「夢……?」  星都



 バタッ!
 激しい音を響かせ、愛里は白いソックスのまま玄関を飛び出した。
(なんなの……なんなの一体!)
 朝からちょっと風邪気味だった。健康には自信のある愛里、すぐに治るだろうと思い学校へ行きはしたが、結局午前中だけで早退してしまった。
 どんどん熱が上がっているのが分かる。こんなことなら学校など行かずに寝てるんだったと、今更後悔しても遅い。
 机の上にカバンとコートを置くと、愛里は薬を探すため階段を下りた。
「……確か……」
 置き薬を飲んだのは何年も前のこと。愛里の記憶では、両親が寝室として使っている奥の部屋から母が持ってきてくれたはず。
「……?」
 寝室に近づいた愛里は、呻くような声にビクッとした。
「そうか、今日は木曜日なんだ」
 母のパートが休みの日。昼寝好きの母が寝ぼけているのに違いない。愛里はちょっと悪戯な笑みを浮かべ、寝室の襖に指を掛けた。寝相の悪い母の寝姿、どんな格好で寝ているか見るのが楽しみだ。
「あ……あ〜っ」
 万年床の中で、母は天井に顎を突き出し切ない吐息を上げていた。
「……?」
 被り布団が不自然に盛り上がっている。布団の中に、もう一人潜っているように見える。
「私にも……私にも頂戴!」
 哀願する母の声を待ってたかのように、布団がもぞもぞ動いた。そして、ニョキッと飛び出した足に続き、裸の尻が現れた。
(……ン?)
 愛里は、自分の母が夫婦の布団に男を引き入れている驚きよりも、『ナニかヘン』という疑念の方を強く感じた。母の顔に跨っていく男の脚。
(……一本……二本……三……?)
 太く長いソレは、脚と見間違うほど。
(おっきい……)
 息を飲む愛里の目前で、母はソレを扱き、口に含んでいった。
「エッ……ヤダッ!」
 思わず呟いてしまった。
 巨大なモノを呑み込んだまま、呟きに気付いた母は襖に目をやった。
「!」
「!」
 数センチの隙間から見える母の痴態。そして、数センチの隙間から見える娘の大きな瞳。二人は呆然と見つめ合った。
「どうかしたのか?」
 布団の中から男の声がした。
「不潔……不潔っ!」
「愛里!」
 走り出す愛里の背に叫ぶ母。しかし、愛里は立ち止まることなく家を飛び出した。


 直ぐ近くの公園、一人になれる場所を求め、愛里はトイレに駆け込んだ。
「ママが……あんなことを……」
 両手で顔を覆い、込み上げる涙と嗚咽を隠している。怒りなのか悲しみなのか、はたまたあまりのショックに驚いているだけなのか、あらゆる感情が干渉しつつ、愛里を無視して勝手に昂ぶっている。
「あんなおっきいの、触ったこと……」
 愛里は自分の言葉にハッとした。
「触ったことないよ」と言おうとしたのだ。それは、「触ってみたい」と言う意味に非常に近い。
「熱でおかしくなってるんだ。あたし、そんなスケベじゃないもん」
 熱と頭痛でゴーッとしている。なのに、巨大なペニスはくっきりと脳裡に焼き付いたまま、いくら頭を振っても消えようとしない。否、彼女の何処かに、「消したくない」という思いがあるのだ。自分でも気付いていないが、「もっと見ていたい」とあの時思った筈。
「エ……ヤダッ!」
 思わず呟いた言葉。それは、母の行為に対する非難ではなかった。もっと見たいのに隠してしまったことへの非難だった。
 もぞもぞ動く布団、裸の尻。そして、愛里を絶句させた巨大なペニス。一連の流れが繰り返しリプレイされている。
「ママのばか……あたし、スケベになっちゃうじゃない」
 ペニスを消し去ることが出来ないのを、愛里は母のせいにしようとした。
「不倫なんかして……」
 母をより悪者に思うことで、自分が真面目であることを自分自身に言い聞かせたかった。
 しかし、
「アレが……ふぇらちお……」
 ペニスだけに集中していた視点を、母の行為に向けた時、それが、噂に聞く〃フェラチオ〃であることに気付いた。
 友達のなかで、誰一人として経験したことも見たこともないフェラチオ。みんな口を揃えて「絶対したくない」と言っている口での行為。それを、愛里は見てしまった。
「あんな、汚いモノを……」
 愛里も又、友人達と同じ意見だった。絶対したくない、と。しかし、目の前でソレを見た今、彼女の内部に微妙な変化が起きていた。怖いもの見たさだろうか、
「……奇麗に洗った後なら……」
 舐めてみるくらいいいかも。
 と、思った。瞬間、妄想の中で、愛里は巨大なペニスを舐めていた。
「どんどんスケベになっちゃう」
