EPISODE-C「乙女心は雨模様」より

「おねぇさまの肌って、きれぇ」
「うふ、ありがと」
 ユリは一気に全てを脱ぎ捨てて、水着を手に取った。タオルで隠したりはしない、思い切った着替え方だ。人目を気にしないというよりは、むしろ誇示しようとしているように美紀には見えた。同性の美紀から見ても、いや同性であるからこそ、ユリの肢体は美しく輝いて見えた。
 すらりと全身が細く流れるようなラインを形作っていた。やや高く盛り上がったお尻からは、長い脚が太すぎず細すぎず伸びている。瑕疵のない白く透き通るような肌が、長く垂れる黒髪とのコントラストのために、輝いて見えた。さながら、動く芸術品だった。
 しかしユリは濃紺のスクール水着を手に取ったまま、動きを止めた。美紀がなかなか服を脱ごうとしていないのに気がついたからだった。
「あれ、どしたの、美紀ちゃん?」
「……いいなぁ、おねぇさま。きれいで」
 美紀は俯いて、自分の身体を抱くように撫でさすった。
「だって、わたしはまだまだ子供で……」
「……? ユリの身体だって、まだまだ子供よう」
 ユリは首を傾げながら、自身の裸体を見おろした。力が封印される前は、大きく高く隆起した形のいい乳房と、くびれた腰の下の豊かな肉付きのお尻が自慢だったのだ。それが今では、すっかりメリハリのない姿になってしまっている。
「ううん、おねぇさまのカラダって、すっごく色っぽいの。オトナじゃなくても、すっごく魅力があるんだもん」
「あらぁ、それなら美紀ちゃんだってそうよう」
 そう言ってユリは優しく微笑んでみせる。
「違うの。違う……だって、だって小次郎さんは、そのおねぇさまに夢中なんでしょ? わたしのカラダになんて、誰も夢中には、なってくれないんだもん……」
 寂しげに俯く美紀を見て、ユリはそこに失恋のキズがあるのに気づいた。にっこりと微笑んで、ユリは美紀の頭を撫でてやった。
「美紀ちゃんのカラダだって、とっても素敵よう。ユリも、美紀ちゃんのカラダ、好きだなぁ」
「…………」
「それに、これからもどんどん素敵になっていくんだものう。気にすることなんてないのよう。すぐに、美紀ちゃんに悩殺されちゃう男たちが、いっぱい出てくるから」
 慰めの言葉とともに、ユリは美紀の頭をかき抱いた。ぎゅうっ、と強く抱き締めると、美紀の精神状態と身体状態が、薫りのようにユリの神経に触れる。
 ──やっぱり……またホルモンバランスが崩れかけているみたいよう。
 ユリは心の中でため息をついた。
 ──ちょっとセンチメンタルが長引くと思ってたら、やっぱりそーゆーコトだったのねぇ。このままじゃあ、まだ『無差別吸精鬼』に逆戻りよう。
「……じゃあ、おねぇさま、ここで、抱いて」
「どうしたら……え?」
 考え込み始めたユリに、美紀は無茶な注文をつけた。
「わたしのコト、かわいいって思ってくれるんなら、今すぐここで、わたしを愛して」
「ちょ、ちょっと待ってよう、美紀ちゃん」
 ──マズいわよう。
 どうしようか、と明らかに迷っているユリを見て、美紀は寂しげな笑みを漏らす。
「……いいの。ごめんなさい、おねぇさま。困らせちゃって」
「美紀ちゃん……」
 美紀は頭をユリの裸の胸に押し当て、大人しくなった。ユリも美紀を慈しむように撫でさする。
「……でも、ほんとに、おねぇさまのカラダって、きれい」
 呟くような言葉には、うっとりとした響きがあった。
「だから……わたし、抱いてもらえなくてもいいの。おねぇさまを、抱きたい……」
 美紀はいきなり顔を上げると、ユリの唇に自分の唇を強く押しつけた。
 ──しまった! 油断したわよう。
 ユリは美紀から逃れる方法を考えた。突き飛ばすのが一番簡単だが、それでは美紀の心を傷つける心配がある。そんな風に思ったため、反応が遅れた。
 美紀はユリの唇を強く吸いながら、ユリの腰の骨に手を当てた。
 ──う、うまいじゃないのう。いつの間にこんなテクニックを……
 気がついたときにはもう遅かった。美紀の手が触れた腰の辺りから、すうっと力が抜けていくのを、ユリは感じていた。そこから精を吸い取れば、文字どおり『腰くだけ』の状態になることを、美紀は知らずに実践していたのだった。
 長い接吻。解放されると同時に、ユリは口を開いた。
「美紀ちゃん、ひ、人がくるかも……」
 ユリはそんな月並みな言葉でしか、美紀を押し止めることが出来なくなっていた。
「そんなの……平気だもん」
 そしてそんな言葉では、今の美紀を押し止めることは出来ないのだった。
