「日和のある日」  行西



日和(ひより)……○学×年生。一人称は『ぴよ』。
         近所のアンチャンを『兄にゃん』と呼んで慕う。
兄にゃん……………日和にやさしい近所の男。


△月/日 木曜日 晴れ時々雨
 今日は帰り道で急に雨が降ってきて、ぴよはびしょびしょになってしまいました。途中で兄にゃんに会ったけど、兄にゃんもびしょびしょで、カゼひくといけないから、帰ったらおふろに入るようにって言ってくれました。
「ねぇ、兄にゃんもいっしょに入ろっ。おねがい☆」
 兄にゃんはやさしいから、ぴよのお願いをよく聞いてくれます。こまったような顔をしてたけど、ぴよのお家に来てくれることになりました。


 おふろでは兄にゃんが背中を洗ってくれて、ぴよは先にお湯につかって兄にゃんを見てました。今日の兄にゃんはそわそわしてて、なんだかヘンです。
シャワーを浴びるとき、体中しっかり洗ってるのに、ちょっとしか洗ってないところがありました。
「ちゃんと洗わないとダメだよ、兄にゃん。ぴよが洗ってあげるね」
 ぴよは両手に石けんをつけて、洗ってあげることにしました。さわると、すぐに兄にゃんがやめるように言いました。痛いの? 兄にゃん。
『痛くはないけど……』
 痛くないなら、気持ちいいのかな。体洗うのって気持ちいいよね? ぴよは大好きだよ。
「ぴよにまかせて♪」
 兄にゃんの前のほうについてるのは、にぎって動かすと皮から出たり入ったりします。きちんと皮をむいて、細くなってるところも洗ってあげて、下側の丸くてころころしてるのがついてるほうも、左手で軽くもむようにさすって洗います。やわらかいから、やさしくやさしく……ゆっくりね。
「兄にゃん、気持ちいい?」
 でも、なんなのかな、これ……。手を動かすたびに、前のほうがだんだん大きく固くなって、にょきにょきと伸び始めて、左手で洗ってるほうは少しこわばってきました。洗いながら兄にゃんの顔を見ると、難しい顔をしています。
「これ、どうしちゃったの? おしえてくれないとやめないよ?」
 さっきから兄にゃんは何も言わないので、試してみることにしました。気持ちいいなら大丈夫だよね。それに、大きくなった分も洗わないと……。すっかり上に伸びてるところをにぎって両手で上下に大きく動かすと、また少し固くなったみたいです。兄にゃんはまだ何も言いません。
 ……ぴく、ぴく……
 先の丸くなってるところで手がすべると、ぴくぴく動きます。先のほうだけで手を早くしてみると、やっぱりぴくぴくしてます。
「兄にゃんのここ、こんなにカチカチになっちゃってぴくぴくしてるよ。どうしちゃったの? ねぇ、兄にゃんってばぁ〜」
『ごめん、上手く説明できないんだ……』
「それじゃダメだよ〜。ちゃんと教えてよ〜」
 言いながらちょっとムキになってて、強くにぎっちゃってました。しゅっ、しゅっ、しゅっ……、と音がします。兄にゃん、なんだかガマンしてるみたい。
『……ぴよちゃん……、そんなにしたら……』
「ん? もう一回いって」
 あったかいのが指についたかと思うと、兄にゃんのここがびくびくびくっとして、先っぽから水でっぽうみたいにぴゅぴゅってお水が飛んでいきました。そのまま手を動かしてたら、びくん、びくんってしながら、あったかくてとろ〜っとしたのがまだまだいっぱい出てきて、手がぬるぬるになっちゃいました。白っぽいお水が、おふろマットのあっちこっちに散らかってます。
「兄にゃん、これなぁに?」
『なんでもいいだろ。先に上がるよ』
 兄にゃんはすぐにシャワーで全部流すと、おふろから上がっていってしまいました。
「あっ、兄にゃん、待ってよ〜」
 今日の兄にゃんはやっぱりヘンでした。
 兄にゃんのおひざに座ってあったまりたかったのにな。