 ふしだらな妄想を打ち消そうと、強く頭を振った。熱と頭痛が一段と激しさを増した。愛里は両手で顔を覆ったまま、崩れるようにしゃがみ込んだ。
 公衆便所独特のアンモニア臭のせいか、便所でしゃがんだことへの条件反射か、下腹部が尿意を訴えてきた。だが、巨大なペニスとフェラチオのことで一杯の脳は、下腹部の訴えを適切に処理出来なかった。
 白い木綿のパンティ、その中央部分が俄に湿り気を帯びた。尻は勿論、ゴムで締められたウエスト付近まで、生暖かい小便が駆け上がってくる。
「ヤダッ」
 愛里が見た時は、パンティから染み出した小便が便所のコンクリートに音を立てていた。元々小便をする気などなかった愛里、便器より後方にしゃがんでいたのだ。
「……どうしょう……」
 ほとんど出尽くした今、改めてパンティを脱ぎ、座り直してもしょうがない。小便はソックスをもグチョグチョに濡らしていた。
 小便で濡れたパンティとソックス。それに、紙が無かったため濡れた下腹部を拭いたハンカチも洗うはめになった。
「ママが……あんなもの見せるから……」
 天気予報は当たった。午後から小雪が舞うと言っていたが、その通りになった。
 素足が冷たい。身体の震えが止まらない。雪を見ても喜び一つ湧かないのは初めてだ。
「なんでこんな目に……」
 自分の小便で汚れたパンティを冷たい水で洗う。愛里はそんな姿が我慢できぬほど惨めに思えた。
「……もう、ヤダッ!」
 小便で汚れたものをそのままに、頭を俯かせ、ヨタヨタとベンチへ向かう。真っ直ぐ立つと、頭痛が酷く動くことも出来ないのだ。
「なんだあいつ」
「変態じゃないの……」
 女は眉を顰め、見ようとする男を無理矢理引っ張って行った。
「……?」
 甲高い女の声が聞こえてから、愛里が反応を示すまでかなりの時間を要した。うっすらと開いた瞼からは、既にカップルの姿は消えている。その代わり、どこか見覚えのある中年男性が立ち尽くしているのが見えた。
「愛里……ちゃん?」
 公園の駐車場に止めて置いた車に、男は愛里を抱きかかえるように連れて行った。家へ帰ることを、愛里が頑なに拒否したからだ。かといって、雪の舞う公園のベンチに一人置いておく訳にもいかず、取り敢えず、車の中で暖を取らせることにしたのだ。
 助手席で蹲り、寒さを訴える愛里。
「やっぱり家へ帰った方がいいよ……お母さんも心配してるよ」
「イヤ……ママの所へなんか、帰りたくない」
 その男が誰なのか、愛里は知らない。ただ、見覚えがあること、自分のことを知っていること、そして、優しい声音も相まって、その男に対する警戒心は働くことがなかった。
 男は困り顔で頭を掻いた。が、次の瞬間、「ふっ」と鼻で笑った。熱のせいだろうが、今にも閉じてしまいそうなトロ〜ンとした愛里の瞼、ペニスを咥え込み悦びの声を上げる愛里の母親、祥子の瞼に似ている。
「君も、お母さんみたいになるのかな……」
「エ!?」
 愛里の身体がピクッと動いた。そして、
「ならない……あんなことしないもん……あんな、あんなモノ口に……!」
 ボロボロと涙がこぼれてきた。ポケットにハンカチはない。愛里はスカートの裾で涙を、そして、鼻水を拭き取ると、ダッシュボードに顔を押し当てジッと動かなくなった。
 純愛を夢みる少女、母親の不純な行為は想像を絶する衝撃を与えたに違いない。
「帰りたくないのも分かるが……」
 どう見ても病気の愛里。首筋に手を充ててみると、痛いほどに熱い。
「酷い熱だ」
 男は車を走らせた。薬局で解熱剤を購入するために。
 薬を買い車へ戻ると、愛里はシートを倒しぐったりしていた。熱と頭痛で落ち着かないのだろう、身体を右へ左へと蠢かしている。
「……っ」
 捲れ上がったスカートに手をかけ、愛里の表情を覗き込む。そして、だらしなく開いた股の間に目をやった。
「君のお母さんのとは、偉い違いだな」
 中学へ入り、急激に身長が伸びた愛里。ほっそりした身体は肉が無さ過ぎる。胸の膨らみも小さければ、下の唇も薄っぺら。男を欲情させるイヤラシサが足りない。ロリコン男には堪らないモノかも知れないが、
「スッキリし過ぎてるな」
 熟女、それも、人妻をモノにすることに生き甲斐を感じてる男、五木にとって、恥毛が芽生え始めたばかりの女陰など興味がなかった。だから、スカートが捲り上がった少女がベンチに座っていても、その少女がノーパンであっても、股間が疼くことはなかった。
 ただ、その少女が愛里だと知った時、五木は熱くなる思いを感じた。