 美紀の指が、腰から腋へ、腋から胸へと流れていく。肋骨をなぞるように愛撫しながら、ユリの首筋に吸いつく。それは、古典的な吸血の儀式そのものに見えた。
「あっ……」
 背筋をぞくぞくと駆け抜けるこそばゆい感覚に、ユリはつい、酔いしれてしまう。
 ──もう、このまま好きにさせちゃっても……
 ユリの脳裏に、そんな考えが浮かぶ。それに自分で気づき、苦笑した。
 ──なんでユリ、美紀ちゃんにはこんなに甘いのかなぁ。
「おねぇさま? どうしたの?」
 美紀は、ユリの微妙な笑顔に怪訝そうだった。
「……んーん。なんでもないわよう」
 ユリはその問いに微笑んで答えた。つられて美紀の表情もぱぁっ、と明るくなる。
「……おねぇさま、好きっ」
 美紀はユリを一気に押し倒した。床にはユリの水着や、スポーツタオルなどが散らばっている。いつのまにか、状況はすっかり整っていた。
 二回目のキスも、また長かった。最初に舌を出してきたのは美紀。しかしその舌先に大胆に舌を絡めていったのはユリだった。すぐに二人ともが大胆になり、音をたてながら舌先で感じあった。
 美紀は手のひらをユリの胸に近づけた。触れるか触れないかの微妙な距離を保ちながら、大きく円を描く。それでも、互いの体温は感じられるのだ。ユリの淡い乳首は、美紀の体温を感じとるにしたがって、だんだんと色を濃くし始める。
「んっ、んっ」
「おねぇさまの、立ってきたぁ」
 指が触れていないのにも関わらず、ユリの乳首は明らかに勃起し始めていた。それを見つめる美紀は、嬉しそうに状況を口にする。
「……おねぇさまのって、先っぽが飛び出してくるだけじゃなくて、全体的にぽつぽつが浮いてくるんだ。すっごく、えっちなちくび……」
 手のひらをもう少しだけ近づけると、乳首だけが手のひらで転がされる状況になる。美紀は手のひら全体で、ユリの乳首の感触を楽しんでいた。
「ふわっ、あっ」
「……すごい、おいしそう」
 美紀はこらえきれずに、ユリの乳首に舌を伸ばす。泡だった桜色の部位を舌先でくすぐると、ユリはぴんと背筋をのけぞらせる。
「おねぇさま、きもちいい?」
「きもちいい、わよう」
 上気した顔で、ユリが応えた。美紀は満足しきった表情で、今度は唇で乳首全体を吸い上げた。柔らかい唇に挟まれて更に硬度を増した乳首を、舌先で丹念に掘り起こした。
 ユリもされているばかりではない。息を荒くしながらも、手は上にのしかかる美紀の服のボタンをしっかりと捉えていた。下から二つだけを外すと、するりと両の手を中に忍び込ませる。
「あんんっ」
「……美紀ちゃんだって、すごい、じゃないのう。痛そうなくらいに、なってるわよう」
 ユリの指は、すぐに美紀の乳首を探り出した。いや、探り出す必要などなかった。美紀の平坦な胸に手を当てれば、針のように鋭くとがった乳首がおのずから、その存在を訴えかけてくるからだ。
 ユリは二本の指に乳首を挟んで、ふにふにと揉んだ。美紀は身を縮こませ、一旦はユリへの愛撫を休むけれども、すぐに仕返しを始める。
 互いの乳首への愛撫は、しばらく続いた。その均衡を破ったのは、美紀の方だった。
「……だめぇ、今日は、わたしがおねぇさまをきもちよくさせるの!」
 そう言ってユリの手を振り払って、立ち上がった。やや強引にユリの脚を広げさせて、細く開きかけたスリットに顔を寄せる。
「……おねぇさまのって、とってもかわいい」
「んっ、は、鼻息がかかるぅ」
 ユリのスリットを指で押し広げ、美紀はまじまじとそれを見つめた。充血して肥大した小陰唇は、それでもこじんまりとまとまっていてシンプルな美しさがあった。表面が光っているのは、明らかに分泌された液体のせいだ。
 スリットの上端には、包皮から頭を覗かせているクリトリスがあった。美紀は意地わるく、ちょうどそこに鼻息が当たるように顔を近づけているのだった。
「おねぇさまのクリトリスって……宝石みたい」
「んんっ、はぁっ」
「食べちゃいたいけど、それは後のお楽しみね」
 美紀は自分の指を口に入れ、唾液をたっぷりと絡ませた。人差し指と中指が、濡れ光っている。
「ほんとなら、おちんちんが入れたいけど……わたし、持ってないから」
 中指だけを立てて、ユリのスリットの中央に浅く挿入する。
「あは。おねぇさま、こんなに濡れてたんだぁ。つばつけなくてもよかったぐらい」
「んっ、んあっ、は、入ってくるう」
 くち、くちとユリの粘液が淫らな音をたてる。美紀は楽しそうに指先を蠢かし、わざと音を大きく、ユリにも聞かせようとする。
「……わ、勝手に指が、入ってっちゃう……」
「んんんんっ」
