からラブレターをもらっていた。
 白い肌に、ピンク色の頬。恵子に言わせるとキスしたくなるような唇は、いつもやわらかかった。少し丸いその顔で微笑むと、大抵の男の子が落ち着きをなくした。
「ゆみみたいにかわいくってエッチな子って、なかなかいないよねえ」
「恵子ちゃん。声、大きい」
 すれちがう男の子が頬を染めてふたりを見ていく。この感覚も、もう慣れつつあった。
「平気平気。今週末、うちに来ない? お兄とおじさんも来れるから。テスト勉強もしたいしさ。ほんと私学ってテスト多いよ」
「うん……。恵子ちゃん、どうしてエッチな女の子探すの? あたし、アキラさんやおじさんがいれば、それでいいけどな」
「なんでえ? だってそういう子と一緒に×××されると、すっごい感じるじゃん」
「それは……そうだけど」
 うつむいたゆみの顔を、恵子のぎらついた目が覗き込んできた。この目に捕まえられると、ゆみの女の子のところは──。
「……したくなってきたでしょ」
「恵子ちゃん、意地が悪いよ」
「お兄が新しいバイブくれたの。気持ちいいから……試してみない?」
 ゆみは、女の子のお汁が下着を濡らしはじめたのを感じながら、携帯電話を出した。自宅にかけると、すぐに留守番電話になる。
「ゆみです。きょうも恵子ちゃんのお家に行ってます。晩ご飯も恵子ちゃんのお家でいただくから、心配しないでね」
 受かると思っていなかった私学にこうして通えるのも、恵子と遊ぶようになったからだ。手早く勉強をすませてしまえば、気持ちよくていけないことが、たくさんできる。
 ゆみは少し息を弾ませて、恵子を見る。恵子と手をつなぐと、どちらのものかわからない、かすかな電流がした。



── 了 ──