「こんな幼いおまんこを……」
 祥子がその話を聞かせたりしなかったなら、愛里に興味を持つことはなかっただろう。ただ薬を与え、こっそりと家へ送り届けたに違いない。
「小便をすること以外に使っているのか? 本当に……」
 冷たい指先でスリットを撫でてみた。
「……ンン……」
 感じたのか、それとも、指の冷たさのせいか、愛里は微かに唸った。
 薄っぺらな唇に、五木は指を挟み込ませた。
「ああ……ン、ンン……」
 愛里は腰を捩り、股を閉じてしまった。
「たまにはロリコンもいいかも……」
 五木は自分の股間を握り締めた。巨大なペニスが、一段と大きく勃起している。欲望を放出しなければ、弾けてしまいそうだ。


 高熱と頭痛に犯された愛里。〃寒さ〃と〃痛さ〃以外の感覚は失われていた。
「あ……」
 愛里の心が微かな声を上げた。それは、新たなる感覚が芽生えたことを教えている。その感覚は、僅かの間に身体の隅々まで行き渡っていった。
「……ああ〜……」
 朦朧とした意識の中で、唯一現実として記憶に刻み込まれるであろう感覚、それは、快感のドアを緩やかにノックし始めた。
 瞼が僅かに開いた。ぼやけて見える天井に何かが映っている。視点が定まるにつれ、それが〃ナニ〃か分かった。
(あたしがいる)
 天井に貼られた大きな鏡に自分の姿が映っている。制服の胸ははだけ、ズリ上げられたブラの下にピンクの乳首が見える。
(おっぱいが見えてる)
 膨らみの無さが最大の悩み。親友にさえ見せたことのない胸が露わになっていても、愛里の心に波紋一つ起きなかった。鏡に自分が映っている。おっぱいが見えている。その事実だけを正確に捉え、視線は休むことなく移動し続けた。
 ウエストにスカートがたぐまっている。そして、がに股に大きく拡げられた両足。中央で黒く揺れているもの、それが頭であること。更に、高熱と頭痛を忘れさせてくれる心地よさがそこから湧いていることも、愛里は事実として認知した。
(感じてるな)
 舌の動きに合わせ腰をうねらす愛里の姿に、五木の醒めかけた性欲が再び燃えだした。
 少女には興味の無かった五木。仰向けに寝ると平になってしまう胸は、呆れ顔で素通りした。
 薄く頼りない恥毛、すっきりと形の整った奇麗な女陰。それは、卑猥な四文字と結びつけるのが困難なほど幼いものだった。ちょっと形が崩れ、毒々しいほどのイヤラシサを放つモノ。五木を奮い立たせる女陰とは、そういうモノだ。
(ふふっ、もっと感じさせてやる)
 幼い胸、そして幼い女陰に手を触れ、その愛らしさを感じた。愛らしさを感じれば感じるほど、「こんな子供、連れて来るんじゃなかった」と後悔した。それでも、止めることなく続けているのは、人妻相手では決して味わうことのなかった罪悪感のせいだろう。
「癖になりそうだ」
 五木の脳裡には『犯罪者』と言う文字がくっきりと刻まれていた。その身を震わす刺激に後押しされ、止めることが出来ずにいる。
「あ……ああ……」
 愛里の艶っぽい声に、それまで躊躇っていた部分へも舌を這わせた。
 奇麗に洗った後のソコした舐めたことのない五木にとって、小便臭い愛里のソコには抵抗があった。さっきまではスリットの周りだけを舐めていたが、気分の昂ぶった今、とうとうスリットの中を舌で掻き分けた。
「…………」
 愛里の唇がプルプル震える。女陰が脳に伝える感覚を、そのまま言葉にすることだろう。
「くすぐったい」
 快感の一歩手前?
 ホテルに連れ込まれ、初めて口にした言葉がそれだった。
「やっぱ子供はつまらねェな」
 五木は一気に萎えてしまう自分を感じた。五木としては、「感じる」或いは「気持ちいい」という言葉を期待していたのに。
「プッ……ペッ……」
 舌先に感じる異物を吐き出しながら、愛里のスリットを開き、覗き込んで見た。
「汚ねェ」
 トイレットペーパーの滓と恥垢が見える。五木は顔を顰め、何度も唾を吐いた。
「祥子の言うことも信用できねェな」
 少女に興味の無かった五木が、愛里に興味を覚えた理由。それは、祥子の話のせいだった。
「まずいんじゃねェか、しゃぶってるとこなんか見られて」
「大丈夫よ、あの子はチクッたりしまいから」
 愛里の名を呼んでも戻ってこないと分かると、祥子は何事も無かったように五木の上に跨っていった。
「本当に大丈夫かよ」
「大好きなパパにショックを与えるようなこと、愛里は喋らないわ。それに……アウッ」
「それに……?」