 粘膜の蠕動はユリの意思とは関係なしに、美紀の指をあっさりと受け入れた。美紀は喉を鳴らす。その光景は衝撃的ですらあったのだ。膣は本来ペニスを受け入れるものであるということの再認識。そんな当たり前のことでさえ、まだ十歳に過ぎない子供の美紀にとってはショッキングな事実だったのだ。
「おちんちんが、こうして……」
「ふわぁぁっ、あんっ、んんぁぅ」
 愛液の量が増え、その熱量を美紀は指先で感じている。責めている側の美紀でさえ恍惚の境地に導くほど、ユリの愛液は奔放に溢れ出していた。
「あっ、ああんっっ、ふわ、あくっ」
「……おねぇさま、きもちよさそう」
 美紀はゆっくりと深く、指をストロークさせている。ユリは床に敷かれたタオルを握りしめ、快楽の波に身を任せ切っている。
「……もっと、きもちよくさせてあげるの」
 美紀は挿入する指を二本にした。それでもユリの膣は、なんなく受け入れてしまう。
「あうぅぅっ、ふ、太くなったぁ」
「……それにね、クリちゃんも触ってあげる」
 何処で覚えたのか、美紀は空いていた親指でユリの膨張しているクリトリスを突っついた。中指と人差し指が深く沈降する度に、強くクリトリスを押しつけるのだ。
「ひゃ、だ、だめぇぇぇ、い、いいの、いいのう」
「おねぇさまが感じてると、わたしも感じちゃう」
 美紀は左手を自分のパンツの中に差し入れた。短い吐息を漏らしてから手を抜くと、親指の先には透明な液体がこびりついていた。
 愛液をこびりつかせた左手を、美紀はユリの頬に押し当てた。潤んだ瞳であえぎ続けるユリの頬は熱く火照り、上気していた。その間も、美紀は責めを休まなかった。
「あうぅぅぅ……」
 愛液をまとった親指が、ちょうどユリの唇に触れた。ユリは自ら進んで口を開いた。美紀もそれに応じて、指を差し入れる。ユリの舌が美紀の分泌液を執拗なまでに舐め取っていく。
「……おいしい?」
 美紀の質問を理解したのかはわからないが、ユリは舌を鳴らして美紀の親指を舐め続けていた。
「でね、やっぱりおねぇさまをイカせるには、あそこしかないと思うの」
 美紀は自身もうっとりと悦楽に浸りながら、ユリの耳元で囁いた。
「どこだかわかる?」
「んっ、あっ、んんんっあぅ」
「……たっぷり、かわいがってあげる」
 忘我の境地に近いユリのお尻を、美紀は軽く撫で上げた。それからすべらかな太股に手をかけると、力一杯引っ張った。膣には指が入ったままだ。
 ユリはスリットに潜り込んでいる美紀の指を中心にして、半回転、つまり裏返しになった。今度はうつ伏せの状態だ。
「きゃうぅぅぅんっっ」
 ユリは膣の中で、美紀の指がぐるりと回転したかのような錯覚をした。かすかに曲げられた指は、膣襞内を文字どおりかき回したのだ。実際にはユリの方が回転したのだが。
「……もう、わかったでしょ。おねぇさまの、よ・わ・い・トコロ。」
 美紀はユリの丸く白いお尻をなでながら、腰全体を持ち上げた。ユリは膝をついて、お尻を高く掲げる格好になる。
「ほら、こうするとまる見え……ココもかわいいの」
 押し広げなくても、ユリのアヌスは全てをさらしてしまっていた。かすかな色素の沈着と、細かい放射状の皺。それこそ、ユリの一番の急所だった。
「いっぱい、愛したげるよ……おねぇさまぁ」
 美紀は膣に挿入したままの指の動きを激しくした。それはまさしく、雄々しく責める男のペニスそのものの動きだった。
「ひゃ、ひゃう、んっ、んっっん、んぅぅぅっ、はっ、はっ」
 ユリの声もリズムをあわせて、小刻みに震える。
 美紀はユリの反応に満足げに微笑んでから、アヌスにゆっくりと顔を近づけた。おねぇさまのなら、少しも汚いとは思えない、その感覚が自分でも不思議だった。むしろ、いとおしくてたまらなくなるのだった。
 唇が、ユリのアヌスに触れた。
「んっ、だ、だめぇぇぇぇっ! そ、そこ、そこわぁぁぁ」
「……いいんでしょ? ココ……」
「っっ、や、やぁぁぁっ」
 指で激しく膣を責め、クリトリスを小刻みに刺激し、そして舌先をアヌスの中心に差し入れる。確実な三点責めに、さしものユリも長くはもちそうになかった。自分から腰を振り立てて、美紀の責めを余すところなく受け入れている。
「やっ、やぁっ、ダメ、だめぇっっ、い、イッちゃ、イッちゃうのうぅぅ」
「イッて、イッて、おねぇさまぁ。わたしので、おもいっきりきもちよくなってぇっ」
「あっ、ああんっ、はっ、も、もうダメぇぇぇぇっっ!」
 ユリの腰がびくん、びくん、と大きく二、三回痙攣した。愛液が美紀の腕を伝って、下に滴をこぼしている。
「……おねぇさま、とってもきれぇ」
 美紀がうっとりと、ユリのお尻を撫でさすった。