「お腹の中で感じる温もり」より



「あひっ、んくっ、はんっ、いっ」
 利奈は布団の上で、義郎の腰の動きに合わせるようにして声を立てる。そして義郎は、その声に酔いしれつつ腰を動かす。どちらが主導権を握っているのかわからない微妙な関係だ。
「んふぅ、ん、あ、あぅ、ひぃ」
「……利奈はすごくえっちで、いい声で鳴くんだね。その声を聞くと、僕はもう、すぐにいっちゃいそうだよ」
「あんっ、ん、ん、んんっ」
 義郎は褒めたつもりなのに、利奈はいきなり自分の口を自分で塞いでしまった。くぐもった喘ぎしか出せなくなる。
「あれ、利奈、どうして……」
 訊ねかけた義郎は、訴えかけるような利奈の瞳に言葉を飲み込んだ。それは深いつき合いのふたりだからわかる、抗議の瞳の色だった。
 つまり『まだいっちゃだめ』ということらしい。
「そ、そんなこと言っても……」
 そんなふうに見つめられることもまた、義郎の欲望を刺激してしまう。むしろ、リズムを保つための音がよく聞こえなくなってしまった分、義郎の腰は暴走しだしてしまった。
「あ、だめだよ、利奈、もう……」
「んっ、んっ、んんっ、んんっんっんんーっ」
 利奈の脚を持ち上げ、義郎は激しく突き立てた。利奈のくぐもった喘ぎは、小刻みになりそして長く繋がり、口を押さえる手にも力がこもる。
「……っ!」
「んんっーっ!」
 利奈の奥深くに突き刺さった義郎のものがひくひくと痙攣した。あえなく、射精してしまったのだ。
 利奈の膣はまだ狭く、義郎のものを抜く前から白い液体は溢れ出してきた。おしりを伝ってシーツに染みを作る光景は、例えようもなくエロチックだ。
「……はぁっ、はぁっ、利奈、ごめん。もう……」
 『まだいっちゃだめ』と目で訴えられたのにもかかわらず、義郎はさっさといってしまった。申し訳なさそうに利奈の顔を見ると、口を押さえたままの顔は急に真っ赤になった。潤んだ瞳が、羞恥を含んだ微妙な色をたたえている。義郎はじいっと瞳を見つめた。
 なんとかその瞳の色を理解した義郎は、危うく吹き出しそうになった。
 『わたしもいっちゃった』……そう、利奈は照れているのだった。