 続きを聞きたい五木を無視し、巨大なペニスに女陰が引き裂かれる感触を楽しんでいる祥子。すっぽり根元まで埋め込むと、大きう深呼吸を一つ。そして、ゆっくり腰を振りながら、いやらしい笑みを浮かべ話し出した。
「この前、愛里の洗濯物が私のとこに紛れ込んでたから、部屋に持っていったの。そしたらヘンな声がして……私、ピンときて……」
「シテたのか?」
「オナニーの真っ最中! それも、両足をコタツに乗せて、足首にパンツを絡ませて……覗かれてるのも気付かずに、アンアン呻きながら励んでるの」
「いつもの、お前みたいにか?」
「ンフ……奥手だと思ってたのに、私が中学の頃より進んでいるかも」
「お前は中学の頃シテなかったのか?」
「ううん。シテたけど……普通のオナニーだったわ」
「普通の?」
「そう、アソコ全体を掌で揉むやつ。子供の頃って、一部だけを弄るコは少ないのよ……アソコ全体を揉むのが普通」
「じゃあ、愛理ちゃんは?」
「あの指の動きからして、入れてたわね」
「入れてた?」
「指入れオナニーよ……間違いないわ」
「指入れオナニー?」
「あの子、私に気付いて『お尻が痒くてしょうがなかったの』なんて言い訳するから、『昨夜も掻いてたんじゃないの』って釜かけたら『夜になると痒くなるの』なんて言ってた……つまり、毎晩シテるってことよね」
「愛理ちゃんが毎晩、指入れオナニー」
「そんなに痒いんじゃ、パパに相談しなきゃねって言ったら、『恥ずかしい場所だから内緒にして』って、泣きながら頼むの……」
 祥子は勝ち誇ったように笑った。笑いながら腰の動きを早め、五木にも腰を突き上げるよう催促してきた。
「……女の子はね、自分がオナニーしてることを誰にも知られたくないの。だから、私達のコトをチクるなんて、絶対ないわよ」
 祥子は全ての事柄を自信たっぷりに語った。五木も祥子の話を全て信じた。
 しかし、
「どうみても、指入れオナニーをしてるってオマンコじゃねェな」
 オナニーをしてるコ、つまり、ソコを性器として扱っている女のコは、総じてソコの手入れが行き届いているコが多い。モノを入れるとしたらなおのこと。今日一日でついたとは思えぬ滓を襞にこびりつかせている愛里は、ソコを排泄器官としか思っていないに違いない。
 祥子の話は作り話。安心して最後までコトが出来るようにと、口から出任せを言っただけ。愛里の女陰を見つめ、五木はその考えが正しいと思った。
「ちゃんとしたオマンコになったら、また会おうな」
 排泄器官を一撫でし、手を離した。
「ハーウッウー……」
 愛里が苦しげに呼吸をついた。心地よい感覚が途絶えてしまった訳を知ろうと、頭を持ち上げた途端忘れていた頭痛に襲われたのだ。
「そんな目で見るなよ……今、薬をやるから」
 訴えるような眼差しを、五木は「薬をくれ」と言っているように思えたようだ。
「ファッ!」
 愛里の目が一瞬にして見開き、直ぐに又硬く閉じられた。顎を高く突き出し、全身が硬直している。
「力を抜いて……でないと、入らねェよ」
 肛門の放射状の皺がヒクヒク引きつけている。五木は構わず埋め込んでいった。
「熱冷ましには座薬が一番だからな」
「……座薬……」
 肛門から潜り込もうとする座薬を、大腸の排泄機能が邪魔している。五木が指を離すと押し戻されてしまう。
「座薬を入れられるのは初めてか?」
「……座薬……」
 愛里は譫言のように「座薬」と繰り返していた。
「もう大丈夫だな」
 肛門から指を離し、座薬が押し出されてこないことを確認すると、
「終わったよ」
 ポンッと尻を叩いてそう言った。
「……座薬……ごっこ……!」
 探し物を見つけた。なのに、もう終わり。
「もう……終わり?」
「ああ……終わり」
 五木は愛里の表情が理解できなかった。なんとも言いようの無いほど寂しげな影を浮かべている。
「今日は、一度だけ……なんだ……」
「今日は……?」
「愛里、もうすぐ引っ越しちゃうんだよ……そしたら、もう、愛里のお尻で遊べないんだよ。だから……今のうちにたっぷり遊ばせてあげようと思ってたのに……」
「引っ越し? 何処へ?」
 祥子からは引っ越しの話など聞いてない。
「真岡ってとこ」
「真岡?」
 五木は首を傾げた。今住んでいるココが真岡だ。
「愛里ちゃん……いくつ?」
「ケンちゃんと同じでしょ……十歳だよ」
「……ケン、ちゃん……」
 狂った、そう思った。愛理達が真岡へ越してきたのは三年前。愛里が十歳の時だ。
「愛理ちゃん、大丈夫?」
 軽く頬を叩いてみても、愛里の虚ろな瞳は朦朧としたまま、三年前の場面しか映し出していない。