◇月○日 水曜日 晴れ
 今日は兄にゃんが、ぴよのお勉強を見に来てくれました。終わったらいっしょに遊んでくれるって。うれしいな♪
『もう一回ここからここまで全部ね。それでお終い』
「うん。待っててね、兄にゃん」
 ………………。
「できたよ♪」
 30分くらいして振り返ると、兄にゃんがいすに座ったままで寝ちゃってました。
「兄にゃん、起きてよ。遊ぼうよ〜」
 声をかけても兄にゃんは起きませんでした。
「う〜ん。無理に起こしちゃうと悪いし、どうしよう……あれれ!?」
 兄にゃんのズボンのまんなか辺りがふくらんでます。触ってみると、固い棒が入ってるみたい。この前みたいになってるのかな? 見てみよ〜っと。
 かちゃかちゃ……、じ〜〜〜、すすす〜〜……。
「あっ、こんなになってる……」
 少し黒くて赤っぽいのが出てきました。
「頭がさんかくで、体がまるくて……、ツチノコさんみたい……」
 この前は石けんの泡でよく見えなかったけど、その形はご本で読んだツチノコさんみたいでした。でも、あお向けでぴくん、ぴくんってしてるし、はれちゃってるみたいな色してる……。
「兄にゃんのツチノコさん、苦しそう……」
 なでてあげながら見ていると、兄にゃんがう〜ん、ってうなりました。兄にゃんも苦しそう……。
「ぴよがなめたら治るかな?」
 そう思って、なめてあげることにしました。手でそ〜っと押さえて、ぺろぺろ……、ぺろぺろ…………。
「どうかな?」
 少したって見てみると……、さっきよりふくらんで、色も濃くなってて……、もっとはれちゃったみたい……。
「あ〜ん、ぴよ、どうしよう……?」
 ぺろぺろ……、あれっ? なにか出てきたよ。真っ赤にふくらんだツチノコさんのてっぺんに、まあるく水玉ができてます。ぺろっ……ぬるぬるでちょっとしょっぱいや……。そっか、きっとたまってたどくが出て来たんだね。へびさんのどくは吸い出すように、ってご本に書いてありました。
「ぴよが吸い出してあげるね」
 ちゅっ……あんまり出てきません。あれぇ、おかしいな。こうすればいいのかな?
 ツチノコさんを軽くにぎって、おなかのぷっくりとふくらんでるところにおやゆびを当てて、下から頭のほうに押し出すようになぞると……少しずつ出てきました。
 ちゅっ……んっ……んっ…………んくっ…………。
 ツチノコさんはへびさんで、へびさんのどくは、飲んじゃってもだいじょぶだったよね。
 時々ツチノコさんがきゅっと縮んで固くなって、またちょっとふくらんで元に戻ると、じわ〜っとどくが多めに出てきます。どんどん出して、早く元気になってね、ツチノコさん♪ ぴよもがんばっちゃうからね☆
 がたん。
『わっ、ぴよちゃん、そんなことしちゃ駄目だよ!』
「兄にゃん、起きちゃったんだ。あ、こぼれちゃう」
 兄にゃんが体を少し起こしたので、水玉が落っこちちゃいそう。大きな水玉を落さないように……、ぺろっ、きゃっ!
 急にツチノコさんがぴょんぴょんって暴れて、どくがたくさん出てきました。
「あん、お顔にかかっちゃった。あっ、お洋服も……」
 気がついたときには、ぴよのあたまにも、お顔にも、お洋服にもいっぱいいっぱいかかっちゃっててぬるぬるするし、お顔からのどへつつーっとたれて、おへそのあたりまでいったのが、ちょっとくすぐったいです。
「こんなにたくさん……やだっ、こぼしちゃった……」
 あふれてきたどくが、ツチノコさんのおなかにたれちゃってました。
『ごめん、ぴよちゃん。汚しちゃったね……』
「ううん、ぴよはいいの。それより兄にゃん、大丈夫? 兄にゃんのツチノコさん、すっごいはれてるよ」
『ツチノコさん?』
「ほら、あれっ?」
 ツチノコさんはさっきより小さく柔らかくなってて、赤いのも薄くなってます。
「治っちゃったみたい。ツチノコさんも兄にゃんも、もうだいじょうぶだね♪ ぴよ、がんばったよ」
『きっと、ぴよちゃんのおかげだね。ありがとう』
 そう言うと兄にゃんは、ぴよをティッシュで拭いてくれます。ツチノコさんが小さくなっていくのが見えて、兄にゃんに聞いてみました。
「兄にゃん、気分どう? 遊んでくれる?」
『うん、良いよ。何して遊ぼうか?』
 兄にゃんが元気になってよかった♪
「う〜んとね、ぴよ、兄にゃんとおいしゃさんごっこしたいな☆」