「本当は、もっとシタイんでしょ? 我慢しないで、シテいいよ。ほら……」
 両足首を掴むと、愛里は大きく左右に拡げた。全ての穴を、〃ケンちゃん〃に見せている。
「愛里のお尻に、座薬入れたいんでしょ? 入れていいよ」
「愛里……ちゃん」
 目の前にいる愛里、それは中学一年生の愛里ではない。小学四年生の愛里だ。ケンちゃんという男友達と、座薬ごっこを楽しんでいた頃の愛里が、目の前にいる。
「愛里がこんな恥ずかしい格好してるのに、ケンちゃん、どうしてナニもしないの? 愛里のお尻、もう飽きちゃったの? いつもみたいに、シテいいのに……今日のケンちゃん、イジワル……愛里を、イジメてる」
 熱のせいか、それとも恥じらいか、朱に染まった頬を、涙がこぼれた。
「そんなに、シテ欲しいのか?」
「シテ欲しいんじゃないもん! ケンちゃんがシタイんなら、シテもいいよって言ってんだもん」
「俺は、愛理ちゃんがしたくないなら、しないよ」
「愛里がしたくないなら……しない?」
「うん。愛里ちゃんに任せる」
「そ、そんな……愛里、困っちゃう」
「困ることないだろ。素直な気持ちを言えばいいんだから」
 五木はニタニタ顔で、肉厚の唇を見つめた。よく見ると、実に艶めかしい唇をしている。彼女の身体の中で、一番成熟しているかも知れない。薄っぺらな下の唇には感じなかった、吸い付きたい衝動に駆られる。
(どんな言葉を言わせてやろうか)
 愛里の唇から卑猥な言葉を聞きたい。薄れた愛里への興味が、より強い欲望として甦ってきた。
「あ、愛里は……別に……」
「したくないの? なら、やめよう」
「やめちゃうの?」
「だって、愛理ちゃんはしたくないんだろ?」
「愛里は……愛里は……」
「愛里は? したいの? したくないの?」
「愛里は……」
 消え入りそうな声で、「したい」と言った。
「もっと大きな声で言わないと、聞こえないよ」
 両手で顔を隠し、「恥ずかしい」と繰り返している。
「可愛いヤツ」
 自分で股を開き、全ての穴をさらけだして見せた愛里。そんな恥ずかしい姿を平然と見せておきながら、「シタイ」の一言はなかなか言えない。子供とはいえ、女の恥じらいは身に付いているということか。
「祥子とは違うな」
 五木が良く相手にする〃人妻〃と言う女。そこにも恥じらいはある。ただ、その恥じらいは計算された恥じらい。男をより興奮させる術として、経験から得た性のテクニックであることが殆ど。ベッドの中で、純粋に恥じらいを訴えた女を、五木は知らない。
 邪心無き愛里の恥じらいに、五木の欲望は頂点に達しようとしていた。膨らみのない胸、張りのない腰、頼りない陰毛と薄っぺらな陰唇。五木には興味がなかった少女の身体を、今は瞬きも惜しむほど見入っている。
「そんな、見ないで……」
 指の隙間からくぐもった声がした。
「見なきゃ、入れる場所が分からないだろ」
「…………」
 愛里は顔を隠したまま横を向いた。
「さあ、入れる場所を、良く見せてごらん」
 声が掠れている。自分で感じてる以上に、五木の身体は興奮しているようだ。
「…………」
 愛里の脚が動いた。両膝の裏に手を充て、グイッと抱き込むように尻を上げた。ゆっくりと両膝が離れていく。愛里の全ての穴が、五木の網膜に再び刺激を与え始めた。
「ここに、入れていいんだね」
 大きく喉を鳴らした後で、五木はそう言った。奇麗な肛門の周りを指先で撫でながら。
「……うん……」
 撫でられる度に尻をもぞつかせ、愛里は硬く瞼を閉じたまま答えた。
「いつも、ナニを入れるんだっけ?」
「鉛筆か……指……」
「今日は、鉛筆持ってないんだ」
「……指で、いい……」
「どっちが好きなの?」
「……指」
 愛里は今にも泣き出しそうな顔をしている。恥ずかしさが堪えきれなくなるのも、時間の問題だろう。その時、愛里がどうなるか、それもまた、五木の楽しみでもある。
「どうして?」
「だって……面白いんだもん」
「面白い? それだけ?」
「…………」
 五木の目にも、愛里の鼓動が激しさを増しているのが分かる。全身が熱く燃えているのは、高熱のせいではない。恥じらいが燃えているのだ。
「面白いだけじゃないだろ? もっと好きになる理由があるんだろ? 言ってみな?」
「……キ、キモチ良いの……」
「気持ち良い?」
「ケンちゃんのイジワル……」
 股を大きく開いたままの格好で、愛里は泣き出してしまった。
「これ以上恥ずかしい思いさせないで……いつもみたいに、気持ちいいことして!」