◇月※日 土曜日 くもり
 今日は兄にゃんが、ぴよのお家にお泊りに来てくれてます♪ いっぱい遊んで楽しかったけど、もう寝る時間。寝る前にはいっしょにご本を読んでくれて、兄にゃんはぴよのベッドの横に敷いたお布団に入りました。
『おやすみ』
「おやすみなさ〜い」
 ………………。
 寝ようと思ったら……、さっき読んだご本に出てきたおばけを思い出しちゃいました。それは、寝ない子を連れてっちゃう、こわ〜いおばけでした。
 ……ぴよ、こわくて寝れないよ〜……そうだ☆
「兄にゃん、ぴよこわいよ〜。ぴよのベッドでいっしょに寝てよ〜」
『仕方ないな〜……』
 兄にゃんがお布団からこっちに来てくれました♪
「わ〜い、ありがと、兄にゃん♪」
 このベッドはぴよには大きすぎるから、兄にゃんが入ってくれるとちょうど良いくらいです。ぴよは兄にゃんにぴったりくっついて寝ることにしました。おばけが来たって、もうだいじょうぶ。
 …………。
 手を伸ばしたら、兄にゃんのおなかの下のほうにやわらかいのがついてて、ゆびがあたるとぴくっと動きました。なんだろ?
 すぅ〜〜っと兄にゃんのズボンに手を入れて、つん、つん……。そ〜っとさわって、軽くにぎってみると……、あっ、ツチノコさんだ☆
『ぴよちゃん、駄目っ!』
「だって、ぴよ、まだツチノコさんにおやすみってしてないから……」
『おやすみの挨拶したら、ちゃんと寝る?』
「うんっ」
 ぴよがお返事すると、兄にゃんはベッドから起き上がって電気をぱちっ。
 ツチノコさんを出してくれました。
「ツチノコさん、元気だった?」
 ぴよがなでてあげると、ツチノコさんはぴょんぴょんしてうれしそう。
『だから、そんなとこ触っちゃ駄目だってば……、ほら、おやすみなさいは?』
 兄にゃんがなぜだかよそ見をしながら言ってます。
「は〜い」
 兄にゃんのほうを見て、またツチノコさんを見ると……。むくむくと大きくなってきて、真っ赤になってます。
「兄にゃん、またはれちゃってるよ……。そうだ、ぴよが治してあげる♪」
『いいよ、ぴよちゃん、この前みたいに汚れちゃうよ……』
「こんどはこぼさないようにするからだいじょうぶだよ。兄にゃんはそのままにしてて。ツチノコさん、すぐ楽になるからね」
 ぴよはツチノコさんをやさしくぱくっ、てすると、早くどくが出てくるように手を動かしました。ぺろぺろ……まだ大きくなってる……。お口の中ではどくがこぼれちゃって、ツチノコさんがぬるぬるになってきます。もちろん、頭も体も細いところもきれいになめてあげます♪

 ぺろぺろ……んくっ……んっ!
 急に兄にゃんが跳ねて、ぴよのお口の奥にツチノコさんが入っちゃいました。うまくなめれないから、ゆっくり元に戻そうとすると、ツチノコさんが暴れだして、どくがいっぱい出てきました。
 出てきた出てきた☆ お口にどんどんたまってあふれちゃいそう…………。でも、こっちはとっても変な味がします……。


 ツチノコさんがおとなしくなると、兄にゃんがぴよのお口からツチノコさんを出しました。
『ぴよちゃん、飲まなくっても良いんだよ?』
 お口の中いっぱい……、ぬるぬるしてて……ヘンな味……。それに、やわらかくてつるつるしたのが入ってる……。
 ……んっ……んっ……んっ…………。
 のどにくっついて、きちんと飲めないし、飲んでも変な味がお口に残ったままです。んっ……。
「ぴよ、こぼさないで飲めたよ♪」
『ぴよちゃんはがんばり屋さんだな〜』
 兄にゃんがズボンをはこうとしてます。
「あっ、ちょっと待って」
 ちゃんと吸い出さないとね……ちゅっ……。
「おやすみなさい、ツチノコさん☆」
 ツチノコさんはまた小さくなってます。
「こんどはちゃんと治ったかな?」
『ううん。これって、また少し経つとさっきみたいになるんだ……』
「ふ〜ん、そうなんだ。じゃあ、またはれてきちゃったら、いつでも言ってっ♪ ぴよが治してあげるからねっ☆」


終わり.