 今まで焦らされたことのない愛里は、すっかり切れてしまった。恥じらいも何も、何処かへ吹き飛んでしまった。
「早く入れて! いつもみたいに、ズボズボしてっ!」
 自ら肛門を引き開き、嗚咽を漏らしながら哀願してくる。
「入れてやる。愛理ちゃんの気が済むまでズボズボしてやる」
 肛門に指を押し当てると、
「唾、つけてね……痛いから」
 我慢しきれずに「入れて」と呻いた愛里の面影は消えていた。ずっかり醒めてしまったような、落ち着いた口調だ。全てを任せ、自分はただ相手に従う。身体の構造から来るものなのか、受け身であることで、女は安らげるようだ。
 口の中にたっぷりと溜めた唾を、タラ〜っと肛門へ垂らす。じっと動きを止めている愛里のなかで、肛門だけが忙しなくヒクヒク動いた。
「入れるよ」
「…………」
 コクッと小さく頷く愛里。その顔は無表情なまま。ちょっと前の五木だったなら、「つまらねェ」と止めてしまったかも。しかし、今の五木には無表情の下に秘められた挿入への期待が痛いほどに感じられる。
「痛いか?」
「…………」
 指先が潜り込むと、愛里は眉を顰めた。だが、指の侵入を拒否しようとはしない。生理現象で押し返そうとする大腸の動きだけが、虚しく抵抗している。
「こうして欲しかったんだろ」
「…………」
 埋め込んで指を、捻りを加えて抜き刺しする。極力無表情を保っていた愛里も、堪らず口を開いた。しかし、声は出ない。否、出さない。
「ふふっ」
 五木は静かに笑った。快感をオーバーに表現する人妻も良いが、表現の仕方を知らない少女に教え込むのも、堪らなく良さそうだ。
「どう? いつもと比べて」
「……いつもより……おっきいみたい……」
 恥ずかしげに横を向いてそう言った。
「いつから、シテるんだっけ?」
「先月の八日から……忘れちゃったの? ケンちゃんの誕生日からじゃない」
「誕生日のプレゼント代わりに、させてくれたんだっけ」
「うん。急に、『昔やった遊びしよう』なんて言うから、愛里、びっくりしちゃった」
 激しい指のピストンも、愛里の身体はすっかり慣れてしまったようだ。時折顔を顰めはするが、直ぐに無表情を作り直す。
「久しぶりだったから……愛里、すごく恥ずかしかったんだよ」
 穏やかな快感の中で、愛里はその日を思い返していた。
「昔、やった遊び?」
「愛ちゃんが一番好きな遊びだよ」
「愛理が一番好きな遊び?」
 なんの遊びかピンと来た。だが、その遊びを直ぐに思いついたことを知られるのは恥ずかしい。愛里は首を傾げ、分からない振りをしていた。
「俺が先生で……愛ちゃんが患者さんで……」
「エーッ!」
 愛里は大袈裟に驚き、両手に顔を埋めた。
「ナッ! いいだろ……やろう」
 身体がカァーッと熱くなる。心臓が飛び出すほどにドキドキしてきた。それは恥ずかしさよりも、久しぶりに〃アレ〃が見られるという期待の方が強かった。
「新しい治療法覚えたんだ。ナッ! やらせてくれよ。今日は、俺の誕生日だぞ、プレゼント代わりに、ナッ、いいだろ」
「誕生日か……」
 愛里は肩を落としたまま頷いた。
「熱がありますね。パンツを脱いでそこに寝て下さい」
「パンツ……脱ぐんですか?」
「脱がないと、診察できないから」
「…………」
 小学生になってからは、お互い同性の友達と遊ぶことが多くなり、二人きりで遊ぶのは数年ぶり。突然「遊びに来ないか」と誘われ、懐かしさでつい来てしまった愛里だが、考えてみると、この部屋で二人切りになった時は決まってパンツを脱いでいた。
 チラッチラッと、ケンを伺いながらパンツを下げていく。パンツを脱ぐことがこんなに恥ずかしく感じるようになったなんて、
(愛里も大人だな)
 ヘンに満足感を覚える愛里だった。
「じゃ……診察します」
「待って!」
 横たわった愛里のスカートをケンが捲った途端、愛里はソコを両手で隠した。
「先に……見せて」
「…………」
 ケンはすっくと立ち上がり、一気に下半身を丸出しにした。
「触ってもいいぞ」
「…………」
 恥ずかしげに両手で顔を隠していた愛里だが、指の隙間からしっかりと観察。そして、ケンの言葉に甘え、そっとソレを摘んでみた。
「もういいのか?」
「…………」
 愛里は何も答えず寝たふりを始めた。目が醒めるまで、ケンは愛里の身体を自由に出来る。それが、幼い頃の二人が決めたルール。
(ナニするの? ソコは、お尻だよ)
 昔のケンはいつまでもワレメで遊んでいた。なのに、あっさりとワレメから指を離してしまった。そして、なにかを決めかねるような動きで、肛門を弄っている。
「熱がありますね」
「…………」
「座薬を入れましょう」
「…………」
 座薬。それがなんなのか、愛里は知らなかった。
「あの時はびっくりしたなぁ……いきなり、お尻に鉛筆入れるんだも……暴れるとお腹のあちこちに鉛筆が当たって痛いから、ジッと動かずに我慢して……『止めて!』って泣いて頼んでるのに、ケンちゃん真剣な顔してお尻見つめたまま……愛里、本当に止めて欲しかったんだから……あの時は」
「そんなにイヤだったのに、どうして好きになったの?」
「だって、『おちんちん見せて』って言える男の友達、ケンちゃんしか居ないんだもん」
「おちんちんに興味あるんだ」
「大きくなったり小さくなったり、硬くなったり柔らかくなったり、面白いから、好き」
 愛里は恥ずかしそうにクスッと笑った。きっと頭の中では、その時折に変化するペニスを思い浮かべているのだろう。
「ケンちゃんたっぷり触らせてくれるし、お尻に入れられても、じっとしてればそんなに痛くないし……それに、慣れてきたら、なんだか気持ちよくなってきちゃって……」
「それで、毎日入れるようになったんだ」
「うん……アッ!」
 イケナイッ! そんな表情で、愛里はパッと目を見開いた。
「毎日なんか入れてないもん。ケンちゃんと遊ぶ時だけだもん」
 余りにも一生懸命否定する姿を見たら、ヘンだと思うのが自然。
「本当かい?」
「……うん」
 力無く顔を背ける愛里。
「正直に言いな。一人の時に、こっそり入れてるんじゃないか?」
「……そんなこと……シテないもん」
「どら?」
 愛里の手を取り、指の匂いを嗅ぐ。
「ケツの穴の匂いがするぞ」
「ウソ! 今日はまだシテないもん……あっ」
 慌てて口を塞いでも、もう遅い。
「今日はまだ、シテないのか……じゃ、今シテみな……ここで」
「エ?! そんなこと、できない」
「いつもみたいにヤレばいいんだよ」
 五木は愛里の肛門から指を抜き取った。代わりに、愛里の指をソコへ押し当てる。
「さあ、いつものように、ヤッてごらん」
「できないよ……そんなこと」
「見せてくれないと、もう遊んでやらないぞ。俺のキンタマ見たいんだろ? 触りたいんだろ? なら、ヤッて見せてくれ」
「……でも……」
「パパやママに言っちゃうぞ。愛理ちゃんは、『ケツの穴に指を入れて遊んでる』って」
「イヤッ! パパには言わないで! パパには、愛里がこんなスケベなコだってこと、知られたくないの」
「なら、ヤッて見せろよ」
「…………」
 愛里の指先が蠢きだした。徐々に力を込められていく。そして、
「ケンちゃんの、イジワル……」
 五木の目の前で、愛里は自らの指を肛門へ埋め込んでいった。
「祥子はコレを見たのか……」
 指の動きが増すにつれ、両膝を抱え込むように上げていく愛里。その方が自由に指を使える。仰向けに寝てヤル時は、自然と脚を上げるのだろう。コタツが有れば、ソコに足を乗せるのも、また自然。
「ただのオナニーじゃなくて、指入れアヌスオナニーだったのか」
 快感を得られる性器。愛里にとって性器は〃肛門〃だったのだ。だから、肛門は奇麗に洗っても、単なる排泄器官の女陰はあっさりとしか洗わないのだろう。指入れオナニーをしていながら、女陰の汚い理由が分かった。
「気持ちいいか?」
「……うん……でも」
「でも? なに?」
「愛里……ケンちゃんの指が好き……もう一度、入れて欲しい……」
 顔を横向けたまま「恥ずかしいよぉ」と繰り返す愛里。その愛らしさに、五木は少女愛の虜に落ちていく自分を感じた。
「入れてやるよ……指より、もっとイイものを」
「指よりイイもの?」
「ああ、でもちょっと太いから、痛くないように、愛理ちゃんがよ〜く舐めて、唾をつけておくれ」
 唇に押し当てられたモノを、愛里は素直に含み込んだ。ソレがなんであるか、目を閉じている愛里には分からない。
(なんなの? 凄く太くて、長い)
 あまりの大きさに、目を開けて確かめるのも怖い。愛里は〃太くて長いモノ〃の記憶を探り、ソレがなんであるか予想しようとした。
(太くて長いモノ……太くて長い……?!)
 愛里の身体がビクッとのけ反り、硬直した。〃太くて長いモノ〃愛里の記憶にあるソレが脳裡に浮かび上がった途端に。
(うそ……でしょう……)
 母親の口に含まれた〃太くて長いモノ〃それは男のペニス。愛里は今、ペニスを口にしているのか?
「どうしたの? もっと舐めてくれよ」
「…………」
(ケンちゃんの声と違う)
 愛里の全身に冷や汗が噴き出した。
(誰なの? この男)
 どこかで聞いた声。そう、母親がペニスを咥えていた時、布団の中から「どうかしたのか?」と問うた声だ。
(ママが咥えていたおちんちんを、どうして愛里が)
 愛里は必死に記憶を甦らせた。印象的な出来事の一つ一つが、記憶として過去へ流れて行く。記憶、それは過去の出来事。なのに、愛里が今見つめている記憶は……。
(どうして、中学生の記憶があるの?! まだ、四年生なのに)
 座薬が効いてきたのだろう。愛里を朦朧とさせていた熱が引いてきた。それに伴い、混沌とした記憶も徐々に整理されてきた。
(ママのヘンなとこ見ちゃって、公園のトイレに駆け込んで……そこでお漏らししちゃったんだ……お漏らししたパンツを洗ってたら頭が痛くなって……痛くて痛くて……)
 その後はぼんやりとしか思い出せない。ただ、〃座薬〃と言う言葉だけが酷く耳に残っている。座薬で直ぐに連想するものは〃座薬ごっこ〃、そして〃ケンちゃん〃。
 朦朧とした意識の中で、愛里はケンとの〃座薬ごっこ〃の記憶に落ち込んでいたのだ。
(今は中学生……引っ越しなんてとっくにしちゃった……ケンちゃんも、もう居ない。さっきまであたしをイジメていたケンちゃんは幻……そう、あたしは夢を見ているんだわ……目を開ければパッと消えてしまう夢……)
「そろそろ、愛理ちゃんがお待ちかねの、指より良いモノを入れてあげようね」
 愛里の口から抜かれたモノには、たっぷりと唾液がついていた。唇からペニスまで糸引く唾液。まるで、唾液を手繰りもう一度口に咥えたいと願っているかのようだ。
(目を開けなきゃ……夢から醒めなきゃ)
 しかし、どうしても開けられない。愛里には分かっていた。目を開けてはっきりすること。それは、〃ケンちゃん〃が幻だったことと同時に、ケンちゃんだと思っていた男が全くの別人、しかも、母が口に咥えていたペニスの持ち主だったこと。更に、そのペニスを愛里も口にしていたこと。
 どれも現実として認めたくないものだ。
(夢のままで……小学生のままでいた方が)
 寝たふりをしてる間にケンがナニをしようと、愛里は「寝てたから知らない」で済ませられた。どんなに恥ずかしい行為も、『夢』で片付けられた。
(このまま、寝たふりを続けた方が……)
 全ては夢。高熱で朦朧とした意識の中で見た幻に過ぎない。毎日肛門に指を入れる秘密の遊びも、夢の話で押し通せる。全てを巧く終わらせるには、寝たふりを続けるのが一番。愛里はそう思った。
 それまで愛里の指を締め付けていた肛門に、ナニかがあてがわれた。
「ふぁぁぁっ……」
 思わずのけ反り、シーツを握り締める愛里。
「最高だ! 最高の締まりだ!」
「切れちゃう……ああっ! 刺さっちゃう!」
 裂けそうに開かれた肛門を、巨大なペニスが行き来する。内臓に刺さる感覚が恐怖を訴える。しかし、そのスリルがまた堪らない。
「どうだ? 指なんかよりずっといいだろ?」
「いい……指よりいい……もっと、もっと射してっ!」
「そんなに気持ちいいか?」
「いい……気持ち良い……これが、女の悦びなのね」
「女の悦び?」
「うん」
「……ふふっ」
 五木の動きが止まった。
「愛理ちゃん……女の悦びは、ケツの穴じゃ分からないよ」
「え? でも、すごく気持ち良いよ」
「ケツの穴は、男にも女にもあるんだぜ。女の悦びを知りたいなら、女にしかない穴を使わなきゃ」
「女にしかない……アナ?」
「知りたいかい?」
「ケンちゃん……知ってるの?」
 男を〃ケンちゃん〃と呼ぶことで、自分自身にも男にも、愛里が今だ夢の中に彷徨っていることを暗示させている。〃ケンちゃん〃と呼んでいる間は、愛里は小学四年生の愛里。ナニをしようと、ナニを言おうと、それは四年生の愛里が責任を取ってくれる。
「教えてやるよ……女の悦びを」
「ケンちゃんが、教えてくれるなら……」
 ペニスが抜かれると、身体にぽっかり空洞が出来た感覚に襲われた。しかし愛里は分かっている。直ぐに又、満たされることを……!


「店長……どうしたの? もう旦那が帰ってくる頃よ」
 祥子はビクビク顔で玄関を開けた。と、
「愛里……?!」
 五木に抱えられるように愛里が居た。
「熱でボーッとしてて、何も覚えていないそうだ……ナニも!」
「そう……〃ナニ〃も……」
 祥子は虚ろな愛里の瞳を見据え、ニヤッと笑った。
「熱で足腰がふらついているから、ゆっくり寝かせてやりな……じゃ、俺は帰るよ」
「どうもお世話さま……明日、会社で」
 二人は思わせぶりなウインクを交わした。
「結構積もったわね」
 布団に愛里を寝かせ、窓の外を見ながら祥子は寒そうに言った。
「あたし、どうして外に出たのかな……」
「……ほんとに、ナニも覚えていないの?」
「うん……ずっと夢みてたの」
「夢?」
 祥子は思った。たとえ五木とのことを思いだしたとしても、〃夢〃で誤魔化せると。
「うん。とっても、気持ちよい夢」
 疲れ果てていた愛里は、そのまま瞼を閉じた。満足しきった表情の下で悩むこと。それは、
(今夜……どっちのアナを使おうかな……)


               おわり